ども、働く岡田達也です。



(ほんのちょっとだけネタバレ含みます)

『鍵泥棒のメソッド』、ご存じの通り2パターンのキャスティングが用意してある。
正確に言うと、今回は「ダブルキャスト」ではなく「クロスキャスト」という形式。
つまり、Whiteのときには僕がコンドウ役を、阿部丈二が監督役を演じ、Blackのときにはそれが逆転する。
つまり「たすき掛け」になっているのだ。

監督役は1シーンしか出番がない。
が、かといって楽屋でスポーツ新聞を読みふけっていたりとか、サンシャイン水族館に行ってアシカを見たりとか、ましてや劇場のすぐ裏にある立ち飲み屋に行って速攻で引っかけてくる、なんてことはしていない。
ちゃんと仕事をしている。

主な仕事は、家具の転換、そしてコンドウ役の早替えのお手伝い。
この早替えというのが大事な大事な仕事である。
とにかく限られた時間の中でキッチリと着替えさせ、恥ずかしくない格好で舞台に送り出さなければならない。
靴を片方しか履いてないとか、上半身が裸のままとか、髪の毛が孔雀のようになっているとか、とにかくそういうアクシデントを避けるため、必死で着替えさせる。
責任重大である。

早替えの現場は、例えるならF1のピット作業に似ている。
とにかく全力のスピードで、決められた細かい段取りを、ミス無くやる。
一つのミスが命取りに繋がる。
神経は研ぎ澄まされ、精神的にかなり張り詰めた状態になる。

* * * * *

数日前。

劇場に向かうため新宿駅のホームで電車を待っていた。
手にしたタブレットでツイッターを読んでいた。
フト顔を上げた。
その僕の視線の先に……

あ!
丈二と同じ緑色のチェックのシャツを着た男の人が立っているではないか!
着替えさせなければ!

僕は一歩踏み出した。
……ところで我に返った。
危ない危ない。
見ず知らずの人の洋服をはぎ取り、裸にしてしまうところだった。

そう。
丈二とまったく同じ服を着た人を見て、反射的に体が動いてしまったのだ。
「そんなバカな」と思われるかもしれない。
いやいや、本当の話。
それからしばらく心臓がドキドキしてた。

なんという条件反射。
なんという仕事に対する忠実さ。
なんというパブロフ。

とにかく。
犯罪に繋がらなくて良かった。


さあ、今日も着替えさせよう。



では、また。