ども、ミステリーに遭遇した岡田達也です。



先日、プロ野球のオープン戦に出掛けた。
残念ながらご贔屓のチームであるホークス戦ではなく
(福岡まで自家用ジェットで出掛けるということも思いついたのだが、よく考えてみたらジェットを持っていなかったことに気付いたので今回は断念した)

東京ドームでジャイアンツvsファイターズというカードだった。
こうなるとどちらのチームを応援するというより、純粋に野球が楽しめる。
公式戦でもないことだし、気楽に肩の力を抜いて楽しむことにした。
とはいえ開幕戦のちょうど一週間前。
調整登板ながら、ジャイアンツの先発は開幕投手に内定している菅野投手、ファイターズは二刀流の大谷投手という、いやはやとんでもなく贅沢な対戦になった。

* * * * *

以前にも書いたと思うが、僕は東京ドームのビールの売り子さんが大好きだ。

伊集院光さんが言っているが
「彼女たちは3割り増しで可愛く見える」
という説を僕も支持する。
あの重いビール樽を背中に背負い、何度も階段を上下し、汗だくで、だけど笑顔を絶やすことなく売り続ける彼女たちはとても眩しい。
その姿を見ていると、お腹はビールで満たされていても「もう一杯飲んじゃおうかな?」という気にさせられてしまう。
(見事に東京ドームの商法に乗せられている典型である)
油断しているとグランドで選手を見ている時間より、売り子さんたちを見ている時間の方が長くなってしまうので要注意だ。


持ち込んだ缶ビールもハイボールも飲みきってしまった。
仕方がない。
何か飲もう。
しかしビールは1杯が800円とかなり割高だ。
ハイボールは600円か。
うーん、悩みどころだ。
おっ!
あの水色の制服を着た子が手にしているのは氷結サワー(レモンサワー)か。
しかも500円とドームの中では安い方だ。
よし!
氷結サワーに決定だ。

しかし。

狙いは定めたものの、その子が売っているゾーンはまだまだ遠い。
僕の左側、通路にして3本分は向こうにいる。
しかたがない。
彼女がこちらに移動してきたら注文しよう。
僕はグラウンドに目を移した。

数分後。

彼女は僕の右側の通路にいた。
あれ?
いつの間に?
僕の真横の通路には来なかったぞ。
さては一本飛ばしたな。

ちょっと想像力をお借りしたい。
そのブロックは横一列に12席並んでいる。
僕の席はその左端。
つまり僕のすぐ左横は通路なのだ。
だから売り子さんが来たら見落とすことは絶対にない。
だが、彼女は僕のブロックの右端の通路に現れた。

まぁいいや。
彼女たちの動体視力は高い。
彼女が「サワーいかがですか!」の掛け声と共に辺りを見渡すのに合わせ僕は絶妙のタイミングで手を挙げた。
彼女は気付いてくれた。

だが。
二人の間には12席分の距離がある。
話ができる距離じゃない。

彼女は、僕に向かって「一つですか?二つですか?」というゼスチャーを見せ、僕は指を一本立ててそれに答え、次に彼女は「今から客席を回り込んでそちらに行きますね!」という仕草を見せた。

確実に見せた。
間違いなく見せた。
僕は頭は悪いし、腹は黒いし、狼少年と同じくらい嘘をつくが、それくらいのコミュニケーションは取れる。

想像ではあるが、おそらく彼女たちのアルバイト代は時給+出来高だろう。
一杯でも多く売りたいに違いない。
一人でもお客さんを逃したくないはずだ。

彼女は僕の視界から消え
(回り込むために階段を上っていった)
僕は自分の左側の通路に彼女が現れるのを待った。

ところが……

1分あれば十分な距離だ。
それなのに、1分経っても2分経っても彼女は来ない。
不思議に思って後ろを見渡しても水色の売り子さんはどこにもいない。

え?
うそ?
さっき頼んだよね?

あ!
ひょっとして樽が空になって補充しに行ったのかな。
うんうん、それもよくあることだ。
大人しく待とう。

だが。
10分、30分、50分……

気が付けば試合は終わってしまった。

彼女は、消えた。

僕が見たのは幻だったのだろうか?
はたまた幽霊か?
東京ドームに居座る売り子の亡霊か?
それとも、商談は成立したにもかかわらず、それを翻したくなるほど僕の何かが気に入らなかったのだろうか?

謎だ。

このミステリーを、僕はこの一週間考え続けているが答えが出ていない。
どなたか解いてください。



では、また。