ども、イカが大好きな岡田達也です。



鳥取の名物にイカ釣り漁船がある。

夕方になるとたくさんの漁船が沖へ出て白イカを釣り上げる。
そしてそれらの舟が大量の電灯を灯す。
その明かりに誘われてイカたちが集まってくる仕掛けだ。
浜辺から見えるその電灯はとてもキレイで、若い頃、何キロも連なる明かりを飽きもせずに眺めていた。
そして、漁師でもないくせに「今日も大漁でありますように」と願っていた。
もちろん、美味いイカ刺しに有り付けるように、だ。

* * * * *

吉祥寺のスターパインズカフェで本番をやっている。
ここは吉祥寺でも有数のライヴハウス。
地下1階に受付があり、地下2階がフロアになっている。

スターパインズ、携帯の電波が入らない。
これは劇場にとっては良いことだ。
が、我々、携帯電話に毒されてしまった人間には非常に不便だ。

開場時間は1時間と長めに設けてある。
その間、メイクしたり、着替えたり、セリフをつぶやいたりと、やることは多々あれど最終的にはみんな暇を持て余す。
そうなると、みんな決まって、自分のスマホやら携帯をイジリ出す。
が。
電波が入らない。
仕方がないので、階段の上まで行って、何とか電波を捕まえようと試みる。
お店の外まで行ければいいのだが、開場しているため不用意に出てしまうとお客さんとバッティングする。
だから、カーテンで仕切られたギリギリのところ(地下1階の手前あたり)までしか行けない。

このポイントが、ちょうど、電波が、入るか、入らないか、の瀬戸際地点だのだ。

代わる代わる役者たちが携帯を片手に階段を上っていく。
なんとか電波を捕まえようとあがく。
そしてしばらくしたら諦めの溜め息をつきながら階段を降りていく。

僕にはその姿が
「明かりを追い求めて浮上する白イカ」
に見えてしょうがない。


今日もイカたち……、じゃなかった、役者たちは
明かりを……、じゃなかった、電波を追い求めて
浮上を繰り返すのだろう。

もしも開場時間に、受付横の黒いカーテンが揺れていたら
役者たちがスマホを片手に必死で腕を伸ばしている、と思って笑っていただきたい。


あー。
美味いイカ刺しが食いたい。
鳥取のイカ、美味いんだよな。



では、また。