ども、買ってしまった岡田達也です。



『チルドレン』の衣裳、わりとカッチリとしたジャケットとパンツスタイルに落ち着いた。
ココで問題が一つ。

スーツやパンツをいかにして運ぶか?だ。

どうやっても、どんなに頑張っても、畳みじわ(折りじわ)ができてしまう。
着ていけば良いだけだが、毎日稽古場に行くのに衣裳を着込んでいくわけにもいかない。
これを稽古場や劇場に運ぶためには「スーツケース」もしくは「ガバメントバッグ」に入れて持ち歩くしか方法がない。
すると、どうしてもジャケットの真ん中あたり、パンツの真ん中あたりにシワができる。
劇場に持って行くときもそうなるだろう。

プロデューサーの首藤さんに掛け合った。
「首藤さん、劇場にアイロンを持ってきてもらえます?」

ココだけの話、もちろん僕もアイロンは持っている。
だが、持って行くのが面倒くさい。
「おねだり上手の罰当たり」をフルに発揮するときだ。
甘えた者勝ちだ。

「あぁ、いいよ。だけど、アイロン台が無いんだよね」

な、なんてこった!
アイロンがあってアイロン台がない!
片手落ちとはこのことではないか!
まさか、これで、首藤さんにアイロンを持ってきてもらい、僕がアイロン台を持って行くのは本末転倒だ。
僕は、なるだけ、自分の荷物を軽減する作戦なのだから。

どうしたものか?
僕は悩んでいた。


翌日の朝。
何気なく付けていた日テレの『ポシュレ』が始まった。
ピンクの電話の都子ちゃん、西村知美ちゃんなどが商品を紹介する典型的な通販番組だ。
毎日、化粧品やら布団やらマッサージ機やらバッグやら、ありとあらゆるものを紹介し
「わー、何てステキ!」とか
「ひょー、本当にキレイになる!」とか
「これは便利!」とか
驚きの表情と感嘆詞を連発し、視聴者をだま……、いや、視聴者に商品の良さを伝え
最終的には「えー、安い!」で締めることがお約束の番組である。

僕は毎日考えていた。
「誰が買うんだろうな、通販で。僕は絶対に買わないな」と。
オマケに
「絶対にあり得ないけど、もしも僕が通販番組のMCを担当したら、そんなお芝居が打てるだろうか? 汚れた心の中で「大して便利じゃないよ」とか「そんな良い物でもないだろうな」とか毒突きながら笑顔でいられる自信がないな」と。
(大丈夫だ、オマエにこの仕事は来ないから)

それはさておき。
その日の内容が「スチームアイロン」だった。
商品を紹介する男性が熱弁をふるっていた。

「ハンガーに吊したままアイロンがかけられます!」
「こんなにコンパクト!」
「スーツのしわも、ほら、この通り!」
「シャツだって簡単に!」

このあたりまでで、すでに心は揺れていた。
そしてトドメの
「アイロン台が必要なし!いつでもどこでも簡単に!」

次の瞬間、僕はテレビ画面に映っている番号に電話していた。

白状する。
人生で初めての通販の買い物である。

これか?
これが通販マジックなのか?
人の心の隙間に忍び寄って、いつの間にかかっさらっていく感じ。


今、商品の到着を首を長くして待っている。
それと同時に、敗北感を感じている自分がいる。
とても複雑な気分でスチームアイロンを使うことになりそうだ。



では、また。