ども、真央ちゃんのように滑れない岡田達也です。



これだけ世間で語られているので、今さら付け足すことなど何もないが、
真央ちゃんのフリー演技と
そのあとに見せた泣き顔と笑顔は
どれだけ多くの人の心を震わせたのだろう。
彼女が感じいているプレッシャーの量など、誰にも推し量ることはできないけど、その中で闘う彼女の姿は本当に本当に素晴らしい。
大拍手。

* * * * *

鳥取は想像を絶する田舎町である。
娯楽は少ない。
が、そんな町にも一つだけスケートリンクがあった。
その名も『日本海リッチランド』
ネーミングにははなはだ疑問が残るが、僕が学生時代はフル活用させてもらった。
高校時代の冬はよく通った。

……通っていた。

のだが、ある日を堺に僕はピタリと行くのをやめた。

何度も転んで、ようやく歩けるようになる。
最初は手すり(というか壁)を伝ってそろりそろりと。
それができるようになったら壁からちょっと離れたところをゆっくりと。
そして、少しずつ滑れるようになる。
僕も何とか、前進し、コーナーを回れるようになり、エッジを効かせて止まれるくらいのところまではいった。
スピードを上げるところまでは行かなかったけど、普通に滑れるだけでも楽しい。
楽しくなってきたところだった。

リンクには上手い人たちもたくさんいる。
子供が中央でスピンの練習をしていたり、外周をスピードスケートの選手のようにスイスイと飛ばしていくお兄さんもいる。

そんな中。

僕がゆったりゆったり外周を回っているときに、隣を猛烈なスピードで滑り抜けていくお兄さんがいた。
「速いなー」とは思っていた。
スケーティング自体はずいぶんギクシャクしているように見えるが、あれだけ飛ばすのだから自信があるのだろう。
そのお兄さんが僕を3度ほど追い越した後だった。

左に曲がるはずのコーナーを曲がらないまま直進していった。
ん?
お兄さん、曲がらないのか?
それにしてもあのスピードで直進しても大丈夫かな?
まぁ、きっと壁の直前でキュキュッと止まるのだろう。

そう思った次の瞬間。

「あーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
という絶叫と共に、お兄さんは壁に激突した。

激突して止まるなら良い。
そのあとに見た光景はいまだに忘れることができない。

激突した衝動で、お兄さんの上半身は壁の向こう側に放り出され(くの字に折れ曲がり)、一瞬、完全なる逆立ち状態が完成した。

だが、リンクの中にいる僕には上半身が見えない。
腰から足にかけて天井に向かって伸びているのが、壁の向こうに見えている。

犬神家の一族の「すけきよ」である。
(わからない人は誰かにたずねてね)

そしてそのまま崩れ落ちていった。

唖然、呆然。
今、目の前で起きたことが事実として感じられないほど、マンガチックだった。
ヨロヨロ滑る僕よりも早く、多くの人が駆け寄り、そのお兄さんの介護に当たった。

しばらくして
担架に乗せられたお兄さんが運ばれていった。

……。
……。

僕は何となく滑るのをやめ帰宅した。
それ以来、僕はスケートをしていない。

あのお兄さんに遭遇しなければ、今ごろは羽生くんと肩を並べるスケーターになっていたのは想像に難くない。
ひょっとすると人類初の5回転に挑戦していたかもしれない。
あくまでも想像だが。

そう思うと非常に残念である。



では、また。