ども、ホコリだらけの岡田達也です。



昨日は東京ハートブレイカーズのパンフレット撮影。
何をどう勘違いしたのか、春っぽい格好がいいかな?と思い
(そんな指定はどこにもなかった。本当にただの勘違い)
胸元の開いたTシャツと薄手のジャケットを着ていった。
もちろん、向かうときにはダウンを羽織っているので問題はないが、いざ撮影になると寒い。
一緒に撮影していた西川浩幸先輩や、みのすけさん、平野勲人くんなどからも「よく頑張るね(笑)」と、字面だけ読むと褒め言葉だが、実は失笑されるという事態を招いた。

……うん
それはいい。
話を進めよう。

撮影を終え、稽古場である下北沢に向かった。
駅から徒歩5分くらいのところに稽古場がある。
改札を抜け、稽古場に向かって歩いていた。

薄着だったからだろうか?
寒さが体にこたえた。
その寒さがお腹に来た。

う、うんちがしたい……。

この衝動は誰にも止められない(はずだ)。
排泄だけは自分のコントロール下で自由にはならない。
「腹が減った、何かを食べたい」と思っても、目の前に何もなければ口にすることはできない。
「取り込む」という作業は、目の前にモノがなければ諦めるしかないのだ。
しかし。
出て行くことに関してはお構いなしだ。
便意は猛烈に襲ってきた。

5分もあれば稽古場に到着する。
だが、粘りきる自信もない。
稽古場に行く途中にあるパチンコ屋が目に入った。
仕方ない。
パチンコを打っている時間はないがトイレを拝借しよう。
僕はそのパチンコ屋さんの入り口に向かった。

入り口に、30歳代の、黒いスーツとコートを着たサラリーマンらしき男性が立っていた。

その彼が、店内に入ろうとした僕にスッと近付いてきた。
本当に「スッと」だった。
僕は思わず体を固めた。
一瞬、こちらが身構えるほどの「何か」が彼の身体からは発せられていた。

固めたことにより、便意は、より強く、僕の体を襲った。

「すみません、ちょっといいですか」

良かった。
ちゃんと話しかけられた。
いきなり殴られるかと思った。

「あのー、警察の者ですが……」

え?
け、けいさつ?

「警視庁の○○と申します」

彼は警察手帳(って今は言わないのかな?あのバッジが貼り付けてある二つ折りのヤツ。生で初めて見た)を開いてコチラに見せた。

みなさんはこういう経験があるだろうか?

僕は何度かある。
こういうとき、人間の本性は暴露される。

僕は、その瞬間に、「あれ?何をやってしまったんだろう?あれか?これか?それともあのことか?」と、自分の行いを、思わず振り返ってしまうのだ。

断っておくが、無い。
何もない。
はずだ。

真柴あずき先輩が「達也は人殺し以外のすべての犯罪を経験している」とよく言うが(その真意に関してはまたの機会に譲ろう)、少なくとも最近は犯罪に荷担した記憶はない。

なのに、だ。

勝手に、振り返って、ドキドキしてしまう。

「このお店はよくいらっしゃるんですか?」

「いえ、滅多に来ません」

まさか、うんちがしたくてトイレを借りに来た、と言える状況でもない。
僕はシンプルに答えた。

彼はその答えに構わず一枚の写真を僕に見せた。

「このおばあちゃんに見覚えはありますか?」

顔写真が4カット貼り付けられたおばあさんの写真を見せられた」

「さあ……」

「このお店の常連さんなんですが」

僕は常連ではない。

「実は、このおばあちゃんがある事件に関係していまして」

ええー!
なになになに?
なんだか大事じゃないか!

だけど、まったく見覚えはない。

「すみません。見たこと無いですね」

「そうですか。お忙しいところ申し訳ありませんでした」

いえいえ。
お役に立てなくてごめんなさい。

僕はその場を立ち去り稽古場に向かった。

「叩けば埃の出る体」なんて言葉があるが、僕はどれだけの埃が出るのだろう?
自分では体内成分の70%以上がアルコールでできていると思っていたが、ひょっとすると70%以上のホコリでできているのかもしれない……。
あー、なんて人生なんだ。

ダメだ、ダメだ!

その禊ぎ(みそぎ)のために、今、演劇で頑張っているんじゃないか!
若い頃の過ちを、取り返そうとしているのではないか!
今日も稽古を頑張ろう。

気合いを入れて稽古場のドアを開けた。


……あ
うんちするの忘れてた。



では、また。