ども、無事に生還してきた岡田達也です。



僕は闘った。
そして見事に勝利を収めた。
やはり、昔から「自分はただ者ではない」と薄々気付いてはいたが……
見事な内視鏡検査だった。

* * * * *

3年前。
初めて胃カメラを飲んだときは地獄だった。
それまでに経験がなかったということもあって、ちょっとナメてかかっていた。
世間で騒ぐほどのことはないだろう、と。
注射は痛いから嫌いだが、カメラは痛くなどないだろう、と。

ところが。

喉をゼリー状の麻酔で麻痺させてベッドに横になり、いざカメラを口から入れられると状況は一変した。
それまでカマしていた余裕が吹っ飛んだ。

「そんな異物が入るわけないだろうが!出ていかんかい、ワレ!」と身体が勝手に反応する。
のど元から先に通さないという必死の抵抗が始まった。

「はい、力を抜いてね」

そんなもん抜けるかっ!

「若い人はね、筋力があるから押し返してしまうんですよね」

当たり前じゃ!42歳とはいえ気持は若人だ!

「困ったな……」

いや、気持は通してあげたいのだ。
だけどのど元は何が何でも通せんぼ、という苦し状態が続いた。

やっとの思いでカメラガ胃に入ってからも、その食道から胃にかけての違和感がハンパないことと、呼吸が苦しいこと、ヨダレが止められないこと(強制的に口を開けられているので仕方がないのだけど)で、涙が流れ続けた。
日常で、まったく泣くことのないこの男が、涙を流し続けている。
脚本で「肩をふるわせて泣く」というト書きがあれば泣くが、人間的な感情を失ってしまっているので日常生活では涙が枯れ果てたこの男が泣いている。
「おおっ!オレにも流れる涙が残されていたのか!」と喜びたかったのだが、その余裕はない。
ヨダレも涙も垂れ流しの自分にガッカリしながらなされるがままである。

「はい、岡田さん、このモニターを見てください。これが胃の入り口ですね。あらー、ちょっと荒れてますね。そしてこれが胃の上部です。あらー、ここも荒れてますね。……岡田さん、ほら、ちゃんと見てますか?」

僕は叫んだ。

「んなもん、見られるわけねーだろーがー!こちとら苦しいんじゃーーーー!!!」

もちろん心の中で、だ。
あの状態で口から叫べる人間がいるのなら会ってみたい。

そんな激闘が何分続いただろう?
もう疲れ果てた頃にカメラは抜かれた。
精も根も尽き果てた。
僕は完全な敗北者だった。

* * * * *

あれから3年。
昨日も重い足取りで病院に向かったのだが……


あれ?
だいぶん長くなってしまったな。
続きは明日にしーよっと。



では、また。