ども、ひたすらに頭が下がる岡田達也です。



鹿殺し、稽古も中盤戦だ。
円形劇場の側にある稽古場で連日、猛稽古を繰り返している。

「猛稽古」。
その言葉に偽りはない。

稽古場は10時~21時まで押さえてある。
若い劇団員たちは、11時間、べったりと稽古場に張り付き、芝居だけではなく、あらゆる作業に取り組んでいる。
たいへん申し訳ないのだが、我々ゲストはすっかり準備が整ったところから稽古参加させてもらっているので11時間労働ということは無い。
僕が稽古場に到着したときには、劇団員はすでに汗だくで「こいつ昨日より痩せてるんじゃないか?」と心配になるほどだ。

それほど、みんな、よく働き、よく動く。

自慢ではないがキャラメルボックスの若い子たちもよく働く。
脈々と受け継がれた劇団のノウハウをみんなが理解し、芝居を創るために必要な作業を黙々とこなす。

だが。
鹿殺しはパフォーマンスに心血が注がれている分、普通の芝居よりも段取りの数が桁違いだ。
おそらくキャラメルボックスの20倍では効かないだろう。
それらを決めて、体に叩き込み、さらにお客さんに見せるレベルまで引き上げるだけでも一苦労なのに、演出のチョビちゃんは一切の手を抜かず「もっとこう見せたい!」という要求をガンガン投げつけてくる。
そして、みんながエライのは、その要求にどうすれば応えられるか?を瞬時に考え実行しようとすることだ。

「そんなの当たり前じゃないの?」という無かれ。
その瞬間に答えを出すことは至難の業だ。

「なぜ今、鹿殺しが、こんなに勢いを持って小劇場を駆け上っているのか?」その理由を垣間見た気がした。

「この絵を見せたい!」
「こんなふうにしゃべって欲しい!」
「こんなふうに動いて欲しい!」
「このシーンは、こんなテンポで!」
「この音楽は……」

チョビちゃんの演出家としての要求は果てしない。
どう冷静に考えても僕の食欲ほどある。
(絶対に比較するべきとこじゃないだろ)

そこに食らい付いていく劇団員たち。
その、気持ちいいまでの構図が、鹿殺しを支えているのは間違いない。

悔しいことだって、腹が立つことだってあるだろう。
だけど。
みんなの見てる先がぶれていない。

今どき、こんな劇団らしい劇団、ちょっとない。

残念ながら、みんなは居残りの作業が多いので一緒に飲める機会も少ない。
だからお先に帰って一人で飲みながら、おじさんはエールを送っている。
……つもりだ。


さあ、今日も頑張ろう。



では、また。