ども、先輩風を吹かせまくりの岡田達也です。



『雨と夢のあとに』大阪公演中の出来事。

開場時間になり、みんながメイクを始めた。
ふと喉の渇きを覚えた。
シュワシュワした炭酸飲料が飲みたい。
強烈に飲みたい。
そう思った。
もちろん黄金色したヤツが理想だが、1時間後には本番の幕が開くのだ。
立ち飲みやに行って引っかけてくるには時間が足りない。
ここはグッとガマンして最近流行りのオランジーナを飲むことにしよう。
「フランス産」というだけでちょっとお洒落な香りを撒き散らしやがる憎いヤツだ。
僕は楽屋で独りごちた。

「オランジーナ、飲~もう!」

二人の人間が食いついた。
まずは三浦剛。
「あー!いいなー!オレもオランジーナ飲もうかな」
そして鍛治本大樹。
「うわっ!どうしてこのタイミングで言うんですか?どうしようか迷っていたのに!僕も飲もう!」

ここに、偶然、同じ目的の人間が3人揃った。

シアターBRAVA!の男楽屋は2階の端っこ。
オランジーナがある自動販売機は1階の、しかも反対側の隅っこ。
つまり、楽屋の中で、最も遠い距離を歩かなければオランジーナには辿り着かない。

みんな考えることは一緒だった。
「……ジャンケンで負けた者が買いに行くってことで」

僕は45歳だ。
劇団年齢も22年を数える。
三浦剛や鍛治本大樹など、僕から見ればハナタレ小僧なわけで、「おい、オランジーナ買ってこいや。ついでにコロッケパンもな」と一言言えば済むはずだ。
だが。
僕は常々「仏の岡田達也」と言われたいと思っている人間だ。
心の中では「どあほう!僕が買ってきましょうか?の一言で済むだろうが!」と毒突きながらも、笑顔で「民主主義に則って二人がジャンケンとおっしゃるならそうしましょう」と歯ぎしりしながら応えた。

そしてこの日を皮切りに、この「オランジーナ杯」と名付けられた「パシリ決めジャンケン」はその後、名古屋の千秋楽まで毎ステージ開催されることとなった。
(ちなみに名古屋の販売機にはオランジーナは無かったのだが、この大会は最後まで「オランジーナカップ」と呼ばれていた)

結論から言おう。
買いに行った回数は……
岡田達也  1回
三浦剛   2回
鍛治本大樹 6回

かじもと、惨敗である。
酷いときは「僕、今日、オランジーナいらないんですけど」という日さえ負けて買いに行っていた。
メイクの最中の白塗り状態や、眉毛を片方だけ描いた状態など、中途半端なときだろうが、僕の「(ドラえもん風に)パパパパッパパー!第○回オランジーナカップ!」という掛け声がしたら手を止めてジャンケンしなければならない。
なんともかわいそうで愉快な話だ。

惜しむらくは。
千秋楽の日、三浦剛が負けたことだ。
ヤツが勝っていればかじもと惨敗がもっと際だったというのに。
笑い話としては最高のオチだ。
そう考えると、三浦剛が負けたことも、鍛治本大樹が勝ってしまったことも、まだまだ笑いの神様に愛されてないということかもしれない。

次に対戦する日が今から楽しみである。



では、また。