ども、夫婦愛を感じた岡田達也です。



昨日、地下鉄に乗ろうとしていた。
半蔵門という駅のホームで、
相変わらず、台本に追われている僕は
人目もはばからずブツブツと独り言をつぶやきながら電車を待っていた。

電車がやってきた。
ドアが開き数人の人が降りていった。
その最後に
白い帽子を被った、僕の親父と同い年くらいの、つまり70歳オーバーのおじさんが降りていった。

入れ替わりで数人の人が乗っていった。
僕は最後の方に乗り込み、電車に乗ったばかりのドアの側に立った。

数秒後、発車のベルが鳴る。

と同時に、ホームを歩いていた白い帽子のおじさんが、ものすごい勢いで引き返してきた。
「怒濤の」
あるいは「猪突猛進」
あるいは「鬼気迫る」
というような形容がピッタリのダッシュだった。

そのスタートとドアが閉まり始めるのがほとんど同時だった。

おじさんは僕の目の前のドアまでダッシュしてきて
「おいっ!」
と怒気を含んだ音を発すると
電車の中の誰かに手招きをした。
必死で右手を招き猫のように動かしている。

だが。
無情にもドアは締まりきった。

不穏な空気が流れる車内。

次の瞬間。
「あっ!」という短い悲鳴と共に
やはり70歳過ぎのおばさまがドアに向かってダッシュしてきた。
おそらくは奥さまだ。

電車が動き始める。

奥さまは「動き始めた電車の窓に顔を付けて」
そう、まるでイルカの『なごり雪』よろしく
大声でしゃべり始めた。

「あ・た・し・が・つ・ぎ・の・え・き・で・お・り・て・ひ・き・か・え・し・て・も・どっ・て・く・る・か・ら・こ・こ・で・まっ・て・て!」

しかし、その声は100%届いてはいない。
電車の発車音にかき消されているし
なにより文章の途中から旦那さんの姿はカケラも見えなくなっている。

しかし。
奥さまは
右手で指を左右に動かしてUターンのゼスチャーを懸命に出しながら自分の思いを伝えきった。

そして一言
「いやだ、私。ボーッとしちゃってた」
と呟いた。

奥さま
そりゃ、わかるよ。
降りなければならない駅で考え事してたんだよね。
でもね
それを聞かされた我々はどうすりゃいいのさ?
そして何より
あなたたちは再び再会できるのか?

いや
きっと大丈夫ですよね。
長年連れ添った夫婦ですもんね。
旦那さん、半蔵門のホームで待っててくれてますよね。

どうか無事に会えてますように。



では、また。



追伸

本日『ナミヤ雑貨店』初日です!
実はまだ僕自身が観られてないので宣伝文句が浮かばないのですが
是非観てくださいませ!