ども、ちょっとだけ胸が痛んだ岡田達也です。



『サイレント・フェスタ』を終えて楽屋を片付け始めた。
自分の荷物をまとめ、楽器をしまい、衣裳を畳む。
すべてを鞄に詰め込み
地下の会場から1階まで運び上げる。
それからハートブレイカーズに差し入れられたお水、ビール、物販で売れ残ったものなどを首藤さんの車に載せるため全員で運び上げた。

ここで主催の首藤さんから太っ腹な発言があった。
「お水とかビールとか車に載りきらないから欲しい人は持って帰って!」

おおっ!
良いのか?
普通の水はともかく、命の水(ビール)は是非いただきたい!
もちろん、手で持って帰ることはできないがコンビニから宅急便で送ればいい。
(そこまでして欲しいのか?ああ、欲しいぜぃ!)

しかし、ここで問題が生じた。
水は8箱ほどある。
大量だ。
分け合っても問題ない。
ところがビールは3箱しかない。
出演者は10人。
首藤さんは棄権とみなし9人。
そこに演出のほさかくん、演出助手の増森くんを加えると11人。

……競争率が高い。

協議の結果「ジャンケンで勝負しよう!」ということになった。
それは妥当な意見だ。
だが。
ギャンブラー・岡田達也、いや、腹黒王子・岡田達也としてはそのままジャンケンに入るなど論外だ。

「きっといらない人もいるよね?持って帰るには重いし、コンビニから送るのもお金がかかるし」

この「二つ目の声」を使った心理的揺さぶりは見事にはまった。
次々に人が辞退していく。
ひょっとすると、舞台上では観たことがない「鬼気迫る岡田達也の迫力に押された」だけかもしれないがとにかく7人が辞退した。
残るはみのすけさん、曽世海司くん、西山宏幸くん、そして僕。

今にして思えば
一番年上であるみのすけさんに敬意を表して譲る
あるいは
一番年下である西山くんに「持って帰りなよ」と先輩らしいところを見せる
など
いくらでも格好つけるポイントはあった。

だが。
口から出た言葉は
「いいですか?最初はグーでいきますよ!」

本気の発言だった。

* * * * *

一抜けで勝ち上がった僕はコンビニへビールを持って行った。
その道すがら
フト
本当にフト
頭の中にあの言葉が過ぎった。

「奪い合えばたりぬ 分け合えばあまる」

あぁ……
胸が痛む。
相田みつを先生、本当にすみません。

僕はそれをかき消すため
阿佐田哲也先生の
「勝ったヤツだけが人間なんだ」
という文句をつぶやきながら歩いた。



では、また。