ども、ネコもイヌも好きな岡田達也です。



大学に合格し
家賃13000円の、壁が深緑色で、部屋の真ん中に柱が立っている妙な寮に引っ越してきた。
両親と3人で鳥取から車で運んできた荷物を運び入れる。

すると……

その僕らの足元を
小さな小さな
だけど
その小さな体をフルに使って元気一杯走り回る子ネコが部屋に侵入してきた。
しかも3匹。

動物嫌いの父親が必死に追い払おうとするが
手に段ボールを持っているので自由が利かない。
「シッ、シッ!」となんとか足で追い払おうとする。
その時は出て行くのだが
しばらくするとまた3匹で飛び込んでくる。
僕は、その光景が可笑しくてたまらなかった。

フト見ると、少し離れたところからお母さんであろう三毛猫が心配そうにコチラの様子を伺っている。
でも、彼女は近寄ってこない。
そうか。
この寮に棲みついているネコたちか。

* * * * *

やんちきや、ナバエちゃんや、ともあつくんたちと仲良くなった頃
当然、みんなも子ネコの存在には気付いていた。
名前を付けてやろう!ということになった。

3匹ともオスだ。
じゃあ、男らしい名前か?
なんだろう、何が良いだろう?
おっ!そうだ!
麻雀マンガの主人公の名前はどうだろう?
いいね、いいね!
『哭きの竜』の竜はどうだ?
いいね、いいね!
じゃお兄ちゃんは竜ね!
『三日月次郎』の次郎はどうだ?
いいね、いいね!
じゃ次男坊は次郎ね!

末っ子のネコは……

こいつは
こいつだけは何だか動きが鈍いんだよな……。
なんでだろうね?
他の2匹は抱っこしようとするとスッと逃げてしまうのに
こいつだけは逃げ遅れてつかまるんだよな。
だから可愛いんだけど。
ネコのわりに全体的に動きがスローだし。
おっ!そうだ!
こいつはドジだからドジはどうだ?
いいね、いいね!
じゃ末っ子はドジね!

僕らはドジを可愛がった。
他の2匹は大きくなるにつれてあまり近寄らなくなっていったけど
こいつだけは誰の部屋にも自由に侵入し、エサをもらい、泊まっていった。
そう。
ぼくらだけじゃない。
そうやって寮のみんなに可愛がられた。

だからドジだけは太った。

* * * * *

3年生に進級するとき
僕らは家賃3万円のアパートに引っ越すことにした。
コイツらとお別れするのは寂しいけどバイクに乗れば5分の距離だ。
オマケに
ナバエちゃんだけは家賃を滞納しててその寮に残ることになったし。
だったらいつでも会える。

それから1年。
ドジが車に跳ねられて死んでしまったという話を聞いた。
信じたくない話だった。

だけど……
そうだよな

ドジはドジだったもんな。
だからこの名前になったんだよな。

ドジはすばしっこくなかったもんな。
だからこの名前をつけたんだもんな。

ドジらしい最後かな。

ドジのおかげでたくさんたくさん楽しかったよ。
貧乏なのにオマエのネコ缶まで買わなきゃイケナイから大変だったけど。
部屋に泊めて朝になるとニャーニャー鳴いて外に出せってうるさかったけど。
授業に遅刻しそうなのにコタツから出てきてくれなくて手を焼いたけど。

「共同飼い主」だったけど
それでも会えて良かった。

* * * * *

そんなことを思い出した『旅猫リポート』。



では、また。