ども、今になって声が出なくなってきた岡田達也です。



疲れが出たかな?
しばらくはボーッとしていよう。

* * * * *

ただでさえ色白な西垣くん
見る見るその肌は白さを増し僕には青白くさえ見えていた。

そのうち彼が
「いやだ」
ではなく
「あぁ、なんか腹が痛い……」
と、お腹を押さえるポーズを始めた。

おいおい
ここまで来てお腹が痛いだと?
何、仮病なんか使ってやがる。
クラスメイトたちは心配の欠片も持ち合わせない。
痛がる彼をニヤニヤしながら眺めていた。

「う……、うぅ……、い、いたい……」
随分長い時間、念の入った芝居を続けている。
そんなにエリマキトカゲの格好をして走るのが嫌なのか?
その種目へのエントリーを逃れた僕は
他人事のように見ていたが
フト、彼の額にうっすら汗が浮かんでいるのが見えた。
しかも普通の汗ではない、イヤな汗らしいことがわかるものだった。

あれ?ちょっとマズイかも?

「ガキ、大丈夫か?もしかして本当に腹が痛いのか?」
「……だけー、さっきからそう言っとるがな。……あぁ、い、いたい」
「おいおい、念のために保健室に行くか?もうすぐ『走れ!エリマキトカゲ』も始まるで」
「うん、行きたいんだけど……。腹が痛くて動けん……。うーん……」

この辺りで、やっと事態の深刻さに気付いた僕は
西垣くんを背負いグランドから保健室へと急いだ。

保健室のベッドに西垣くんを寝かせ、保健の先生に事情を説明する。
(先生、名前を覚えていません。スミマセン!)
その間中、ベッドの上で悶え苦しむ西垣くん。
先生の決断は早かった。
「ココでは無理ね。病院に運びましょう」

事態は急転、冷や汗を流し始めたのはこちらである。
やんややんやと冷やかし続け
腹が痛いのを仮病扱いにしてた男が病院に運ばれる。
ちょっと、胸が痛い。

先生が車と救急病院を手配し
結局、保健室まで運んだ僕が病院まで付き添うことになった。

市内にある小さな病院に運ばれた。
西垣くんの診察の後、僕はお医者さんに呼ばれ、いろいろ尋ねられた。
彼の普段の健康状態、今日の様子など……。
僕は知りうる限りの情報を伝えた。
友人の尋常じゃない痛がり方に、こちらの方が恐くなってきたのだ。

「そうですか。『走れ!エリマキトカゲ!』という種目への出場を嫌がっていたんですか。なるほど」

その辺りで西垣くんのお母さんが病院に到着し
僕はお役御免となったので学校へ戻った。


翌日。
西垣くんは無事に登校してきた。

「おいおい!学校に来て大丈夫か?」
「ああ、もう平気だ」
「ごっつい(ものすごく)、心配したわいや」
「ごめん、ごめん」
「で、何だった?」
「急性神経性腸炎だって」
「ん?なんだそれ?」
「過度のストレスで、急に腸が縮むことがあるだって。それらしい」
「は?過度のストレス?そんなもん無いだろ?」
「何を言っとるだ!ストレス、あったわいや!エリマキトカゲだがな!」

え?
まさか?
アレに出るがイヤで腸が縮むほどのストレスがかかったの?

「ごっつい痛かったで!腸が2~3cmは縮んどるって言われたわい!」

爆笑である。
そこまでイヤだったのか。
なんという繊細な神経。
インターハイの大舞台でプレッシャーと戦いながら活躍する男が
運動会の一種目で腸が縮んでしまうほどのプレッシャーを感じていたとは。


今でもオリンピックと聞くと思い出してしまう男の話。
惜しむらくは、西垣くんにソウルで活躍して欲しかったな。

ガキよ、立派なオリンピック選手を輩出しておくれ!
楽しみにしてるよ!



では、また。