ども、みなさん呆れてるかもしれないけどもう少し学ラン話を続ける岡田達也です。



※昨日、一昨日の日記を読んでからお読みください。

そう、中学の時、僕は中ランを着用していた。
フロントアンダー・セミダブル
コンシール・ファスナー
センターベント
隠しポケット
玉虫色の裏地
斜めポケット
フロントステッチ
ハイ・カラー
このような多機能を備えた自慢の学ラン。
(これらすべて100%意味がない機能ではあるが)
僕は、この意味のないお洒落な学ランに十分満足していた。

ある日、僕の従弟の栄二さんが電話をくれた。
「達也、オレの部屋のタンスにオレの学ランがあるからそれをやるわ。持って行け」

栄二さんは僕よりも8つほど年上である。
こう言っちゃ何だが時代が違う。
一体、どんな学ランを着ていたのだろう?
今時のお洒落さは無いのではないか?
まあ、見るだけ見て要らなかったら遠慮しておこう。

僕は栄二さんの家に向かい、彼の部屋のタンスを開けた。

おおっ。
中ランより着丈が長いな。
長ランと言うほどでもないけど、なかなか厳(いか)つい形をしている。
うーん、迫力十分だ。
ただステッチが入ってるわけでもないし、ファスナーが付いてるわけでもない。
無理して頂くこともないか……。
僕は最後に裏地を確かめた。


おおおおっっっっっ!!!!!
ぬおおおおっっっっ!!!!!
わったいすかっっっ!!!!!

な、なんじゃこりゃ?????

右側の裏地には「岩に登って咆吼している虎」と「その後ろに竹林」が
左側の裏地には「鯉の滝登り」と「そこに舞い散る花びら」が
ド迫力の大きさで、
しかもその迫力とは裏腹の繊細さで刺繍されているではないか!

す、すげえ。
学生服の店で刺繍されたものはいくつか見てきたけど
このレベルのものは見たことがない。
栄二さん、そんなに悪かったの?
あんなに陽気で面白い人なのに。
想像がつかない。

僕はすぐに電話を入れた。
「ねえ、あれ貰って良いの?いや、それよりあの学ランどうしたの?」
「あれな、広吉のおばちゃんに刺繍してもらったんだ」

顎が外れた。
広吉のおばちゃんとは
栄二さんの父親の妹
そして
僕の母親の姉である。
僕ら2人にとってのおばだ。
昔から手先が器用で縫い物や刺繍が得意な人だった。
彼女の家の玄関には額縁に入った立派なお手製の刺繍が飾ってあったりもする。
確かに商売にできる、そんなレベルだ。

だが。
腕があるからといって
そこまで見事な刺繍を甥っ子の学ランに入れても良いのだろうか?

もちろん
鳥取の青谷町という田舎のことだから
ツッパリもいないし暴走族もいないし
そもそも「あいつ悪いなー」という人物すら存在しない土地柄だ。
だから多少感覚のズレはあるだろうけど……。

こんなの、僕の住む鳥取市街でさえ着て歩くにはあまりにも勇気が要る。

結局、僕はその学ランを有り難く頂戴し持ち帰った。
何はともあれ母親に見つかるのはマズイ。
「あなた、何この学生服!」
と言われて
「いやいや、この刺繍はね、広吉のおばちゃんがしたんだって!いやー、さすがだね!」
と切り返したところで何の効果もあるまい。
タンスに仕舞ったままいつの日かデビューする機会を伺ったのだけど
結局一度も日の目を見ることはなかった。
いや、見なくて良かったのだと思う。
その学ランで街を歩いていたら
僕が痛い目を見ていたかもしれない。

……お後がよろしいようで。



では、また。



追伸

今週号の『週刊現代』229ページ(だったかな?自信なし)
要チェックで!
僕のライバルが載っているではないか!