ども、昨日はランスルー(荒通し)を行った岡田達也です。






稽古場に成井さんの声が響いた。

「それでは以上で説明を終わります。

受験生の方はそれぞれでストレッチをおこなってお待ちください」


各々がストレッチを始める。

開脚をする者

前屈をする者

体側を伸ばす者

首を回す者

みんなみんな堂に入ってる。


僕は……。

何をすればよいかも分からなかった。

高校、大学と演劇経験もなく

その後は

サラリーマン、トラックでの配送業務と

演劇とはまるで関係ない世界でしか生きてこなかったのだ。

身体をほぐせと言われても手首足首を回すことくらいしか思いつかない。


横目で隣の人を盗み見た。

座った状態で両足を前に伸ばし

長座の姿勢で前屈している。

これだ!

こいつを真似れば良いのだ。

僕は前屈した。

……。

身体が90°以上前に行かない。

やばい、やばい。

こんな姿は見せてはイケナイ。

僕は前屈を止めた。


反対の人を見た。

彼はおもむろに立ち上がり

稽古場の真ん中でターンを回り始めた。

身体がキレキレである。

(彼は家庭の事情ですぐに退団してしまったのだが

このときの唯一の合格者である)

これだ!

こいつを真似れば良いのだ。

僕は立ち上がった。

……。

どうすれば身体って回るのだ?

立ち上がってみたもののターンのメカニズムが分からない。

やばい、やばい。

立ち止まってる姿を見せてはイケナイ。

僕はただの深呼吸に切り替えた。



1991年の春。

そのときは劇団事情で男優だけのオーディションだった。

稽古場にいたのは7人。

その中で演劇経験の無いのは僕だけだった。

本当に只のど素人が場違いな場所に混ざってしまっていたのだ。

あまりのレベルの違いに

「ああ、自分の来るところでは無かった。

記念受験に気持ちを切り替えて楽しんで帰ろう」

そんなふうに思い直したのを覚えている。



本日2010年キャラメルボックス第2次オーディション。

もはや僕のようなレベルの人間が受験に来ることもない。

しっかりした演劇経験を持つ人も多い。

でも。

経験値が見たいわけじゃない。

普段のあなたが出せるように。

それが魅力的であるように。

どうせ緊張はしてしまうんだから。

案外、楽しんだ者勝ちかも。


頑張って。



あ。

今、こんな日記書いても受験生は読んでる余裕は無いだろうな。






では、また。