ども、足に付いていたのはガムではなかった岡田達也です。






2年前の冬、『トリツカレ男』という芝居をやった。


僕はトトという名のネズミの役だった。

このネズミ、若干凶暴で食いしん坊で中年のネズミという設定だった。

(そういえば演出家からはそんな指定は無かったな。

非常に勝手な役作りではある)


芝居の中盤

リストランテの中で畑中智行演じるジュゼッペの話を遠巻きに聞いてるシーンがあった。

話を聞いているのは上手奥のテーブルに集まっている

三浦剛演じる新聞記者のレオナルド

阿部祐介演じるコックのアメデオ

そしてトト。


セリフのない二人と一匹はオフ(音声を発しない)の芝居をしなくてはならない。


初めのうちは大人しく聞いているだけだったが

だんだん物足りなくなってきた僕は

アメデオがパスタの乾麺を持っているのを利用し始めた。

パスタケースから乾麺を一本だけ引き抜きポリポリとかじって食べる

という行動を思いついたのだ。

東急ハンズのハムスター売り場に長いことへばり付いて

彼らの行動を観察し勉強した成果を発揮するべき時が来た。


両手でパスタを持ち

一口を小さく

そして非常に早いスピードでポリポリ食べる。


やってみた。


おお!

見事にネズミが表現されている!

(ような気がする)

さすが鳥取のデニーロ!

(誰も呼んでない)

我ながら大満足である。

(間違いなく自己満足である)


ふと隣の三浦剛を見た。

彼は新聞記者という役所なので

手帳に何かを書き込むという小芝居をかましていた。

が。

その手帳をよく見ると

書き込んでいるのは文字ではない。

ミミズが這っているような波線である。

メモを取っているように見せかけて波線である。


そのステージが終わったあと僕は彼に言った。

「落書きでもなんでもいいから

せめて文字を書いたらどうなんだ?」


彼は答えた。

「いや、その後にセリフがあるので

ちゃんとした文字を書いていると(それに夢中になって)セリフが出てこないかもしれないんです。

だからいいんです、これで」






つづく






『さよならノーチラス号』 音声ブログ

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一度はパソコンからの手続きをしなくてはなりませんがこれで行けるはずです。

是非、ご利用ください!