ども、縮み上がった岡田達也です。






楽屋には毎日「お客様リスト」というA4の紙が張り出される。

それぞれの役者が予約したお客さんの名前が一覧で書き込んであるのだ。

例えば昨日だと

『さよならノーチラス号』の稽古が休みだったので

多田直人(釧路のきんぽまる。え?意味?それはまたの機会に)や

温井摩耶(ハマのヨガ娘)

が観に来てくれており


岡田達也   多田直人  1枚

         温井摩耶  2枚


なんていう具合に書き込まれている。


で。


そのお客様リストの隣には

「VIPリスト」なるものも張られており

こちらの方はお世話になっている演劇関係者だったり

雑誌社、新聞社などのマスコミ関係などの名前が連なっている。


「お客様リスト」を見た。

多田直人、温井摩耶を始め

ネビュラプロジェクトのメンバーも大勢来てくれるみたいだ。


何気に「VIPリスト」に目を移した。

いろんな演劇関係の方の名前が並んでいる。


その下の方に


上川  1枚


ん?


上川?


どこかで聞いたことがある名前だ。

昔、中日ドラゴンズにそんな名前の選手がいたような気がするが……。


まさか……、ね。


昨日の日記で

「洋ちゃんは来てくれたのにたかやん先輩は来てくれないのか?」とか

ちょっと前の日記で

「ドリさんにはお花を贈って俺には何もないのか?」

なんてことを書き飛ばしてしまったのを

ヤツが……

失礼

メカが……

ああ、重ねて失礼

たかやん先輩が見つけてしまい

俺を抹殺に来るつもりなのか?


にしても。

そのほかの人の名前は全てフルネームで表記してある。

なのに「上川」だけは名字しか書かれていない。


どういうことだ?

はっしー“マシンガン・トーク”橋本香苗が気を遣ってぼやかしたのか?


中日ドラゴンズの上川選手であることを祈りつつ本番を迎えた。



終演後。



小市くんと物販の約束をしていた僕は急いで着替えていた。

そこへ制作の女の子が近寄ってきた。


「岡田さん、上川さんが面会でお待ちです」


「!」


ダメだ!

やっぱりヤツだ!

だってドラゴンズの上川選手は知り合いではない!

つまり僕に面会するはずもない!

僕のアドレス帳にある上川性はたかやん先輩しか登録されていない。


結局、小市、北村、岡田という

予定になかった3人そろい踏みの物販で盛り上がり

かなり待たせてしまったことを後悔しつつ面会の場に向かった。


僕は面会場(って楽屋の裏だけど)に行く前に小道具置き場を見た。

彼と対等に渡り合うためには何か武器が必要だ。


おお!

あるではないか、リボルバーが!

そうだ、この芝居のタイトルは『リボルバー』だ!

こっそりと懐に忍ばせた。


ああ。

イカンイカン。

これは小道具ではないか。

弾は入ってないのだ。

落ち着け自分。

かなり動揺しているぞ。


敵は本物のリボルバーを所持しているというのに

(多分ね。……いや絶対だな。日本の警察は早く動いた方がいい)

こっちは丸腰で闘わなければならない。

なんというハンデ戦。


僕は深呼吸を一つして

そっと楽屋の扉を開けた。


大勢の面会客でごった返す中

獲物を狙うような鋭い眼光がこちらに飛んできた!


いや。

あれは眼光ではない!

マイクロ・アイに仕込まれたターゲット・スコープがこちらに照準を定めたのだ!


僕は生身の人間であることを最大限に生かし

ブルース・リーの構えをしたまま

たかやん先輩の半径1メートル以内に入らないよう

最新の注意を払いながら近寄った。


「ずいぶん好き勝手なことを書いてくれてるじゃねーか」


あ、危ない!

いきなり隆也トマホークが僕の頭上をかすめた!


知ってはいたが一応確認した。

「よ、読んでいるんですか?」


「あたりめーじゃねーか!」

隆也スラッガーが火を噴いた。


おお、怖い!

絶対に『徹子の部屋』に出演した際には使わない言葉遣いで話しかけてくる!


僕はたかやん先輩の攻撃をかわしつつ

なんとか延命をはかっていた。


すると。


「これ、差し入れ」


「ん?重いな。何ですか?」


「シャンパン」


おお!

カッチョイイぞ!

さすがに押さえるべきとこは押さえにかかっている!

しかも桐の箱に入ってるなんて!


あの先輩、気遣いは抜群なのだ。

メカなのに。

人じゃないのに。

やっぱり美味しいところは持って行かれてしまう。




上川さん、忙しい中ありがとうございました!


またゆっくり。



達也汁  ~たつやぢる~






では、また。






『さよならノーチラス号』 音声ブログ

http://www.voiceblog.jp/caramel-voice/m200908.html