ども、扉座の稽古が始まる岡田達也です。








上の写真。

ただの公衆電話ではない。
我が母校・大阪芸術大学の第一食堂(通称・一食)の入り口にある電話だ。
そう言われても……、普通の電話じゃないか?とお思いだろう。
確かに見た目はただの電話だ。
でも僕にとっては思い出深い電話なのだ。


4年生のある日。

テレビドラマの撮影が芸大の敷地内で行われるという噂を耳にした。
「ほぅ。芸能人が来るのか。で、誰が来るの?」
早耳の男の子に尋ねた。
「笑福亭鶴瓶と古谷一行だって」


おおっ!
なかなか興味深い2人ではないか!
特に古谷一行さんと言えば
僕にとっては金田一耕助なのだ。
映画版だと石坂浩二さんの名前を挙げる人も多い。
が、子供の頃テレビで見てた古谷さん演じる金田一耕助は僕にとってはど真ん中に映った。
実に格好悪く、それでいて愛嬌がある、頭垢だらけの金田一。
大好きだった。

「あの古谷一行さんが来るのね。でもな、学内は広いから会えるわけないか……」


ところが。


何気なく一食の側を歩いていると、電話の近くにいるではないか!


おおっ!
やはりオーラが違う!
芸能人とはこういうものか!
なんて渋いんだ!
かっちょいい!


子供の頃、ブラウン管の中で出会った探偵さんが近くにいる。
僕はもう少し側でお顔を拝見したくなった(なんちゅうミーハーな)。
が、さすがにみんな遠慮して遠巻きに見てる。
それはそうだろう。
撮影中じゃなさそうだけど、やはり声はかけずらい。


僕は閃いた。

そうだ、電話だ!

電話をかける振りをして近づいてみよう。
(もちろん当時はまだ携帯がなかったのでね)


小銭もないのに電話に向かい受話器を持った。
ちょとだけ話すフリ。
何気なく後ろを振り返ると金田一耕助がすぐそこに立っている。


おおっ!
ち、ちかい!
十分堪能してもうた!
満足、満足!
僕は小芝居を終えて受話器を元に戻した。


す、すると!
古谷さんが隣の電話に近づいて来るではないか!
接近遭遇バリバリである。

(興奮しているため若干意味不明だ)


そして!
あろう事か、古谷さんが僕の目を見た!


おおっ!
「君の瞳に恋してる」とでも言われるのか?
胸が高鳴る!

そして彼は僕を見たまま話しかけてきた。


「失礼。ここから大阪市内へは06で良いんですか?」


ひょえー!!!!!!!!
は・な・し・か・け・ら・れ・て・る!!!!!!!
あの、金田一耕助に話しかけられてる!!!!!!!


昔々、しんちゃん(従兄弟です)と一緒に
「こえーよ!すけきよ、こえーよ!」
とか
「たたりじゃ!やつはかむらのたたりじゃー!」
などとテレビ画面を見ながら真似していたのに!
そのドラマの主人公が僕に!


僕の脈拍数は飛躍的に上がっていたはずだが、そこは小芝居の岡田達也。
平静を装って
「はい」
と一言だけ答えた。


とても貴重な忘れられない体験。


ほーらね。

特別な電話でしょ。

携帯が普及したから無くなってるかと思った。

良かった、良かった。






では、また。