ども、日本シリーズをテレビ観戦している岡田達也です。



悲しいな。

ドラフトも負けたし。

来年こそは。





で、まあ、金剛バスではなくMK観光バスだかなんだかに揺られて(失礼!)芸大に向かった。


芸大の麓にはバス停がある。
“麓”と書いたのは間違いではない。
大きなバス停があって、そこからはキツイ坂道を徒歩で登ってようやく学校に着くのだ。
バスの中で「またあの坂道を登るのか。イヤだな」と心の中で呟きながら顔はニヤニヤしていた。
懐かしいのだ。
あの坂を(僕らは芸大坂と呼んでいた)再び登る日が来るなんて。
ちょびっとだけ嬉しいのだ。
入学の季節は、舞い散る桜がとてつもなく美しい芸大坂。
ハァハァと息を切らせて登っていき、
これから始まる大学生活に胸を躍らせていた18の春。
どれもこれも甘酸っぱい思い出だ。
まだ、そんな記憶が自分の頭の中に残っていたなんて。
我ながら蒼い。


そうだ!
僕の住んでいたマンションはそのバス停の真横にある。
つまり芸大坂のスタート地点のところ。
学校まで最も近いアパートとして名を馳せたアートマンション。
今回の訪問の目的の一つに大家さんに会う、というのも含まれている。
だから、バス停に着いたらまずは大家さんに挨拶をして、
その後で坂を上り学校に向かおう、と決めた。
うん、それがいい。


学校が見えてきた。
バス停に入った。

バスが停まる。


と……。
とま……。
とまらない?


おや?
坂に向かって走っていく。

バスよ、バス。
お前は何処に向かっているのだバス?

「ゴーッ!」というエンジン音が力強さを増した。


次の瞬間、僕は口をあんぐりさせて音にならない音を発していた。
「あぐうぅぅうううううう」

バスがゆっくりと坂道を上り始めた!


ゆっくりと。
でも力強く。


エエーッ?!
登っちゃうの?
登ってくれちゃうの?
なんでそんなに親切なの?
金剛バスは坂の下までだったよ?
いつからそんなに学生に甘くなったの?
坂を上りながら甘酸っぱい回想するはずだった僕はどうすればいいの?

わからない、なにもかも……。


バスの中で一人だけ悶々と頭を抱え涙を流しながら(これは嘘)40才のおじさんは途方に暮れた。
つーか、大家さんに挨拶しようと思ってた計画もオジャンだ。



わしゃー、一言だけ言いたい。


歩け、若人!
あの坂を自分の力で登ってこそ芸大生なのだ!


って言われてもな。
バスが登ってくれちゃうんだもんな。
なんか淋しいな。











では、また。