予算委員会の中で、裁量労働制の問題に焦点が当たっています。直接的には、安倍総理が国会で答弁したその中身が事実に反するものだったことです。ずさんな資料に基づいて答弁したことが問題になっているわけです。

このこと自体、極めて重要な問題で、単に謝罪をするだけではなくて、どういう背景で、こういった、ねつ造と言われても仕方がないようなデータが作られたのか、しっかりと質していく必要があります。

ただ、私は、裁量労働制について、以前から問題認識を持って発言してきましたが、根本的な問題があると思っています。

裁量労働制というのは、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ決めた時間だけ働いたとみなし、残業代込みの賃金を支払うというもので、労働基準法の労働時間の規制を事実上外すことになりかねないものです。

本来、労使の関係は対等ではないという前提に立って、法律で労働者を守るために、労働時間をはじめとする様々な規制が行われています。そして、そういう規制は、これからも強化をしなければならないということで、この国会でも、時間外労働の上限規制を罰則で担保する、そういったことが提案されているのです。

裁量労働制は、労働者を守るための規制について、一部を青天井にするという性格を持つものですから、果たして適切に運用されているかどうかということの検証が、重要だと思います。

特に、働く人のうち、労働組合に加入している人はわずか17%で、大多数の働く人々は、労働組合のない中で働いておられます。この場合、裁量労働制は、「労使委員会」というものを設けて、そこでの合意に基づいて、その内容を定めることになっています。

しかし、 法律によって権限を認められた労働組合のない企業において、より緩やかな労使委員会が、果たして労働者を守るための歯止めになっているのか、その労使委員会で決められた裁量労働制が、法律が想定した適切な運用がなされているのかといったことを、まずしっかりと把握すべきだと思います。事実上それがなされていないなかで、さらに裁量労働制を拡大するというのは、あまりにも無謀だと言わざるを得ないと思います。

今回の法改正は、これから国会に出てくる予定ですが、働き方改革関連法案として1本の法律に束ねて、労働時間の規制など、従来よりも踏み込んだ強い規制がなされる部分と、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度のような、労基法の適用が部分的にとはいえ外される、そのような内容を共に含むものとして、国会に提出されると言われています。

しかし、性格が違うものは別々の法案にして、そして、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度については、もう一度しっかり実態を調査し、それを踏まえたうえで、法案を出し直す。その他の規制強化は、この国会の中で議論して、必要な修正を加えていく。それが本来の国会審議のあり方ではないかと思います。