ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のベアトリス・フィン事務局長が来日され、議員会館で昨日、与野党の代表者らが参加する討論集会が開催されました。私も民進党を代表して出席し、短時間ですが、基本的な考え方をお話ししました。

まず、核兵器禁止条約は、米国やロシアなど核保有国が賛同しなければ十分には機能し得ないため、一定の限界があることは事実です。しかし、数多くの国々の賛同を得て採択されたということは、核保有国に対する大きなプレッシャーとなるわけで、非常に意義深いと言えます。

他方で、隣国の北朝鮮が核開発を続けるなど、日本を取り巻く安全保障環境が非常に厳しくなっているなか、日本が米国の核抑止に依存しているという事実は重い。しかし同時に、唯一の戦争被爆国として、核軍縮を本気になって進めていかなくてはならない。いま、その本気度が問われています。

少し具体的にお話しすると、いまトランプ大統領のもとで、米国の新たな「核態勢の見直し」(NPR)が検討されています。

私が外務大臣を務めていた2010年にも、オバマ大統領のもとでのNPRが策定されました。そのとき米国政府の一部から、日本は米国の核抑止力に依存しているのだから、核の役割を低減するというオバマ大統領が進めるNPRの方向性に問題があると考えているのではないかという指摘がありました。

しかし私は、そうではないと。将来の核なき世界を目指して核の役割を低減していくというオバマ大統領の目指す方向は、我々も賛成だ。むしろ、もっともっと前に進めてもらいたい、と申し上げたことがあります。

いまトランプ大統領のもとで検討されているNPRは、それがかなり後退する懸念が示されています。止まっていた小型核の開発や、いまは原子力潜水艦にしか搭載されていない核が水上艦などにも幅広く搭載され得るような検討が行われていると報じられています。

これが事実だとすると、核軍縮政策の大きな後退であり、核の役割を低減させるという方向性ではなくて、核の役割を中心にした安全保障政策が再構築されようとしていると言わざるを得ません。

私は、日本がこれに対してどう対応していくのかということが問われていると思います。新しいNPRができるまでに、日本政府のスタンスを明確にして、影響力を行使すべきであると考えています。

オバマ大統領と広島で肩を並べて、核なき世界を目指すという理想を語られた安倍総理ですが、それとは全く逆の、核の役割を増大させようというNPRを作ろうとしているトランプ大統領とべったりの安倍総理と、一体どちらが本当の安倍総理なのでしょうか。

やはりここは被爆国として、核軍縮をさらに進めるために、しっかりと日本政府の立場を明確にし、米国の核政策が間違った方向に進まないよう歯止めとなる。それが、日本が果たすべき役割ではなないかと考えます。

核軍縮は、私が政治家として一貫して取り組んできたライフワークであり、外務大臣在任中も最も力を注いだ課題の一つでした。現状は厳しく、核なき世界に向けた道のりは長く険しいものですが、この人類共通の課題に、これからもしっかりと向き合っていきたいと思います。
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