トランプ大統領が、イスラム圏7か国出身者の入国を禁止する大統領令を発しました。すでに飛行機に乗ってしまっていた人も含めての話で、世界中に混乱と、そして抗議の声が起こりました。

本来、幅広く移民を受け入れ、開かれた国の象徴であったアメリカが、イランやイラクなど特定の国家の出身者を、その理由だけで入国を禁止するというのは、世界中から驚きをもって受け止められたと思います。

寛容な国、多様性を認める国、アメリカは一体どこへいってしまったのか。私も大変疑問に思います。

この大統領令を擁護しないよう、書簡で司法省内に指示を出した、サリー・イエーツ長官代理が解任されたことも含めて、トランプ大統領の行動はアメリカ合衆国のトップとして全くふさわしくないものだと思います。

あわせて、そういったトランプ大統領の判断に対して、「コメントする立場にない」と国会で安倍総理が述べられたことも、私には驚きです。

自由、法の支配、不当に差別しないといった基本的価値を重視する外交を唱えてこられた安倍総理が、従来の民主国家が共有していた基本的価値に反すると思えるトランプ大統領に対して、全くコメントしないというのは大変残念なことだと思います。

もちろん、今後の日米関係を考え、トランプ大統領との信頼関係も確立しなければならない。2月10日に首脳会談を控えて、安倍総理が慎重になっていることは分かりますが、譲ってはいけない基本的なこと、日本のリーダーとして、「これだけは譲れない」ということは、明確に発信する必要があります。

貿易の問題、安全保障の問題、日本の国益にとって重要な問題はありますが、だからといって、譲ってはいけない原理原則にあえて触れないという姿勢は、結局すべてが取引だというトランプ大統領のその路線に乗ってしまうのではないかと懸念しています。