そして、今までやってきたことに対する敬意も忘れてはいけない。例えば、日米核密約の問題について、私は歴代自民党政権が国民に対して事実を言っていなかった。例えば、核を搭載した艦船が日本に入ってくる可能性があるということを日本政府は認めてこなかった。そういうことについて、密約調査で明らかになりました。

しかし、私はそういったことについて強く批判することは避けましたし、密約の問題について公表する前に、歴代総理・外務大臣に対して、それぞれ事務方にこういう発表をするということも説明もさせました。

佐世保とか横須賀とかそういった核を搭載した艦船が出入りしていた可能性のあるところには、私自身が出向いて市長さんや議会の議長さんに謝罪をしました。

もちろん、民主党政権の話ではありませんからそこまでする必要はなかったかもしれませんが、私としては、やはり日本政府として佐世保市や横須賀市に対して、政権が変わったとしても、自民党政権時代のことであったとしても、やはり事実を伝えていなかったことは政府としてしっかりと謝罪すべきだと考えて謝罪をさせていただいたわけです。

この密約の発表にあたり、アメリカとも綿密に連携・連絡を取り、今後に問題を残さないようにきちんとした対応方針も出しています。

いずれにしても、この密約問題一つを取っても、私は従来の密約問題というのは安保改定の岸総理、沖縄返還の佐藤総理の問題ですけれども、当時の時代状況を考えたときに、一方的に批判すべきではない。

そのときの状況、例えば岸総理が日米安保改定のときに、日本の基地から米軍が直接(戦地に)発進する場合には、米側は日本政府と事前に協議するという約束(事前協議制)がある。しかし、朝鮮半島についてはそれは例外であるという密約があったわけです。例外にするというところが密約です。

それがそういう密約があったということは、密約調査の結果、文書ではっきりしたわけですが、私のコメントは、当時の時代背景、GHQの占領からまださほど時間も経っていないなかで、当時の日本政府として朝鮮半島の有事の際の事前協議を例外とするという約束がなければ、事前協議そのものが取れなかったのではないか。そういうことを考えると、これは一概に批判するのは行き過ぎではないかということも申し上げました。

やはり時代時代において、それぞれの状況でリーダーが苦渋の決断をしたということについては、それを理解するというのも大切なことだと思います。

先人がやってきたことに対して、敬意を持って接する。批判すべきことはもちろん批判しなければなりませんが、一方的な批判は決してしない。これが、私が外務大臣として取ってきた態度です。

安倍さんのお話はすべて民主党政権がやっていたものが悪い、自分がそれを立て直したと胸を張って言っておられます。私はもう少し、懐深く答弁されたり行動されたほうがいいのではないかと思った次第です。