大阪経済大学が開催する「北浜・実践経営塾」でこのほど、立花エレテックの渡邊武雄社長に「人基軸経営の100年商社~AI、IoT時代を生き抜くために~」と題して講演していただきました。


立花エレテックは産業用機械や電子部品・システムなどを販売する技術商社で、1921年(大正10年)の創業、3年後の2021年に創業100年を迎えます。もともと三菱電機との関係が深く、現在も三菱電機の代理店となっています。三菱電機が筆頭株主でもあり、歴代の社長も三菱出身者が多く占めてきましたが、渡邊社長は2000年にプロパー社員として事実上初めて社長に就任しました。当時55歳で、末席取締役からの抜擢でした。
しかし渡辺社長が社長に就任した頃は、日本経済がバブル崩壊以後に低迷が続き「失われた10年」と言われていた時期で、立花エレテックも厳しい状況でした。しかも取締役は全員、渡邊社長より年上。そんな中、渡邊社長は持ち前の実行力で、経営立て直し策を次々と打ち出しました。
まず社名を当時の立花商会から立花エレテックに変更して、新社名の大看板を高速道路沿いの目立つ場所に設置しました。これはもちろんPR効果を狙ったものでしたが、それ以上に社員がその大看板を目にして元気になってモチベーションを挙げることができたと言います。またそれまでの各営業マンによる個人商店の集まりのような風土を打ち破るため、人事評価制度と給与体系の改革や執行役員制度の導入などを行うとともに、ビジネスショーに出展するなどして社内の一体感を高めることに取り組みました。
不良在庫の処分や不良債権の処理も大胆に進めるとともに、販売店・代理店の強化を図り、M&Aにも取り組みました。その結果、同社の業績は回復し、2004年に東証2部、2005年には東証1部に指定替えとなりました。リーマン・ショック以後は現在まで実質的に8期連続増益となり、過去最高の利益を上げるようになっています。
この中で、渡邊社長は「人基軸経営」の考え方を経営の基本に置いています。人を育てることを最重要視し、社内研修や勉強会の開催、社内のコミュニケ-ション強化を心掛けているそうです。社員のやる気と能力を引き出すことが業績アップにつながるというのが渡邊社長の強い信念です。
そして社員を育てるためには、経営者は人間性や一般教養が求められると渡邊社長は指摘します。「部長までは実務能力が必要。しかしそれ以上の役職になると実務能力だけではだめ。誠実、謙虚、正直、構想力、課題解決能力、自分なりの信条・倫理観・判断基準を持っていること、一を聞いて十を知る、他人を思いやる性格…」と、経営者に求められる資質を次々と挙げ「そのためには勉強しなければならない」と熱く語ってくれました。