大阪経済大学はこのほど、2018年度第3回の「北浜・実践経営塾」を開催しました。ゲスト講師はアバンティ代表取締役の渡邊智惠子氏、テーマは「22世紀の残すもの~オーガニックコットンを通した四方よしの実践~」でした。


アバンティは渡邊氏が1985年に設立した会社で、オーガニックコットン(無農薬有機栽培綿)の輸入販売、および同製品の企画製造販売を手掛けています。
渡邊氏によると、綿の栽培は世界的な問題を抱えているとのことです。先進国での綿の栽培では農薬の大量使用や遺伝子組み換えなど環境へのダメージや安全性の問題があり、発展途上国では綿の栽培の多くが児童労働によって行われているということです。そのため同社では、①遺伝子組み換えをしていない②児童労働に関わっていない③労働者の権利を守る③化学薬品を使用しない――の4つを「オーガニックコットン」としています。
これは、綿の栽培段階だけではありません。実は綿は種を守るため表面が油で覆われていますが、綿からシャツなどの最終製品を作る途中の染色の工程で、通常はまず染料をしみこみやすくするため綿に含まれる脂分を取り除き、そのうえで染色し、その後に柔軟剤仕上げなどの数多くの工程を経るそうです。その各工程で大量の水を使用するため、「1枚のTシャツを作るのに700リットルの水が必要」(渡邊氏)ということです。

こうしたことから同社では、綿の糸から生地、製品まですべて染色しないというこだわりを貫いています。染色しないので真っ白ではなく、やや黄色味がかった色で、それが自然の色なのです。主にTシャツ、肌着、アウターなどの製品にしていますが、毎日身につけるものだけに、肌触りもよく、コットンの本来の風合いを味わえるのが特徴だということです。同社はこれを「PRISTINE(プリスティン)」のオリジナルブランドで製造販売しています。
同社のもう一つのこだわりが「Made in Japan」です。原料となる綿の多くは米国テキサス州で無農薬有機栽培をしている契約農場から輸入していますが、そこから紡績、生地、縫製などの各工程は国内の契約企業に委託しています。近年、衣料品は中国など新興国で大量生産して日本に輸入して販売するというのが当たり前になっていますが、同社はあえて「国産」にこだわっているわけです。
このような同社のこだわりは、その一方で製品の価格をある程度高いものにせざるをえません。しかしそれでも同社の製品は着実に広がっており、東京、大阪など大手デパート内で「PRISTINE」の売り場展開を増やしています。渡邊氏によると、会社設立以来の34年間で、赤字になったのは1回あるものの、あとはすべて黒字で、今年7月期は売上高と経常利益率が過去最高となったそうです。
いま渡邊氏が力を入れているのが、原料である綿の生産も日本で復活させることです。すでに国内10数か所の農家と協力して綿花畑を増やすことに取り組んでおり、「これは日本の耕作放棄地を減らし農業を振興させることにもつながる」と強調していました。
渡邊氏は会社経営と並行して、東日本大震災の被災地支援とオーガニック製品の普及を結び付ける活動、森林の自然環境を守るための活動などに精力的に取り組んでいます。
今後は「日本で引き継がれてきた技術を活かして、日本のワザを世界に広めたい」と言う渡邊氏。「オーガニック製品を通じて地球環境の保全と社会貢献をする」という同社の経営理念のもと、「人のため、地球のため、貢献できる100年企業を目指す」と意気込みを語ってくれました。


なお、「北浜・実践経営塾」第4回は、9月12日(水)に開催します。ゲスト講師は日経サービス社長の嶋田有孝氏で、テーマは「中小企業ゴキブリ論~変化の時代をしぶとく生き残る~」です。乞うご期待!