『マイナビニュース』で連載中のコラム「経済ニュースの“ここがツボ”」で、新しい記事を掲載しました。タイトルは「平昌五輪で日本のメダル過去最高13個――日本経済再生へ4つのヒント」です。
https://news.mynavi.jp/article/economytsubo-98/

 この原稿では、平昌五輪で日本選手が13個のメダルを獲得するなど大活躍した結果について、これまで挫折したり苦境に立っても決してあきらめないチャレンジ精神があったことなど4つの特徴を挙げ、それらが現在の日本経済が本箔的に復活を遂げるために必要なヒントにもなっていると書きました。
 私たちは日本人選手の活躍に勇気と元気をもらいましたし、日本の可能性も感じることができました。これはスポーツに限らず「経済」についても当てはまるという趣旨です。
 もう一つ、この原稿が掲載された後になりますが、今日(28日)のテレビで、高木菜那選手が所属先の日本電産サンキョーの親会社・日本電産の本社(京都)を訪れた様子を中継で放送していました。
 同社の本社ビルに到着した高木選手を永守重信会長兼社長が出迎え、二人がその場でインタビューに答えていましたが、高木選手のコメントには改めて感動すると同時に、興味深かったのは永守会長のコメントです。高木選手には金2個で合計4000万円の報奨金を出し、社員としての資格を「3階級特進」で係長クラスに昇進させると発言していました。
 永守会長といえば、積極的なM&A戦略によってこれまで国内外の数多くの企業を買収し、しかもそれらのすべてで買収後に業績を向上させていることで知られています。高木選手が所属する日本電産サンキョーも、もともとは長野県下諏訪町に本社を置く三協精機製作所という精密機械メーカーです。かつてはオルゴールで有名でしたが、多額の損失を出して経営危機に陥ったことから、2003年に日本電産が買収したもので、2005年に現在の社名に変更しています。
 三協精機製作所時代から同社のスケート部は日本を代表する存在で、長野五輪の金メダリスト、清水宏保選手も所属していました。永守会長は三協精機を買収した後、その経営改革に取り組み短期間で黒字に転換させました。このような場合、普通なら、業績を立て直すのにスポーツ支援の経費を削減するとか、あるいはスポーツから撤退するケースもありますが、永守会長は三協精機の買収後もスケート部への支援を継続、むしろ三協精機時代より手厚くしました。
 その中から、バンクーバー五輪で長島圭一郎選手が銀、加藤条治選手が銅を獲得するなど成果を上げ、そして今回の高木菜那選手の快挙へとつながったのでした。
 永守会長は、このようにスポーツへの支援を続ける理由について「多くのスポーツ選手は引退した後のセカンドキャリアが大きな課題。日本電産は他の企業と違って所属選手は契約ではなく社員なので、選手を引退した後も会社員として働き続けられる。そのため選手は引退後の心配せずに選手活動に専念できる。企業がそれを支援するのは、社会貢献という以上の、ロマンだ」と語っていたのが印象的でした。
 企業のスポーツ支援は一般的には、宣伝広告の一環として、あるいは社会貢献として取り組むケースが多いと思われますが、この永守会長の考えはそれだけにとどまらないようです。所属選手やチームの活躍によって社員全員に元気を与え、それが社会全体にも広がることによって、間接的に日本経済全体にもいい影響を与えることにつながるということでしょう。
 それは広い意味での経済効果と言えるでしょうし、2020年の東京五輪にもつながるものだと感じました。