だいぶ日にちが経ってしまいましたが、先日、淡路島に行ってきました。講演などでよく地方に出かけますが、多くが県庁所在地や都市部が中心ですので、淡路島は初めてでした。せっかくの機会ですので、神戸から車で明石海峡大橋を渡って島に入り、講演をはさんで1泊2日で島内各地を回りました。
よく考えてみると、淡路島は少し“不思議な存在”です。古事記や日本書紀などの神話によれば、淡路島が日本列島で最初にできた島とされていますが、一般にはそのことが話題になることは少ないようです。神戸や大阪の大都市圏から至近距離にある割りに都市化もあまり進んでおらず、どちらかといえば地味なイメージです。
それでも最近は玉ネギの産地としてメディアに取り上げられることが増えて、注目され始めています。淡路島の玉ネギは柔らかくて甘く、辛みが少ないのが特徴です。淡路島は瀬戸内海の温暖な気候や風土に恵まれていることが玉ネギの栽培に適しているそうで、淡路島の特産品としてすでにブランド化し、有力産業となっています。
淡路島では冬でも温暖な気候を利用して、玉ネギだけでなく、年間を通して同じ耕作地でコメ、他の野菜も合わせた3種類を栽培する「三毛作」も行われているとのことです。

広大な玉ネギ畑が広がっています(南あわじ市)

また傾斜地を利用した農業が盛んで、棚田も目にすることができました。規模は大きくはありませんが、島内には数か所の棚田があるそうです。棚田の先には海が見える美しい光景は淡路島の農業と自然の姿を象徴しており、農業と「食」が地域活性化のテーマの一つとなっています。

瀬戸内海が見える棚田(淡路市)

島おこしのもう一つの柱が観光です。実は淡路島は温泉が豊富で、最近も新しい源泉が発見されたそうです。島を訪れる観光客は増加傾向にありますが、まだ十分といえません。最近は訪日外国人の増加が目立っていますが、その中でも近畿圏を訪れる外国人が大幅に増えており、これをもっと淡路島に呼び込むことが課題です。

洲本城跡から洲本市の中心街を一望できる

 温泉と並ぶ観光資源の一つが「国生み神話の島・淡路島」です。古事記や日本書紀の国生み神話によれば、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)・伊弉冉尊(いざなみのみこと)が最初に創造したのが淡路島で、その伊弉諾尊が余生を過ごしたとされる地に伊弉諾神宮があります。同神宮の1万5000坪におよぶ広大な境内は天然記念物の大楠をはじめ樹林におおわれ、荘厳な雰囲気に包まれています。

伊弉諾神宮(淡路市)

淡路島にはこの他にも国生みにゆかりのある神社や旧跡が各所に残っています。その一つ、沼島(ぬしま)まで足を延ばしてきました。沼島は淡路島の南東部にある土生(はぶ)港から小型定期船で約10分の沖合に浮かぶ小さな島です。神話では、伊弉諾尊・伊弉冉尊の二神が天の浮き橋に立って混とんとした大海原を矛でかき混ぜ、その時に矛から滴り落ちた雫が最初の島となったとされており、これが今日の沼島だという伝説になっています。二神はこの島に降り立って夫婦の契りを結んで国生みを行い、まず淡路島ができたということになっています。

淡路島の沖合に浮かぶ沼島。前方後円墳のような地形が面白い。
上空から見ると勾玉の形に似ているそうで、何やら神秘的です。

沼島の中央の小高い山の頂上には、やはり伊弉諾、伊弉冉の二神を祀った神社「おのころ
神社」があると聞いたので、自転車を借りて行こうとしました。ところが山のふもとまで来ると自転車では登れないため、歩いて山道を歩いていきましたが、途中から天を突くような険しい道と急斜面の階段になりビックリ。聞けば、山全体がご神体になっているそうです。 



沼島の山の上に鎮座する「おのころ神社」

おのころ神社の参拝を済ませ用心しながら山を下りて、再び自転車に乗って今度は島の裏側に回りました。目指すは、やはり国生みゆかりの上立神岩(かみたてがみいわ)という奇岩です。ここは、二神が島に降り立って夫婦の契りを結んだ場所、「天の御柱」だともいわれるもので、崖のような急な坂を下りた海岸に矛先のような形でそびえたっています。高さは30メートルもあるそうです。この周辺の海岸にはほかにも奇岩が並んでおり、独特の光景です。

伊弉諾尊・伊弉冉尊が契りを交わした場所との伝説がある「上立神岩」

国生み神話はあくまでも神話で、学問的に事実と確認されているものではありません。しかし神話というものは、何らかの事実がもとになっている可能性があると考えられます。そのような眼で淡路島を見ると、なんだか神秘的な魅力を感じることができますし、島おこしを目指す地元にとっては観光資源としてもっと活用できる余地がありそうに思えました。
沼島から淡路島に戻り、あとは大鳴門大橋を渡って徳島から飛行機で東京に帰りました。大鳴門橋の下には有名な鳴門の渦潮が流れていますが、淡路島の地元自治体と兵庫県は徳島県と共同で、鳴門の渦潮を世界遺産にしようと運動を始めています。実際に世界遺産登録までには時間がありそうで課題も多いようですが、その運動を通じて観光PRや地元経済の活性化につなげることが期待されます。
淡路島には3つの市がありますが、島の活性化に向けて地元自治体の機運も盛り上がっています。こうしてみると淡路島にはまだまだポテンシャルがありそうです。









 講演後の懇親会で、地元の皆さんと意見交換させていただきました。
 (画面左から、洲本市長・竹内通弘氏、三井住友銀行常務執行役員・高田厚氏、岡田、淡路市長・門康彦氏)