10月初め以降、首筋から右肩・腕の激しい痛みで手の動きがままならない状態になってしまい、ブログ投稿が途切れてしまいました。まだ十分に回復していないのですが、ブログを再開できる程度に症状は改善しました。

 

このような事情のため、だいぶ時間がたってしまいましたが、10月上旬に大阪経済大学の「北浜・実践経営塾」(前期第4回)が開催されました。今回のゲストは、靴下販売のタビオ社長、越智勝寛氏です。

 

タビオは越智社長の父親である越智直正氏(現会長)が1968年に靴下専門卸問屋を創業したのが始まりで、その後、一時は倒産の危機に見舞われながらも乗り越えて事業を拡大させてきました。現社長の勝寛氏は2008年に社長に就任し、同社の売上高は159億円、店舗数は各業態併せて300近くを展開しています。

越智社長によれば、同社の特徴は①徹底的に日本製にこだわる(全商品の97%が日本製)②同社独自のネットワークシステムによる生産体制③付加加価の高い靴下製品を開発し、市場動向に左右されないで独自の地位を築く「ブルー・オーシャン戦略」――などにあるということです。

日本製にこだわる戦略は、衣料品業界では中国での生産がほとんどという現状の中では異色です。しかし越智社長は「色んな国での生産を試してみたが、『良い製品』を追求した結果、日本製ということに行き着いた」ということです。

靴下のような商品は「低価格化」の競争と考えられがちですが、越智社長は「消費者の満足度は履き心地で決まる。足が満ちると『満足』になる」と指摘していました。それほど「品質」にこだわっているわけです。

越智社長がこうした戦略にこだわる背景には、流通革命があります。ショッピングセンターなど大型商業施設で客足が遠のく例が増加する一方で、インターネット販売が普及するなど、流通業界を取り巻く経営環境は激変しており、越智社長の講演もそれに対する危機感があふれていました。

そのために同社は2015年にiPadレジを全店に導入しました。これにより売上管理や売れ筋商品の把握が効率化し、接客をきめ細かくすることにもなりました。導入当初は社員や店員の教育と習熟が大変だったそうですが、今ではすっかり定着しているそうです。

オムニチャンネル化も進めており、ネットで予約して店舗で受け取る、店舗で購入して自宅配送など、事業が拡大しています。

このように越智社長は、創業者であり父親である直正氏が築いてきた同社を受け継ぎながら、時代の変化に対応する新たな戦略を打ち出しています。勝寛社長は「世界一の総合靴下企業を目指す。世界一とは売上高ではなく、品質だ」と最後に改めて強調していたのが印象的でした。

考えてみれば、私たちは普段、服装やカバン、靴、さらには時計や眼鏡など身に着けるものには気をつかい、おしゃれをしますが、そのわりには靴下には関心が薄いような気がします。しかし靴下は肌に直接触れる肌着であると同時に、人の目に触れる外着でもあります。その一方で、足の裏には6万もの汗腺があるそうで、歩くと踵には体重の1.8倍もの圧力がかかるのだそうです。そのため靴下には、肌ざわりや履き心地、耐久性などの機能から、ファッション性まで持ち合わせているという不思議な衣料品なのです。私たちも、靴下という存在をもっと見直してみてもいいかもしれません。