先日、講演で岐阜県高山市に出かけてきました。せっかくの機会なので1泊して、高山の町を見て回り、そのあと白川郷の合掌造り集落まで足を延ばしてきました。あいにくの雨模様でしたが、平日にもかかわらず多くの観光客が訪れ、特に外国人の姿が目立ちました。

       高山市の伝統的建築物郡保存地区 
 

高山は、江戸時代には幕府直轄地として栄え、今もその名残をとどめる古い町並みが有名です。市内の一角にある伝統的建造物群保存地区は、細い道の両側に江戸時代に建てられた商家が軒を連ねています。黒く塗られた格子と老舗ののれんが続き、軒下には用水路が掘られきれいな水が流れています。

 
保存地区の真ん中の通りを抜けると、高山陣屋があります。幕府の直轄領だった飛騨国を治める郡代の役所跡で、表門や屋敷がよく保存されています。
        江戸時代の郡代役所跡、高山陣屋
 

 まさに高山は日本の昔の風景をそのままに残しており、このような魅力から高山を訪れる観光客は年々増加しています。2016年は前年比4%増の4511000人で、過去最高を記録しました。同市の人口は8万人足らずですから、その60倍近くの観光客が来ていることになります。

特に、街を歩いて感じたのは外国人観光客の多さでした。データを見ると、2016年は宿泊者ベースで前年比26%増の461000人で、過去最高でした。しかも外国人観光客の国籍が中国などアジアだけでなく、ヨーロッパ、北米、オセアニア、中東など幅広いことが特徴的です。

考えてみれば、高山は交通の便がいいとは言えません。東京からは新幹線で名古屋まで約1時間40分余り、名古屋で単線の高山線に乗り換え特急で約2時間半、合計で4時間半近くかかります。しかも爆買いするような大型店があるわけでもありません。にもかかわらず多くの観光客が訪れているのは、やはり日本らしさの魅力があるかわでしょう。

と同時に、地元が早くから観光客誘致に取り組んできた成果が表れていることに注目したいと思います。昔の景観を残すため伝統的建造物群保存地区では電線を地下化し、車の進入規制を行うなど、景観保存を街ぐるみで徹底的に行っています。さらに驚いたのは、高山市のホームページが日本語の他に11カ国語で表示されていることです。最近は多くの自治体が外国人観光客の受け入れに対応していますが、高山市の徹底ぶりは群を抜いています。

自治体だけではありません。地元の地域金融機関である飛騨信用組合は、スマホのアプリ上で利用できる電子通貨「さるぼぼコイン」の実証実験を今年5月から開始しており、秋に正式に運用開始するそうです。これは高山市・飛騨市限定の地域通貨となるもので、提携する地元商店で利用することで手軽に買い物ができ、観光客、特に外国人観光客にとって便利なツールになりそうです。

高山ではそうした地元企業や関係者の熱意を感じ取ることができました。

 高山の町並みを見て回った後、バスで約1時間、白川郷まで行ってきました。高台の展望台から見た合掌造り集落と緑の田園は、まさに日本の原風景。「さすが世界遺産」としばらくその光景に見入っていましたが、高山からさらに山奥に入った白川郷でも観光客の多さが印象的でした。

      白川郷の全景(萩町城跡展望台から)

 

  合掌造り農家の内部は頑丈な柱で支えられている

  (雪の重みに耐えられるように、柱と床の間に隙間が作られている)

 

これもデータを調べると、2016年の観光客数は前年比4%増の約180万人。同村の人口(1600人余り)の実に1000倍以上です。そのうち外国人は56万人を占めています。村のバスセンターには、やはり数多くの言語ごとに観光案内パンフレットが置いてありました。

もちろん白川郷の観光資源としての魅力が多くの観光客をひきつけているのですが、高山市と同様に、地元の観光客誘致と町おこし、村おこしの取り組みがあるからこそでしょう。

高山市と白川村は隣接する飛騨市、さらには北陸川の自治体とも連携して広域観光ルーとを形成して誘致に取り組んでいます。

こうしてみると、観光地の魅力アップと地域活性化のモデルと言えます。全国の観光地にとっても、訪日外国人を地方にも呼び込み地域活性化につなげていくヒントがたくさんあるように感じました。