大阪経済大学は今年度第2回の「北浜・実践経営塾」を開きました。今回のゲスト講師は、昨年12月までアメリカン・エキスプレス・インターナショナル上席副社長兼アメリカン・エキスプレス・ジャパン社長をつとめられた中島好美氏で、「経営に求められるリーダーシップと多様性」について語っていただきました。

 
 
 

 中島氏の講演は、まず就職に苦労したというお話しから始まりました。中島氏は1980年(昭和55年)に早稲田大学法学部を卒業されたのですが、当時はまだ男女雇用機会均等法などない時代。一日30社ぐらい回ったものの、どこも門前払いの状態だったそうです。それでもあきらめずに就職活動を続けた結果、大手信託銀行に就職できました。ここで「何事もあきらめてはいけない」ことを学んだそうです。

 その後、外資系の化粧品会社、エイボンに転職しましたが、中島氏によると、「英語ができなくて嫌いだった」ということです。発注用紙に記入した英語が間違っていて、アメリカ人の上司に怒られても「何を怒られているか、よくわかっていなかった」と失敗談を披露してくれました。

世界的大企業のナンバー2である上席副社長までつとめられた中島氏の経歴を考えると、少し意外なお話しですが、そのような失敗などがあってこそ、逆に後の中島氏の活躍につながったのかもしれません。

2002年にアメリカン・エキスプレス・インターナショナルに入社し、副社長として日本市場での同社のビジネス拡大をけん引してきました。アメックスは国別の業績を公表していませんが、中島氏が同社に入社して以来、日本市場でのカード会員数や決済店舗数、売上高などを飛躍的に伸ばしてきました。

アメックス時代、中島氏にとって転機になったのはシンガポールの社長に就任したことでした。アメックス・インターナショナル全社の中で日本人が社長に就任するのは初めてのことで、女性社長という点でも同社初めてでした。シンガポールでは多様性(ダイバーシティ)の本質というものを学んだそうです。

同国は中国系、マレー系、インド系など数多くの人種や宗教が混在し、それぞれ文化も生活習慣も違います。そのどれも尊重しなくてはならず、一部を排除してはいけません。会社の仕事では、それらの人たちを分けずにまとめながら利益を上げていかなくてはならないわけで、「まさにこれがダイバーシティだ」と実感したそうです。そのトップに立つことによってリーダーシップも磨かれていったということでした。

シンガポールから帰国後は、アメックス・インターナショナル上席副社長兼日本法人社長に就任し、シンガポール時代の経験も生かしてさらなるリーダーシップを発揮され、日本のダイバーシティの進展のために尽力されてきました。

講演の最後に、「ダイバーシティこそがイノベーションを生む」「ダイバーシティ―を楽しむ多様な人脈が重要」「リーダーに必要なのは一緒に汗を流せるコミットメント力と発信力」の3つの点を強調されたことが印象的でした。

中島氏は昨年4月から事業構想大学院大学の客員教授に就任され、今年6月にはヤマハとイオンフィナンシャルサービスの社外取締役に就任されています。事業構想大学院大学では、やはり自らの経験をもとにグローバル・マネジメント、マーケティング、人材育成などについて教えておられます。

ちなみに同大学院大学は社会人を対象に、新規事業立ち上げや地域活性化、起業などにつながる事業構想修士(MPD)という資格の取得を目指すユニークな大学院で、私もゲスト講師として一度、特別講義をしたことがあります。

最近は、仕事を続けながら経営やキャリアアップにつながる学びの場を求める人が増えており、多くの大学が社会人大学院や社会人を対象にした講座などを続々と開設しています。大阪経済大学でも社会人大学も開設しており、私も修士課程の教鞭をとっています。「北浜・実践経営塾」も形は違いますが同じような目的を持ったものです。これらが少しでも、多くの方の仕事やキャリアアップに役立てばと思っています。