新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各国が入国制限などの措置を相次ぎ打ち出す中、収穫などの作業を外国人労働者に頼っていた農業セクターが危機にひんしている。春の農繁期を控える農家は深刻な人手不足に頭を悩ませており、国民の食卓にも影響が及ぶとの懸念も高まっている。
食肉加工にも影響
在メキシコ米国大使館は16日、「H-2Aビザ」に基づく季節農業労働者を含む米国行きのビザ(査証)取得希望者の面接を無期限で停止すると発表した。米国は特に野菜や果実の収穫の担い手として外国人労働者が欠かせず、農家はこれらの収穫に壊滅的な影響が出ると警告している。
生鮮青果の業界団体である米国生鮮青果物協会の公共政策担当シニア・バイスプレジデント、ロバート・グンサー氏は「収穫作業の担い手がいない。このことは生産者だけではなく、最終的にはサプライチェーン(供給網)や消費者にも壊滅的な打撃を与えるだろう」と指摘する。
今後、食品価格高騰も
人手不足の懸念の高まりは、世界の農業セクターにおける外国人労働者への依存度の高さや、食料供給網の脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにする。現在、多くの主要な食料供給国では、トマトの収穫、食肉加工、家畜の飼養といった過酷な作業を外国人労働者に頼っているのが実情だ。
イタリアの農業生産者団体「コルディレッティ」によると、イタリアでは暖冬による影響で一部の農作物の生育が早まり、収穫の前倒しが状況を悪化させている。少なくとも年間に37万人の外国人労働者を受け入れているため、国境封鎖は「深刻な影響」をもたらす可能性があると指摘している。
ドイツ農業者連盟(DBV)のウド・ハンマリング事務次長によると、ドイツのアスパラガスとイチゴの農家は春の収穫時期における人手不足を懸念しているという。ドイツの農家は主にポーランドやルーマニアなどからの季節労働者に頼っており、これらの労働者は帰国した際に隔離措置の対象になる可能性があることを恐れている。