【「幸福の黄色いハンカチ」を教室に-吉村英夫】(上) シナリオ朗読で静まりかえった教室 | Hideoutのブログ

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 覚醒したら、こんな見方になるのかなと言うものに。

    倍賞千恵子の住んでた炭住は僕の従妹の住んでた裏山の長屋でした。


産経ニュース

https://www.sankei.com/entertainments/news/190831/ent1908310001-n1.html

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 映画『幸福の黄色いハンカチ』は山田洋次監督作品でもっとも知られているものの一つだ。何度見ても感動する。


 昭和52年公開。同じく山田作品の『男はつらいよ』ファンだった私は、「人間信頼」を歌い上げたこの映画にも魅せられた。『男はつらいよ』も人間讃歌だが、主人公の車寅次郎は、時にデタラメで既成秩序を平気で破る。それがひっかかっていた。なぜか。


 当時、私は夜間定時制の国語教員で、勉強嫌いの高校生と悪戦苦闘していた。授業で「夏目漱石は…」というと「俺には関係ない」と応え、「因数分解はわからないが、買い物の計算はバッチリできる。学校の勉強は無駄」とニコニコ主張する。


 「授業をやめて、ナイターのできる運動場でソフトボールしようぜ」「ダメだ。甘えるな」。そんな言い争いを繰り返した。めっぽう好人物だが授業にはならない。


 『幸福の黄色いハンカチ』を見て感動した私は、映画会社に「シナリオを購入して国語授業で使いたい」と手紙を書いた。「贈呈する」と30冊が送られてきて、はじめてのシナリオ学習となった。


 「映画のシナリオを読む。高倉健さんが主演の映画。海援隊の武田鉄矢も出ている」


 恐る恐る勉強嫌い、活字無関心の彼ら20人余りにシナリオを配布した。「シナリオって何?」という声を無視して私は朗読を始めた。5分もたたないうちに教室は静まりかえった。勉強嫌いの彼らがシナリオの活字を追っている。


 勇作(高倉)と欽也(武田)、朱美(桃井かおり)の3人の自動車旅が始まり、旅館に泊まることになる。朱美を狙っている欽也が近くの薬屋に駆け込む。「コンドーム下さい、千円の」。


 突然、生徒たちが一斉に足踏みを始めた。ドンドンドン。「わーい、欽也のエッチ」。古い木造校舎だからよく響く。教室の戸が開いて隣で授業をしていた同僚が「何事だ!?」。だがその時すでに生徒たちは、シーンとして私の朗読に集中していた。


 授業終了ベルが鳴ったのは、シナリオの半分に達したところだった。警察の検問で免許証の提示を要求された勇作は「持ってません。4年前切れて」。「どういう事情だ」「刑務所に入っていました。罪名殺人、刑期6年3カ月、一昨日出所しました」。


 生徒の緊張感が伝わってくる。ため息がもれる。


 私「続きは明日の授業で読む」


 生徒「次の数学の授業をもらって最後まで読みたい」


 そんなやりとりがあって、シナリオを生徒からもぎとり職員室へ引きあげたのだった。


      ◇


 映画「幸福の黄色いハンカチ」あらすじ 失恋の傷を癒やそうと車で北海道を訪れた欣也(武田鉄矢)が朱美(桃井かおり)、勇作(高倉健)と出会い、互いのことをよく知らないまま道連れになる。


 勇作は殺人を犯して服役し、出所したばかりだった。服役中に妻の光枝(倍賞千恵子)に離婚届を渡していたが、出所前、待っていてくれるなら家の前に目印に黄色いハンカチを掲げてほしい、とはがきを出していた。


 話を聞いた欣也と朱美は勇作の背中を押し、光枝がいるはずの夕張市を目指す。


     ◇


 よしむら・ひでお 映画評論家。三重県の高校教諭を経て、三重大学非常勤講師、愛知淑徳大学文化創造学部教授などを歴任。著書に「山田洋次を観る」(リベルタ出版)、「ルポルタージュ 一行詩の学校」(学陽書房)など。津市出身。79歳。

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    田舎の花屋は葬儀屋を兼ねてました。従妹のところに母の葬儀を依頼したっけ。