中国相手に一歩も引かないフィリピンの実効支配 | Hideoutのブログ

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南沙諸島のパグアサ島の位置(Googleマップ) 


    アッチもコッチもじゃドゥテルテも手が回らないか⁉️


JBプレス

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55536

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 北村 淳




フィリピンが実効支配するパグアサ島


 アメリカが2隻の駆逐艦(「スプルーアンス」と「プレブル」)を南シナ海・南沙諸島に派遣し、ミスチーフ礁とセコンド・トーマス礁それぞれの沿岸から12海里内海域を通航させた。1月の西沙諸島での実施に続く、南シナ海での「公海航行自由原則維持のための作戦」(FONOP)の実施である。


 オバマ政権が躊躇しながらも海軍に実施を許可して以来、アメリカ太平洋艦隊は南シナ海で断続的にFONOPを行ってきた。


 FONOPの建前は特定の国を支援したり特定の国を恫喝するといった軍事作戦ではなく、国際海洋法秩序の遵守を呼びかけ、著しい違反に対しては「アメリカとしてはそれなりの対処をする可能性がある」という姿勢を示すための外交的作戦とされている。したがって、これまでのFONOPは、南沙諸島や西沙諸島を巡る領有権紛争当事国間での具体的な動きに即応しての軍艦派遣というわけではなかった。


 しかし、今回のFONOPは若干様相が異なっている。フィリピンと中国の間で島の領有権を巡って緊張が高まっている中で実施されたFONOPだからである。


 フィリピンが実効支配しているパグアサ島で、フィリピンによる水路掘削作業と埋め立て作業が開始された。それに対して、中国は海軍艦艇や海上民兵漁船を派遣して露骨に軍事的威嚇を強めている。そうした状況下で今回のFONOPは実施されたのだ。


フィリピンが実効支配しているパグアサ島

 フィリピンは南沙諸島の島嶼環礁のうち9つを実効支配している。その中でも最大のものがパグアサ島である(英語名は "Thitu Island"、中国では中業島、第2次世界大戦中は日本軍が占領し三角島と呼んでいた)。




南沙諸島の現況


 およそ92エーカー(0.37平方キロメートル)のパグアサ島には、100名以上の島民が居住しており、酪農や農耕に従事している。ある程度の数の島民が生活しているため、市役所、公民館、学校、浄水所、船着場などの民生施設が整っている。生活必需品は、毎月1回定期的に島を訪れる海軍艦船によって補給されている。


 島内には、民間施設とともにフィリピン軍の施設も設置されている。最大の施設はRancudo飛行場であり、1300メートルの滑走路を有する。フィリピン軍が設置したこの飛行場は、現在南沙諸島に各国(フィリピン1カ所、ベトナム1カ所、マレーシア1カ所、台湾1カ所、中国3カ所)が設置している滑走路のうちでも最も歴史が古く、1975年に開設された。この航空施設のおかげで、フィリピン軍は航空機による南沙諸島の警戒監視を容易に実施することができるのだ。


 航空施設のほかにもフィリピン海軍基地や駐留将兵のための兵舎、それに通信タワーなども設置されており、パグアサ島は、フィリピンが実効支配を続けている9つの島嶼環礁の警戒監視の前進拠点としての役割を果たしている。


水路建設の開始で実効支配の強化へ

 フィリピン軍は、かねてよりRancudo飛行場の修繕と、より大型の軍艦が直接海軍施設に接岸できるようにするための水路の建設を計画していた。


 現在、大型船で運搬されてきた補給物資は、パグアサ島を取り囲むサンゴ礁沖で小型ボートに載せ替えて島に送り込むという手順が取られている。その効率を上げるための水路掘削計画である。


 昨年(2018年)末から水路掘削作業が開始された状況が確認されていたが、このほど、水路掘削と並行して埋立地も誕生しつつある状況が明らかになってきた。かねてよりフィリピン当局者は、漁業施設や太陽光発電施設それに海洋研究施設などを建設するとの意向を表明していたため、この埋立地にはそのような施設が設置されるのかもしれない。


 このように、フィリピンは自らが実効支配を続けているパグアサ島の軍事施設と民間施設をさらに充実させる努力を強化し始めたのである。


キャベツ作戦でフィリピンを威嚇する中国

 このようなフィリピンの動きに対して、中国が軍事的牽制を開始した。パグアサ島から12海里(およそ22キロメートル)南西に位置するスービ礁(中国が人工島化して3000メートル級滑走路も設置されている)に数隻のミサイル・フリゲートを含む海軍艦艇や海警局巡視船とともに数十隻にものぼる漁船(なかには70メートル級の大型漁船もある)を展開させたのである。これらの漁船は第3の海軍(第1の海軍は中国人民解放軍海軍、第2の海軍は中国海警局)といわれている海上民兵が操船しているものと考えられている。


 12月下旬から1月下旬にかけて撮影された衛星写真データによると、最大で95隻もの中国艦船が確認されており、現在も40隻以上の漁船、軍艦、巡視船がこの海域に展開している状況のようである。


 それらの中国漁船はパグアサ島に近接した海域に集結し、それより外側の海域に軍艦や巡視船が遊弋(ゆうよく:海上を動き回って敵に備えること)するという、典型的な「キャベツ作戦」の様相を呈している(キャベツ作戦とは、漁船団を中心に海警船、軍艦などが重層的に覆うことで領海を奪う作戦)。


 もちろん、パグアサ島の実効支配を確保するためにフィリピン海軍も艦艇を派出しており、フィリピン海軍フリゲートが中国海軍フリゲートに対峙している状況も確認されている。


 このように中国がフィリピンに対して露骨な軍事的圧力をかけている状況下で、フィリピン側を支援するような形で、アメリカ太平洋艦隊の2隻の駆逐艦が南沙諸島でFONOPを実施したのだ。


南沙諸島の状況と対照的な日本の“実効支配”

 南沙諸島の領有権を巡る紛争においては、フィリピンだけでなくベトナムもマレーシアも台湾も中国も、それぞれが実効支配を主張している島嶼環礁に航空施設や港湾施設などの軍事拠点を設置したり、測候所や漁船避難所などの民間施設を維持することによって、目に見える形での実効支配を演出し、領有権を主張している。


 南沙諸島の状況と好対照なのが、尖閣諸島に対する日本の“実効支配”である。


 日本政府は、尖閣諸島に何らかの施設を設置したり、人員を配置したりすることを避け続けてきている。その代わりに、アメリカ政府の高官たちに「アメリカ政府は尖閣諸島を日本が実効支配しているとの認識を持っており、尖閣諸島も日米安保条約の対象となりうる地域であると認識している」と言わせることにより、胸を撫で下ろしているのが現状だ。しかし、そのように「アメリカの虎の威を」借りても、目に見える形での実効支配などにはなり得ないのが国際社会の現実であることを認識しなければならない。

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