宮崎正弘の国際ニュース・早読み <トランプの対中姿勢はアンバランスこのうえなし [宮崎正弘 | Hideoutのブログ

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 四月に古稀を迎える爺ののブログです。

 日本を取り戻したい……そんな事をエントリーしたい。

 覚醒したら、こんな見方になるのかなと言うものに。


 米国大統領と言っても絶大な権力を行使できなさそうなのが、解ってきました。トランプ個人は資本家であり経営者そのものです。事業に邁進するとき、している時は、善で有り、いざ不調な折は、冷徹な資本家に早変り。そんな脂質なのでしょう。

 それが今回の記事の中身かなぁ。


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成28年(2016)11月17日(木曜日)弐
         通算第5094号 
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 トランプの対中姿勢はアンバランスこのうえなし

   報復関税45%、為替操作国、しかし中国の対米投資は大歓迎

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 中国がアメリカ人の雇用を奪った、と選挙中にトランプは獅子吼した。

 だから中国を「為替操作国」と認定し、中国からの輸入品に45%の報復関税を掛ける。実際にピッツバーグの鉄鋼不況は中国のダンピング輸出の所為とされるが、その前から鉄工所設備の老朽化を放置し、イノベーションに後ろ向きだったからでもある。

 自らの経営努力を怠った負の部分を隠し、中国に転嫁するのは責任のすり替えである。これは日本に対しても同じことが言える。日本がアメリカ人の雇用を奪ってのではなく、自動車の対米工場進出により、アメリカ人雇用が増え、日本人が逆に職を奪われた。

 トランプはイスラム過激派の入国拒否とイスラム教徒を含むヒスパニックなどの不法移民を追い返すと吠え続けたが、いざ当選するや、大幅に軌道を変更し、「犯罪歴のあるイスラム教徒(200万から300万人と推定される)を強制送還する」と下方修正している。

すでに不法移民の多い都市部の弁護士事務所には相談に訪れる人が列をなしているという。筆者はNYマッハンタン南端のチャイナタウンと、ラガーディア空港に近いニュー・チャイナタウンで目撃したが、不法移民を合法化する弁護士事務所が繁盛していた。

 トランプは中国からの不法移民に関しては殆ど発言していないのも、訝しい。

 そして中国の対米投資は「大歓迎」だと言うのだから、トランプの対中政策にはまるで一貫性がない。

外交的な要素と経済的な要素、そして軍事的要素との整合性がない。つまり適切な助言者が周囲におらず、また中国に関して、トランプは驚くほど無知である。習近平との電話会談でも「中国は偉大な文明国」などと持ち上げた。

 この無知につけこむかのようにウォール街から次のような発言が聞かれ出した。

 モルガン・スタンレー・アジアの名誉会長ジャック・ワズワーツは「中国のマネーが米国に流入し、雇用を拡大することは喜ばしい」。

これは米中投資フォーラムの席上で述べられ、同会長はつづけて、「トランプのいう向う十年間の一兆ドルもの公共投資は、主に民間セクターであり、精密な民間投資データよりも、三倍の規模とみられる。すなわち米国民間企業の中国投資は統計より三倍多い。米国への中国からの投資は公式統計の四倍と見られる」(サウスチャイナモーニングポスト、11月16日)。


 ▼不動産投資の社債、理財商品、投資信託はトランプの手口でもある

 トランプは「不動産王」と言われただけに、中国マネーの米国での不動産投資に異様なほどに注目している。
中国の安邦保険など投機ファンドが、2012年以後、米国ファンドの不動産投資が急速に減退した環境下で、ウォルドルフアストリア・ホテルなど、つぎつぎと米国の不動産を買い占めていることに他のアメリカ人が脅威視しても、かれは熱烈歓迎だった。

 思い出すことがある。
 トランプは自己資金で立てたホテルや高級コンドミニアムは少なく、名前貸しによるロイヤリティ収入、相手側パートナーとの共同経営、あるいは「社債」による出資募集によった。

 なかでも悪名高いのがアトランティック・シティのタジマハール・トランプ・カジノだが、買収したあとの改修費に10億ドルを投じ、その資金を「社債」(つまりジャンク債)で集めた。結局、社債は債務不履行に陥り、投資家らは大損害を被った。

 この基本スキームは安愚楽牧場と同じで、詐欺と言えば詐欺だが、投資を信じてカネを投じることは博打とおなじであり、社債が債務不履行になって会社更生法を申請することは商法上、普遍的なことである。つまり合法であり、倫理上はともかくとして、法律的には詐欺ではない。

 トランプが建てたというフロリダの豪華ホテルやゴルフコースも資本金の集め方はおなじ手口で、破産したパートナーも数多く存在しており、幾つかは訴訟沙汰となった。

くわえて「トランプ・シャトル」の破産、「トランプ大学」の経営行き詰まりと裁判沙汰などがある。

前にも述べたがアゼルバイジャンのトランプタワーは90%工事が出来たところで中断している。


 この遣り方は、まるで中国の詐欺的商法と酷似していないか。

 中国は「理財商品」なる怪しげな投資信託を発行し、年率9%とか、14%とかの高利を謳って投資家からカネを集めた。懸念された通りに債務不履行が連続した。

 ネット上の個人対個人のカネの貸し借り(P2P)にしても、すでに中国では大型の詐欺事件が頻発している。


 ▼地方政府の「融資平台」と構造は似ている
 
地方政府は「融資平台」なる第三セクターの投資会社をつぎつぎと設立し、銀行に出資させ、派手な不動産開発を行った。

しかし工業団地には誘致企業が現れず、地方の空港は週一便とかで赤字転落、団地は住人がおらず、鬼城(ゴーストタウン)と化けた。其れも空前の規模、中国至る所に鬼城だらけ。

投資資金は当然のことながら回収できず、銀行は不良債権の山を築きあげ、なんと合計一万社の融資平台のうち、三社か、四社をのぞいて事実上の債務不履行となっている。

中国の地方政府幹部は融資平台という開発企業体が発行したボンドに債務保証をしておらず、窮地に陥って銀行に巨額の融資をしたのが四大国有銀行だった。

地方政府の危機に際して、中国政府は上海など十か二十ほどの地方政府に対して「地方債」の発行も許可した。ながらく、この方法は禁じ手だった。地方政府の債務は中国財務省の楼大臣が認めたごく控えめな数字でも、290兆円という。

 怪しげな企業の株式市場への上場も片っ端からみとめ、資本金や増資などで投資かから集めたカネの殆どが消えた。

 かくしてトランプは外交次元では中国に対して、たいそう強硬でありながら、カネの移動、不動産投資、理財商品というような錬金術においては中国を頼もしい投資家と思っている。

 トランプ自身が莫大な「借金王」でもあり、そのノウハウをいやというほど体現してきた「不動産王」であり、その体質がまるっきり中国共産党幹部等の裏の商売とにていることに筆者は大いなる懸念を抱いている。

 「ともに借金を増やそう」とするのが米国と中国のウィンウィン戦略であるとするなら、厳重な注意が必要であろう。
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 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
                                        
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(読者の声1)貴誌5091号(11月16日付け)で「トランプ七人衆」の詳細が分析され、興味津々ですが、また風向きが替わりクリス・クリステー氏らは引き継ぎチームから去ったとか。
 ともかく激動の流れのようですね。日本で言えば首相官邸で、組閣前のテント村って、雰囲気ですか? トランプタワーの前は。
  (JJセブン)


(宮崎正弘のコメント)ペンス次期副大統領が政権引き継ぎチームを統率し、トランプとも覚え書きを交わした由ですね。『USAトゥディ』に拠れば(電子版、16日)、国務長官に最有力はジョン・ボルトン(元国連大使)。

 財務長官に急浮上したのが選挙の資金を管理したスティーブ・ミューチン。
彼は「百日以内の税制改革をやりぬくのはエキサイティングな仕事だ」と張り切っているとか。

 またセッション上院議員は国防長官に有力で、マイク・ロジャーズ(ミシガン選出下院議員)はCIA長官を要請されたが断ったとか、報道が錯綜しています。

 共通しているのは、チームからロビィストを追い出したこと。またクリス・クリステーは、チームから去ったため、彼の同盟者等も同調して去った由。

 ほかに黒人の精神科医で予備選を戦い、緒線撤退時にトランプを支持したベン・カーソンは当然ながら閣僚入りを打診されたが、断ったとか。「断った」のはポーズで、厳重な箝口令がひかれている様子でもあります。

 就任式の演出やパーティの手配などは、トランプの個人資産を管理してきたトーマス・バラクが担うなど。

 まだしばらくは流動的でしょう。

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 宮崎氏が読者に答えてますが、トランプのスタッフが本決まりするまでは紆余曲折でしょう。


 誰がどのポストに就こうと「アメリカファースト」の実践でしょう。どんな形を見せるのかは人事が決まり、数カ月先なのかなあ。