「あのね、テギョンさん。」
ミニョがゆっくりと上体を起こしながら、テギョンの手をぎゅっと握った。
俯いているせいで、その表情ははっきりと見えない。
テギョンは何か良くないことを言われるような気がして、そわそわしながら次の言葉を待った。
「私、別に結婚しなくても大丈夫ですよ。」
瞳にはうっすら涙が浮かんでいる。
「…どういう意味だ?」
テギョンはその真意が分からず、ただミニョを見つめている。
「あ、あの、また言葉が足りなかったというか、その、あの…、何というか、そう!ジョニー・デップとヴァネッサ・パラディのように、フランス婚とでも言いましょうか…。」
「……その二人は別れたけどな…。」
「え!?そうなのですか??私がアフリカにいた時にはとてもラブラブだったのに…信じられない…!」
ミニョがかなり驚いた様子で、目をぱちぱちさせている。
「…で、何が言いたいんだ?俺のことは好きだけど、結婚はしたくない、そういうことか?」
テギョンは怒ってはいけない、怒ってはいけないと自分に言い聞かせてはいるが、今にも怒鳴り散らしてしまいそうになりながら、眉をぴくぴくさせている。
「え!?違いますよ!違います!!その…私は結婚したいと言いますか…、その自らテギョンさんにプロポーズしたくらいですし…それはその…結婚してもらえた方が安心なのですが…。」
ミニョが急にもじもじとし始めて、顔を赤くしている。
そんな様子のミニョに、テギョンは全くついて行けず、不安気に瞳を揺らせる。
「……意味が分からない。きちんと説明しろ。」
「あ、はい!あの…、ですから、今回のように私はテギョンさんに今後も迷惑を掛けてしまうような気がするのです。それに、アイドルであるテギョンさんが結婚したなんてことになれば、それは大問題で、しかもそれが…ヘイさんのような方であればプラスにもなるかもしれませんが、よりにもよって私のような者が…。そう考えた時に、別にフランス婚といいますか、事実婚、内縁の妻、そのような感じでも、テギョンさんの傍に居ることができれば、それだけで私は幸せなのです。だから…」
ミニョの言葉を遮って、テギョンがぎゅーーーーーーーっとこれでもかってくらいきつく抱きしめた。
「テテテギョンさん!?」
ミニョが潰されながら一生懸命名前を呼ぶが、テギョンは腕をゆるめる気配はない。
「も、もう死んでしまいます…」
とうとうミニョは息ができなくてたまらなくなった時、テギョンはふわっと解放すると、にっこりとあのミニョの大好きな小犬のような笑顔を浮かべて、こう言った。
「ミニョ。今から婚姻届出しに行くぞ。」
「え?」
「いいから!起き上がれるか?きつくないか?」
テギョンは心配そうにミニョを立ち上がらせると、その手にそっと口づけた。
まだあまり意味を理解していないミニョは、ただただ顔を赤くしているが、そんなのはお構いなしにテギョンはタクシーを呼び始める。
タクシーの中でもミニョは頭がショートしてしまったのか、ぽかーんと口を開けてテギョンを見つめ続けており、そんなミニョを見てはくすくす笑ったり、鼻歌を歌ったりと上機嫌なテギョン。
到着し、タクシーからテギョンが下りると、徐々にテギョンに周囲が気がつき始める。
それもそのはず、サングラスはおろか、全く変装もしていないテギョンが、おろおろする女性の手をしっかりと握って、あまりにも不似合いな場所で浮きまくっているのだから。
「ああああの、テギョンさん!皆さん気がついていますよ!何してるんですか?早く逃げないと!」
我に返ったのか、叫び声を上げるミニョ。
そんなミニョの行動すら楽しいようで、テギョンは意地悪い笑みを向けると、
「気がついて当然だ。この俺様だぞ?」
余裕な様子だ。
「ちょっと!いい加減にして下さいよ!それじゃなくても私が帰国してからパニックになっているのに、こんなことしてどうするんですか!!!」
「だからだよ!」
テギョンは公衆の面前でミニョをぎゅーっと抱きしめると、思いっきりちゅーーーっとキスをした。
ぽややんとしてしまうミニョ。
周囲からは悲鳴にも似た声や、野次があがるが、そんなことは全く意にも介さないといったテギョン。
「最初からこうすればよかったんだ。」
そう晴れやかな顔でミニョに言うと、固まるミニョをぐいっと持ち上げてお姫様抱っこをすると、そのまま窓口まで一直線だ。
そして、婚姻届の自分の欄に記入すると、すいっとミニョの前へ紙を置いた。
「書いて。」
「でも…。」
「書け。」
「しかし…。」
「書け!今すぐだ!」
「はいー!!!」
ミナム時代が蘇ったのか、慌てて書き始めるミニョ。
その横で満足そうにうんうんと頷いているテギョン。
それから強引にミニョの手ごとその婚姻届を握りしめると、そのまま窓口へ提出した。
「もうこれでお前は俺の奥さんだからな。」
テギョンは放心状態のミニョの頬に、ちゅっと軽くキスをした。
これは夢?
ミニョは、ついさっきまで自分は生涯テギョンの傍に居ることさえできれば、それで満足だとそう伝えたばかりだというのに、なんと本当に本当の意味で結婚してもらえただなんて。
幻の中に自分がふわふわ浮いているような感覚に陥っていた。
目に映るのは、満面の笑みで自分を覗き込むテギョンと、その後ろには信じられないくらいの人人人。夜だというのに!
それから、入口から射しこむ街頭の光。
院長様ー!!
私ジェンマは、結婚してしまったようですーーーーー!!!!!
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読んで下さってありがとうございます
急に本編を書きたくなって!
しかも突然結婚してしまいましたぁ
色々凝った結婚シーン考えていたのですが、なんかこういうのの方がより嬉しい気がして
ミニョになりたいです