すっかり酔っぱらい、管を巻くスタッフ3人。
「そもそもですね、私になんてそんな崇高な信念なんてなかったんですよー。」
女性Aが半泣きになりながらシヌにしなだれかかる。
心の中では物凄い嫌な気分のシヌであるが、愛しのミニョの為。顔には優しげな笑みを貼りつかせている。
「そうなの?」
「そうですよ!だってアフリカですよ!チョコレートもないしケーキもない!クーラーだってないんですよ。それに…。」
「それに?」
「それに…ちょっと良い男はみんなミニョのことが好きなんですよ!面白くないったらなかったですよ!」
「………」
ぐっと拳を握るシヌ。
「それで?」
「それで…ついついいじめちゃう気持ち分からなくもなかったですよ!正直ね!」
「あなたは何もしていないの?」
「してませんよ!面白くはないけど、でもミニョってなんていうか憎めないでしょう?ボランティアにも一生懸命でしたしね。でも…」
「でも?」
「…かばったりはしなかったですね。今はそれを反省してるとこなんですよー!シヌさん分かるでしょう?」
涙を浮かべてシヌを見上げる女性Aの目に嘘はないと判断したシヌは、思いきって核心をつく質問をした。
「では…反省しているのであれば、あなたの知ってることを教えて欲しいんだけど。いいかな?」
「もう何でも聞いて下さいー!!!」
シヌの手をがっちりと握り号泣する女性A。
「シヌさん…、僕からも話すことがあります。」
大人しく飲んでいた男性スタッフが、きりりとした顔で近づいてきた。
シヌは穏やかな笑顔を浮かべ、自分の隣の椅子をひいた。
「ずっとさっきから疑問に思っていたんです。何故あなたたちがこんな反省会に参加しているのか。」
黙って次の言葉を待つシヌ。女性Aは突っ伏してまだ泣いている。
「あなたを見ていて分かりました。」
確かに…辺りを見回してみると、もう1人の女性Bに遊ばれているジェルミ、それを止めるミナム。面白くなさそうに飲んでいるヘイ。その横で飲んだくれているマ室長。
シヌはため息をこぼした。
「ミニョちゃんに何かあったんですね?しかもチソン先生でしょう?」
男性はシヌに熱のこもった視線を向けてきた。
こいつもまたミニョのことを…。
シヌは悟られないように二度目のため息をこぼした。
「どうしてそう思うの?」
「実は…。俺見たんです。チソン先生の裏の顔を。」
「裏の顔?」
「…はい。普段は物凄い温厚でイケメンで素敵で…でも、ある時、ミニョちゃんに意地悪をしている同郷の女性スタッフがいたんですが、そいつがチソン先生の前で真っ青な顔で土下座していたんです。俺あまりに驚いちゃって、その場から逃げてしまったんですが、次の日そいつミニョちゃんに謝ってて…。まぁでもそれは別に悪い奴を懲らしめてるだけって言えばそれまでだし。それに…」
「それに?」
「…先生の携帯の待受けがミニョちゃんで…それを偶然見てしまって、そしたら先生が一言、『誰にも言うなよ』って…。俺怖くなっちゃって、それにミニョちゃんはずっと先生と一緒に居たから、付き合ってんだろうなって思ってたし、ただの照れ隠しかなって思うことにしたんです。」
「…付き合ってないから。」
「え?」
「ミニョとチソン付き合ってないから!」
少し声を荒げてしまうシヌ。
「は、はい!すみません!」
ぺこぺこ頭を下げる男性。
「いや、ごめん…。」
つい熱くなってしまった自分に対して苦笑いしてしまうシヌ。
「でもさ、それならそんなに疑問に思うこともないんじゃないの?」
「それもそうなんですが…。何ていうか…とにかくミニョちゃんに近寄る奴をことごとく排除していたような…。上手く言えないんですが…。」
「そうなのか?」
「はい…なんか男性スタッフ結構消えてたような気がするんです。」
「……。」
「で、俺もミニョちゃんのこと大好きでしたから、でも先生のあんな怖い顔見せられてるでしょう?だからできるだけ隠れて好きだったって言うか…。」
顔を赤らめて髪をかきあげる男性にシヌはたまらなくイライラしてしまう。
「ミニョは…良い子だから…。」
「はい!それはもう!俺、本当は1年だけのつもりだったんでが、ミニョちゃんが後半年延ばすって言うから、便乗しちゃって…あはは!」
「……もう諦めたんだよな?」
シヌがじろりと男性スタッフをにらむと、何度も首を縦にふりながら、ごく小さな声で、
「チソン先生と同じ目だし…。」
と、つぶやいたのだった。
これでやっぱりチソンはこちらに帰ってきてからおかしくなったんじゃなくって、アフリカの時からミニョに執着していたことが分かったな。
ここでそのチソンに脅されたであろうミニョをいじめていた女性にコンタクトを取ることも可能になったが、もしかしたら、もうそこまでしなくてもチソンは何かに気がついてくれているかもしれない。
そう思いとどまると、シヌはおもむろにスマホを取り出し、その男性スタッフに、
「連絡先教えておいて。」
と、有無を言わせぬ迫力で交換した。
これで何かあった時の切り札くらいにはなるはずだ。
相変わらず遊ばれているジェルミと、それを止めるのに疲れたミナム、有力な情報を聞き出せていないからなのかミナムを取られていたからか不機嫌丸出しのヘイ、とうとう酔いつぶれているマ室長と女性スタッフAを横目に、テギョンへ電話をかけ始めるシヌ。
「やっぱりあの無敵のシヌさん伝説本当だな…。」
と、その横で震えあがっている男性スタッフであった。
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読んで下さってありがとうございます
収穫があったような、ないような…。それでも何もしないよりは絶対にマシですよね!!
しかし…やはりシヌさんが一番怖くて頼もしいです