ジュンピョは優しかった。
私の我儘を怒りもしないで聞いてくれたのだから。出会った当初のジュンピョからは考えられない。
愛して止まなかったク・ジュンピョは確実に大人になっていた。
少し寂しい顔をしていたのだろうか、ジュンピョが私の頬をそっとなでた。
「じゃあ私帰るね!」
努めて元気に振る舞ったつもりなのに、どうしてかまた涙が頬を伝った。
「お前は本当に分からねー。泣くほど帰りたくないんだったらずっとここに居たらいいだろうが。」
「ち、違うよ!違う!ちょっと色々考えてただけ。」
「ふーん。」
意味ありげにジュンピョがにやりと笑うと、なにやら電話をし始めた。
「俺だ。うんうん、そう、そうか…ありがとう。」
「どうしたの?」
「うん…お父様が、俺の今日の会議全部代わってくれるらしい。」
「えっ。」
「遊びに行くぞ!」
「ク・ジュンピョー!私は帰るってば!忙しいあんたにそこまで迷惑かけられないよ!」
「アメリカまで来てそのまま帰るつもりか?」
「うん…実はそのつもりだった。それにいつ会えるか分からないから、ここの外に野宿するつもりだったの…。ははは…。」
「お前は馬鹿か。」
「へ?」
「馬鹿かと言っているんだ!こんな治安の悪い街で本当に女が野宿するつもりだったのか!」
「そうだけど…。でも大丈夫に決まってるじゃない!誰も私みたいな貧乏人襲わないよ。」
「俺だったら…俺だったら襲う。だから安心なんかするな。もっと用心しろ!いいな!」
「う、うん…。」
急に真顔で変なことを言うから、顔が熱くなってしまう。
「今日は家に泊まれ。姉ちゃんも会いたがってる。ババアもな。」
「……え??」
驚きで口を閉じることができない。あの人が私に会いたい?
「俺が屋台のおでんが好きってあのババアに教えてくれたんだってな。」
ジュンピョが恥ずかしそうにうつむいた。
「許してやってくれなんて言わない。俺だって許せてないんだから。でも、少し会ってやってくれないか?」
どうしよう。正直に言えば会いたくはない。
私にしたことはどうでもいい。けれど私の周りの大切な人までも傷付けた人だ。
それに…私はもうジュンピョと結婚することはないのだから。
考え込んでしまった私を見て、ジュンピョが深く息を吐いた。
「ごめん。なかったことにして。いつか…いつかでいいから。」
「…うん、分かった。いつか必ず。」
「ありがとう。」
そう言うとジュンピョは深く頭を下げた。そして、顔を上げた時にはもう楽しそうな顔になっていて、
「じゃあ、今日の最終の飛行機まで俺に付き合え!いいな!」
と言うなり、私の手をぐっとにぎって、ビルの外へと飛び出したのだった。
「ちょっとどこに行くのよ!誰もあんたと遊ぶだなんて言ってないでしょう!」
「うるせー女だなー!いいから俺様についてこい!」
「もー!!」
それからジュンピョお勧めのタイムズ・スクエアにある高級ステーキハウスに連れて行かれ、お店の人も引くほど大量のお肉を二人でわいわい言いながら平らげた。
それから庶民の私の為に、今日中に行ける範囲でベタなアメリカ観光名所巡りをしてくれた。自由の女神に始まって、スピルバーグも住んでいるというトランプ・タワー、リンカーン・センターの大きな噴水、セント・パトリック大聖堂に感動した。
そして最後の締めくくりは映画鑑賞だった。まだ日本で公開されていない映画に、英語のできない私の為だけに韓国語字幕を瞬時につけてくれたのだ!もちろん映画館も貸し切り!
私はあまりに嬉しくて、思わずジュンピョに抱きついていた。
「ありがとう!ジュンピョ!この映画早く見たいなって思ってたの!本当にありがとう!!」
「ふ、ふん。俺様と居たらこんなこと毎日だってやってやれるのに。」
ジュンピョが赤い顔をしてそっぽを向いていた。
興奮し過ぎたことを反省して、すぐにジュンピョから飛びのくと、ジュンピョを置いて一人で映画館へと駆け込んだのだった。
俺は何しに来たんだか。
ジフはジャンディが満面の笑みでジュンピョに抱きつくところを向いのガードレールに腰掛けてぼんやりと眺めていた。
いつも通り普通に仲が良い二人。
それをアメリカまでわざわざ見届けに来た自分にため息をこぼした。
今夜は泊まるのかな。一緒にずっといるのかな。
胸がざわざわする。
ジフは車を断って、自分の家の別荘へのそのそと足を引きずるように歩き始めた。
少しジャンディから離れた方がいいのかもしれない。そんな風に思いながら。
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読んで下さってありがとうございます
妄想が止まらず、ついついたくさん書いてしまいましたぁ…
お暇な時に読んで下さいね。全部読んでたら疲れてしまいますから
驚かせてすみません…