もし、私に魔法がつかえたなら、テギョンさんの心の闇に潜むものを完全に取り除いてあげたい。
モ・ファランさんとのことで涙するテギョンさんを見てしまってから、そんなことを想うようになった。
でもそうしたら、今私の目に映るテギョンさんではない別の人格を持ったテギョンさんが存在してしまうことになるのだろうか。
ミニョは、ソファに座って難しい顔をして本を読むテギョンを横目でちらちらと見ながら、自分の考えに胸がちくりと痛んだ。
もし魔法で、幸せいっぱいに育ったテギョンさんが誕生してしまったら、アイドルの道を選んでいないかもしれない。ということは、私はテギョンさんに出会えていなかったはずだ。
それは嫌だな…。
魔法をかける時に、アイドルになっているテギョンさんが幸せな過去を持って生まれてきたということにしたらいいのかな。
そんな都合の良い魔法の種類があるのかな…。
ただの妄想なのに、段々と不安になってしまうミナム。
しかも、心の闇を取り除くということは、一体どんなことなのだろう?
例えば、モ・ファランさんが普通の母親としての愛情をたっぷりと注ぐような魔法をかけるべきなのか、全く関係のない完璧なご両親から生まれてくる魔法がいいのか。
冷静に考えてみたら、自分にも両親がいない。だから、どうしたら幸せで安心した生活を送れるのか、あまりよく分からない。
あっ、でも大切にしてくれたお兄ちゃんがいる。テギョンさんにも兄弟がいてくれたら少しは違うのかもしれない。
気がつけば、テギョンのことをじっと見つめていたことにハっとしたミナムは、さっと赤い顔をうつむかせて、ごくりとオレンジジュースを一口飲んだ。
もう桜も散ってしまったというのに、あまりにも寒い室内に、ぶるっと体を震わせると、二階へ羽織るものでも取りに行こうかと立ち上がると、肩にふわりと温かいものがかけられた。
びくりと視線を上へ向けると、嫌そうな顔をしたテギョンが、自分の着ていたカーディガンをかけてくえれていた。
「同じ部屋で寝ているんだ。風邪をひかれたら俺が困る。」
「あああありがとうございます…。」
本を読んでいたはずのテギョンが、自分が寒さに震えたのを見ていてくれたのかと思うと、じんわりと涙がにじんでくる程に嬉しかった。
テギョンさんはいつも優しい。
もしこの優しさが、たくさんたくさん傷ついたからこそのものなのなら、やはり今のままのテギョンさんでいてくれなければ嫌だ。きっと世界中の人に愛されるべき人なのだから。そう強く思う。
けれど、それではテギョンさん自身は生きていくことが辛いままになってしまう。
このままで、嫌な記憶だけ消してあげればいいのかな?
でもそしたら、モ・ファランさんのことを全て忘れてしまうことになるのかもしれない。
どんどん思考の深みにはまっているミナムの眉間には、深いしわが刻まれていく。
「おい!そんなに俺のカーディガンが嫌なら返せ!!」
「えっ?」
「そんな顔をするなら返せ!」
せっかくかけてくれたカーディガンを引っ手繰られそうになって、ミナムは慌てて引っ張った。
「ち、違います!ちょっと考え事をしていただけで、とっても嬉しかったんです!」
すると、テギョンの動きが急に止まったので、ミナムは引っ張られるように倒れそうになり、テギョンがぐいっと自分の胸に抱き込んだ。
ミナムはテギョンの腕の中で、心臓が飛び出そうになりながら、自分の魔法のつかい方を間違えていたことに気がついた。
やっぱり…。
私がテギョンさんを幸せにしてあげたい。それが恋人や家族としてでなくても構わない。ただの通行人でもいい。ただテギョンさんの力になれるのであれば。
「テギョンさんはテギョンさんのままでいて下さいね。」
どきどきする胸を押さえながら、ミナムは真っ赤な顔でテギョンを見つめた。
テギョンは急に変なことを言うミナムに怪訝そうな顔をしながらも、口角が少しだけ上がっていることに自分でも気がついていた。
「俺様が俺様でなければ、悲しむ奴がたくさんいるからな。」
その通りだな…。
また少し胸が痛んだミナムであったが、最後に完璧な魔法を思いついていた。
テギョンさんがテギョンさんのままで幸せに生きていけますように。![]()
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読んで下さってありがとうございます
やっとお仕事のピークが過ぎ、少しだけまともな生活が送れるようになりそうです。
私は魔法がつかえるのなら、もう二度と人間に生まれてこないようにしたいです。
次は、かわいがられて飼われている猫になりたいなぁ。
今夜のお話は、私の大好きな JangRingさんのブログ で、最高に素敵な動画 を拝見しまして、その中の星のジャージをモチーフにお話を書かせて頂きました

とにかく一度見てみて下さい
グンちゃんへの愛が溢れていて、とっても面白くて大笑いしてしまうのに、最後には涙してしまうんです
最近、ジフ先輩に現を抜かしている私ですが、動画を拝見して、やはりテギョンが好き=グンちゃんがどうしても気になってしまうことに、今更ながら気づいたのでしたぁ
JangRingさん本当にありがとうございます
内容はとっても単純で何の捻りもないので、申し訳なくてたまらないのですが…
私の大好きなやきもき期間の二人を精一杯書かせて頂きました!!
どうかほんのちょっとでも楽しんでもらえますように
───────
迷った…完全に迷子になっている…。
周りを見渡しても、知らない人間ばかりで、店も全部同じに見える。道路にいたってはその違いが全く分からない…。
今日はPVの撮影で珍しくメンバー全員で街中に来ており、気持ちの良いお天気だからと、終わってから皆で歩いて事務所へ帰ることになった。
そこまでは良かったのだが、ミナムやジェルミが目につくお店や食べ物にいちいち立ち止まるものだから、なかなか先に進まず、無駄に時間ばかりが過ぎることにイライラを募らせたテギョンが、道も分からないくせにスタスタと先に歩いてしまった結果なのだ。
くそっ!
ここは一体どこなんだ!事務所はどっちだ!!
しかも俺は、こんなにも派手な青色の星のジャージを着ているのに、どうしてみんな俺様を見失ってしまうんだ!!
ミナムはどうした!いつも俺にくっついているというのに、こんな時に限って!!
そういえば、PV撮影なのだから、手持ちの荷物はない。となると、携帯どころかお財布もない。
誰かに聞こうにも、こんなにもテギョン丸出しで、一体どうやって聞けばいいのか…。もし道なんて聞いてしまったら、翌日のスポーツ新聞の見出しは、『A.N.JELLのリーダー ファン・テギョン 迷子になる』に決定だ…。
あぁ…どうすれば…。
落ち着け俺、落ち着け俺…。
いついかなる時もファンに見られているのだからと、いつものクールな表情を崩さず、まだPVの続きを撮影しているかのように、胸を張って颯爽と歩くテギョン。
しかし内心はかなり焦っており右往左往している状態だ。
とにかく見当もつかない道を闇雲に歩いていたのでは、事務所からどんどん遠ざかってしまう恐れがあると判断したテギョンは、目についた縁石に座って待つことにした。
早く早く!スタッフはどうしたんだ!マ室長は!!あいつは本当に使えないな!!!
などと、実際は自分が勝手に先を急いだからからこんな事態に陥っているというのに、他人を責め倒しているテギョンである。
徐々にファンがテギョンの周りを囲み始める。
心の中はイライラとハラハラで、何度も何度も舌打ちを繰り返しているのだが、営業用にすました表情を作り、長い足を組み直したりしてみる。
「まだ撮影中だから近づいたらだめよ!」
「でもカメラないわよ!」
「そうなの?じゃあ休憩かしら??」
ファンクラブ会長サ・ユリとその仲間達のひそひそ声が聞こえてきて、テギョンの眉がぴくぴくっと動いた。
あぁ…ファンクラブにとうとう見つかってしまった。
道をスマートにさり気なく聞く方法はないだろうか。ないな…。俺が声をかけてしまったら、瞬く間に人が増えてしまってどうしようもなくなってしまうはずだ。
少しでも知った人や、記憶にある建物がないかと、不審に思われない程度に辺りを見渡してみるが、ここは韓国なのか!?と疑う程にピンともこない。
テギョンは今にも頭を抱えてしまいそうになってしまい、それと同時に強烈な孤独を感じていた。
考えてみたら、厄介者のミナムが来てからというもの、毎日がジェットコースターのようで、以前ほど自分の心の闇と向き合わずに済んでいたことに気がつく。
疎ましくてたまらないのに、いつも傍にいないと落ち着かない。
それが何の感情なのか自分では分からないが、迷子になっているということよりも、今ここに一人で、しかも隣にミナムがいないことがたまらなく心細い。
さっきまでずっと一緒だったというのに、一体これはどういう感情なのだろうか。
そ、そうだ!俺様がいないとあの豚うさぎが泣いて心配しているかもしれない、それをこの優しい俺が心配してやっている、そういうことだろうな。そうに違いない。
めちゃくちゃではあるが、自分をどうにか落ち着かせる理由が見つかったテギョンは、ほっと一息ついたのだが、今度は何だか胸がキリキリと痛い。
でも…もしかしたら、あいつは俺がいなくなったことなど、気に留めてもいないかもしれない…。
更に痛みを増す胸をゆっくとさすりながら、遠くをぼんやりと眺めていると、これまたド派手なピンクの星のジャージを着たミナムが、息をきらしながら全速力で走っている姿が視界の端に映り込んだ。
あれは撮影なのか?それとも…。
テギョンは、俺はここにいる!と叫びたいのだが、もしただの撮影のワンシーンだったら…他の用で急いでいるだけかも…などと考えると、声を出すどころか立ち上がることもできない。
すると、切羽詰まったようなミナムの声が聞こえてきた。
「すみません!テギョンさんを見ませんでしたか?」
慌てて立ち上がると、深刻な表情のミナムがファンクラブの会員たちに囲まれている。
そして、会長が自分の方を指さすと、ぱっとこちらを向いたミナムは、先ほどまでの険しいものではなく、ほっと安心して今にも泣いてしまいそうな表情である。
テギョンは、俺はここにいると、手を軽く上げることさえ忘れ、ただミナムを見つめていた。
「テギョンさん!!」
近い距離にいるにも関わらず、力いっぱい走りよってくるミナム。
テギョンは体中がこそばゆくて、どうしていいのか分からずに、顔をそむけてしまう。
「テギョンさん?」
ミナムが心配そうに自分を見上げてくるのをチラリと横目で見ると、額に薄ら汗までかいているではないか。
テギョンは苦し紛れに、
「…遅いではないか。」
などと、口走ってしまい、少しだけ後悔しているのにミナムを睨んでしまう。
そしたらミナムが、にっこりと笑って、誰にも聞こえないように耳元でこう囁いた。
「だって、テギョンさんが迷子になってるだなんて、他の人には言えないでしょう?」
「なっ!!」
つい怒鳴りそうになってしまうが、まだ息も整わないミナムを見ていると、何だか泣いてしまいそうになっている自分がいる。
そっとミナムの頭に手をやり、その髪をぐしゃぐしゃっとなでて、
「コ・ミナム!俺様から離れるお前が悪い!」
と、怒ったふりをした。
「す、すみません…。」
よく分からないけれど、私が悪いのかな!?って顔のミナムが、たまらなくおかしくて、笑いながら憎まれ口を叩いた。
「俺様はこんなにも派手なジャージを着ているというのに、お前は分からなかったのか?」
「衣装なんて見てませんもん!それに…テギョンさんだったら、どんな洋服を着ていてもすぐに分かりますよ!」
「でもさっきファンクラブの子に聞いていたではないか。」
「だって…凄い人で…見て下さいよ!」
ミナムに言われて視線を上げてみると、ゲリラライブでもするのか!?というような信じられない人の波が自分とミナムを囲んでいた。
「あっ!シヌさんとジェルミだ!!マ室長もいますよ!」
遠くから、黒の星のジャージを着たシヌと、黄色の星のジャージのジェルミ、そしていつものパンパンのスーツのマ室長が、その人波をかき分けて自分たちの方へ近づいてくるのが見える。
テギョンは本格的に泣いてしまいそうになって、ミナムの手を無意識にぎゅっとにぎっていた。
驚いて自分を見上げてきたミナムは、これでもかってくらい真っ赤な顔で口をぱくぱくさせていて、それがあまりにも面白い顔で、思わず笑顔になってしまう。
ありがとう、誰よりも先に俺をみつけてくれて。
今までの自分では考えられないくらいの素直な気持ち。
言葉にはできなかったが、つないだ手から伝わるように、もう一度強くにぎりしめた。
もう俺は孤独ではないのかもしれない。そんなことも思いながら。
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どうだったでしょうか??
JangRingさんの動画を拝見した私の感動が少しでも伝わりますように
真っ暗なはずなのに、海辺に座りこむジュンピョがはっきりとジャンディの目に映る。
例えようのない悲しみで、胸が軋む音が聞こえるようだ。
「ジャンディ、今日は止めておこうか。俺が明日にでも言うから。」
本心は、ジフ先輩の優しい提案にのってしまいたい。
けれど、それではいけない。そんなことをしてしまったら、私は一生自分を許せなくなってしまう。
不安を隠しきれないといった表情のジフ先輩に、私は思いっきり飛びついて、あえて元気にこう言った。
「はい分かりました。なんて私が言うと思う?」
返事をする代わりに、ジフはジャンディの体を潰れるほど強く抱きしめた。
ジャンディは苦しくて息もできなかったが、負けないくらいジフに回した腕に力を込めた。
「ジフ先輩だけが大好き。」
「俺はジャンディだけだから。」
どちらともなく体を離すと、お互い強く見つめ合った。そしてぎゅっと指を絡めて手を繋いで、ゆっくりとジュンピョに向かって歩き出す。
こんな暗闇の中なのに、ジャンディが遠くから歩いてくるのがはっきりと見える。
俺の心はこんなにもあいつで埋め尽くされているというのに諦めなきゃならないのか?
まるで死刑宣告だな。
「ジュンピョ。」「ク・ジュンピョ。」
泣いてしまいそうなのをぐっとこらえうつむいていたジュンピョの頭の上から、愛おしい人と親友の声が同時に降ってきた。
本当は何も聞かずにこのまま逃げだしてしまい。けれどジュンピョは覚悟を決めて視線を上げた。
「ジャンディ…良かったな。」
どうにか絞り出した声は掠れ、唇が震えているのが自分でも分かる。
イジョンが、そんなジュンピョの肩をそっと抱きよせる。これ以上無理して何も言うことはないとたしなめるように。
「ありがとう。本当にありがとう…。」
ジャンディは泣いてしまいそうな自分が嫌で、そんな顔を見せたくなくて、深く深く頭を下げ続けた。
ジフは何も言わず、ただジュンピョをじっと感謝の眼差しで見つめている。それに応えるようにジュンピョは拳をジフの前に突き出し、ジフが拳を合わせた。
「ジャンディと結婚したい。祝ってくれる?」
ジフがはっきりとその想いを口にすると、ジュンピョが慌てて立ち上がった。
「それはダメだ!絶対にダメだ!!」
「ク・ジュンピョー。」
頭を下げ続けていたジャンディが、泣きながら情けない声を出すと、ジフとイジョンは思わず声を上げて笑ってしまった。
「せこいじゃないか!ジフは俺様が居ない間ずっとジャンディの近くにいて諦めもしてなかったってのに、俺様だけすぐにはい分かりましたって納得するわけねーぞ!!」
「なんなのよー、さっきは良かったなって言ってくれたのにー。」
「良かったなって言っただけで、諦めたなんて一言も言ってねー!!」
「諦めてくれないの?」
ジフが笑顔を引っ込めて真剣な表情でジュンピョに詰めよる。
「諦めねー!俺様のプライベートが許さない!!」
あぁ…プライドね…。
ジフとイジョンは心の中で突っ込んでいたが、ジャンディは、あのガンサンと二人で住んでいたアパートでの朝のやり取りを思い出して、自然に笑顔になっていた。
そうそう、あの時はジフ先輩が倒れて私が朝まで看病してたから、隣のジュンピョが気にしてくれてたんだよね。
「ク・ジュンピョ!今度は逆になってるよ。プ・ラ・イ・ド!プライドだから!」
「う、うるせー!どっちだっていいんだよ!」
「なにしにNYまで行ってたんだか。」
くすくす笑うジャンディに見惚れてしまうジュンピョ。
そんな二人に、ジフは激しく動揺していた。
「とととととにかくだ!どうせすぐには結婚はできないんだし、俺様は俺様で最後の最後まで諦めねーからな!ジフ、嫌とは言わせねー!」
「嫌だ。」
「ジフ先輩…。」
不安そうに自分を見上げるジャンディの目をまともに見ることができず、ジフは小さな声で呟いた。
「決めるのはジャンディだけど…俺はもう絶対にジャンディを離したりしない。」
「俺だって離したくねー!!」
「だから嫌だって言ってる。」
「俺だって嫌だ!」
「俺の方がもっと嫌。」
二人がいがみ合う側で、おろおろしているジャンディを見て、たまりかねたイジョンが盛大にため息をついた。
「…いい加減にしろよ!ジュンピョもジフも少し落ち着け。」
にらみ合ったままで黙りこむジフとジュンピョ。
一瞬の静寂の後、ジャンディが大きく声を張り上げた。
「ジュンピョ!私はジフ先輩が好きだから!だから本当にごめん!!」
途端に顔を赤らめて驚いた表情のジフ。
ジュンピョは深い悲しみに瞳を揺らせると、燃えるような眼差しをジフに向けた。
「それでも、俺はお前がジャンディを悲しませたりしたら、いつでも飛んできてさらっていくからな!覚悟しておけ!」
「分かった。」
そんな二人に、ジャンディとイジョンがほぼ同時に飛びついて、四人で抱き合う形になる。
すると、どこか遠くからウビンの声が聞こえてきた。
「おーーい!ジャンディがまだ見つからないんだーー!!!」
四人は一斉に顔を見あわせると、その場に倒れ込んでお腹を抱えて笑ったのだった。![]()
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読んで下さってありがとうございます
お仕事が大変過ぎて死んでしまいそうでしたが、何とか10連勤をこなしましたぁ!!
明日はヘッドスパへ行ってゆっくりしようと思います