もうじき大学に到着しそうなのに、一向に起きる気配のないジャンディに少しだけ不安になる。
俺が隣にいるから熟睡できているのか、どこででもそうなのか…。
「ジャンディ、起きて。」
「ううーん。」
半分しか開いていない目をこすりながら、ジャンディが少し驚いた顔をする。
「…あれ?私寝ちゃったんですね…。すみません。」
「これからは…俺が傍にいない時には寝ないでよ。」
「えっ?」
不思議そうにまだ眠たい目を俺に向けてくる。
「心配だから。」
そしたら急にうつむくから、俺がその顔を上げさせると、今までにないくらい真っ赤な顔をしていて、何だか泣きそうにも見える。
「あああありがとうございます。」
ありがとう?意味が分からないけど…。
「ちゃんと分かってる?」
「ははい!!もう絶対に気をつけます!」
ジフ先輩は心臓に悪い!
こんなどうしようもない私が、ただバスで寝ただけなのに、心配だなんて言ってくれるから、どうしていいのか分からなくなる。
しかもあんなキレイな顔で…。
ジャンディはちゃんと分かってるのかなぁ。
俺は少し不服そうな顔をジャンディに向けたら、何だか胸を押さえて浅い呼吸を繰り返している。
「大丈夫?」
「えっ!?あ!ははははい!凄く元気です!」
その一生懸命な顔がなんだか面白くて、思わず笑ってしまったら、ジャンディが不思議そうに首をかしげている。
どれだけ見ていても飽きない。いつまででも見ていたい。いや、ずっと傍にいたい。片時も離れたくない。
ジャンディの肩をぐいっと抱きよせて、腕時計を見てみると、まだ夜の7時で、この分だと家にジャンディを呼んでも迷惑にはならないだろう。
「ジャンディ、今から家に来てくれる?」
ジャンディも自分の腕時計を見て、満面の笑みで何度も首を縦に振ってくれた。
「はい!もちろんです!バスを降りたら家に電話しますね。あっ…先輩すみません電話貸してもらえますか?」
「忘れたの?もうここ最近はずっと持ってないよね。」
「はい…実は…電話、ジュンピョから持たせてもらっているものなので、一年前からずっと私からは使っていないんです。受けるだけで…。ジュンピョには何度も送り返していたのですが、その度に送られてくるので…。」
「バスを降りたらすぐに携帯買いに行く!」
「そ、そんなの大丈夫です!バイトして何とかしますから!!先輩に迷惑かけれらません!」
「ジャンディ。」
少し怒った顔を作ってみる。
絶対に一度では好意を受けないのがジャンディだ。それが奥ゆかしいところでもあるが、かわいくないところでもある。
だって、俺はもう婚約者なんだろう?違うの??
「俺はジャンディの何?」
「……かか彼氏です…。」
「違う。」
途端に悲しそうな顔をしてうつむくから、また違う方向に考えているのだとすぐに分かる。まだまだ俺の気持ちの一割も伝わっていないのだろう。
この俺の気持ち全部を見せることができたとしたら、ジャンディはびっくりして死んでしまうに違いない。あまりにも重すぎて。
少しだけ悲しい気分になって、俺はため息をついた。
「婚約者。」
ぼそっと赤い顔でそんなことを言う先輩に、目が釘付けになってしまう。
私は破裂しそうな心臓を何度も何度もさすって、
「はい、その通りです…。」
と、小さな声でつぶやいた。
「じゃあ、俺が携帯買ってもおかしくないでしょう?」
「はい…よろしくお願いします。」
深々と頭を下げると、先輩がにこっと笑ってよしよししてくれた。
こんなにも幸せでいいのかな。不安になってしまう。
今日の今日まで、先輩の近くに居られるだけで構わないって諦めながら生きてきたのに、なんだかやっぱり仮の世界の域から出られていないような気がしてしまう。
それから、携帯ショップで先輩とずっと手をつないだまま、色々見て回った。
「俺もジャンディとお揃いのにする。」
って、物凄いかわいい顔で言うから、緊張と嬉しさで何も言えなくなって、何度も何度もうなずいた。
ジャンディとお揃いの機種で、色違いのものを購入した。
俺が黒で、ジャンディが白。同じものにしたら操作とかも教えてあげやすいし、何より俺が嬉しいから。
「ジャンディ、明日ジュンピョの携帯持ってきてね。」
「先輩?」
「俺から送り返しておくから。」
少し拗ねたような口調になったかもしれないけど、ジャンディは頬を赤らめて、こくりとうなずいてくれたから、それだけで幸せな気分になった。
その携帯がジャンディの傍にある限り、ジュンピョの気持ちも傍にある気がするから、一刻も早く回収したいのだ。
時刻は、夜の8時を回っている。
あらかじめジャンディのご両親には電話で遅くなることを告げているから、安心して家に招待できる。
なんなら泊まってきても構わないとのことだし…ね。![]()
にほんブログ村
読んで下さってありがとうございます
今夜はパンを7つも食べてしまって、たまらなくお腹がいっぱいです。
大好きなパン屋さんのパンで、食べだしたら止まりませんでしたぁ…。でも満腹でとっても幸せです
「先輩!おじい様に会いたいなぁ。」
ジャンディならきっとそう言うと思っていた。
幸せで胸がぽかぽかと温かくなっていくのが分かって、俺は黙ってただ彼女をじっと見つめていた。
ジャンディが、そんな俺に、ハイって感じで手を出してきて、その手をつかむと、途端に目をそらせてくるから、きっと真っ赤な顔になっているのだろう。
俺は嬉しくて嬉しくてたまらなくて、ついちょっとした意地悪を言ってしまう。
「今、ボランティア中だけどいいの?」
「あっ!すっかり忘れてた!!先輩どうしよう!また怒られちゃう!」
今度はおろおろしてその場で足踏みをしている。顔もきっと青くなっているに違いない。
「大丈夫。俺がちゃんと言っておくから。」
つないだ手をぐっと引きよせて、ジャンディの頭をよしよしした。急にうつむいているから、今は恥ずかしそうな顔をしているのかな。
「でも…。」
もごもごと何か言っているジャンディだけど、もうこんなに真っ暗で、そろそろ帰る時間じゃないかなって思うんだけど。
俺が、ふふふって笑ったら、何??って顔で見上げてくるから、それがまたかわいくって仕方なくって、やっぱり抱きしめてしまうことになる。
「もーー!先輩!聞いてますか??」
「聞いてないよ。」
「ひ、ひどーーーい!!」
「だって、ほら。もう皆バスに乗り始めてるよ。」
はっとしたように俺の腕から離れたジャンディは、慌てた様子で俺の手を引いた。
「早くしないと置いていかれちゃう!!」
本当は俺を置いてなんて絶対に帰れないって分かっているんだけど、ジャンディから手をつないでくれたのが嬉しくって、そのまま引っ張られながらバスへと歩いた。
「すみませーん!遅れました!!」
ジャンディが大声で謝りながらバスに乗り込むと、一番前の席の知らない男が声を上げようとしたようだったけれど、ジャンディの手に俺の手がつながっていることが分かると、ぱっと視線をそらせて黙り込んだ。
きっと…彼女のことを気にしていたんだろうな。
考えただけでイライラして、俺は、俺と手をつないでいるジャンディの手を、その場にいる奴全員に見えるようにぐいっと持ち上げてた。
ジャンディは、すみませんすみませんって謝りながらすまなそうに腰を曲げて歩いているから、まさか俺がこんなことをしてるなんて気がついてもいない。
俺は、ジャンディと俺のつないだ手をずっと上に上げたまま、男一人一人をじろりと睨みながら、わざとゆっくりと歩いた。
「ちょっと先輩!早く歩かないとバスが出発できませんよ!」
ジャンディが眉間に皺をよせて小声でそんなことを言うから、俺はただただかわいいなぁって思わず笑顔になってしまう。
そして、行きと同じく一番後ろの席に無事到着すると、ジャンディがふーっと安堵のため息をついた。
「間一髪でしたねぇ!間に合って良かったー!!」
俺がくすりと笑うと、ジャンディが、もーって俺の腕を叩いてきた。
「先輩!たまには慌てたりした方がいいですよ!!」
「いつも慌ててるよ。」
「慌てたとこなんて見たことないですよ!嘘ばっかり!」
「本当だよ。」
「もー!じゃあどんなことで慌ててるんですか?」
「ジャンディが診療所に来なくなったとか、ジャンディがアメリカへ行ったとか、ジャンディが泣いてたりとか、色々いつも心配して慌ててる。」
「先輩…。」
ジャンディの目から涙が次から次に溢れてきて、彼女はそれを男前に白衣の袖でぐいっと拭うから、俺はいつものようにポケットからハンカチを取り出して、優しく拭いてあげる。
そしたら彼女が顔を赤らめて、こんなことを言った。
「先輩との出会いは一番美しい出会いみたいですよ。」
意味は良く分からなかったけれど、彼女がとてもきれいな顔で微笑んでいたから、俺は何も言わないで、ただその美しい表情を一瞬でも見逃したくなくて、瞬きも忘れて見入っていた。
それから少し経つと、もうジャンディは寝息をたて始めていた。
バスの振動で振り子のようにゆらゆらしている彼女の頭を、そっと自分の肩に乗せると、幸せそうに口をむにゃむにゃさせている。
俺は飽きることなく、その寝顔を見つめていた。
もう誰に遠慮することなく、邪魔もされることなく、この腕に彼女を抱きしめることを認められたのだから。
そしてこれからは、俺以外は永遠に誰も見ることのできない彼女の寝顔。
ここまで考えて、またいつかの時のように、少し自分の気持ちが怖い気がした。
あまりに大きくなり過ぎたこの気持ちは彼女を傷つけてしまわないだろうか。
「……ジ…フ…せん…ぱ…い…。」
そんな俺の漠然とした不安な心を見透かしたように、彼女のかわいらしい唇から俺の名前がこぼれてきた。
俺は心臓が破れてしまいそうな程に高鳴って、思わず彼女の髪に口づけていた。
きっと彼女なら、どんな俺でも受け止めてくれる。
ふっと笑って窓の外を見ると、もう既に見慣れた街並みになっている。
ジャンディを連れて帰ったら、きっとおじい様は泣いて喜ぶだろう。
考えるだけで幸せな気持ちで体が宙に浮いてしまいそうになってくる。
もう一度ジャンディの髪に口づけをして、彼女の手をぎゅっとにぎった。もう二度と離さないから覚悟しておけよって思いながら。
ジャンディ、俺はジュンピョみたいにお人好しじゃないよ。

にほんブログ村
読んで下さってありがとうございます
ジフ先輩は、片思い期間があまりに辛かったので、すぐにでも幸せいっぱいにしてあげたいです
ジャンディならきっとそう言うと思っていた。
幸せで胸がぽかぽかと温かくなっていくのが分かって、俺は黙ってただ彼女をじっと見つめていた。
ジャンディが、そんな俺に、ハイって感じで手を出してきて、その手をつかむと、途端に目をそらせてくるから、きっと真っ赤な顔になっているのだろう。
俺は嬉しくて嬉しくてたまらなくて、ついちょっとした意地悪を言ってしまう。
「今、ボランティア中だけどいいの?」
「あっ!すっかり忘れてた!!先輩どうしよう!また怒られちゃう!」
今度はおろおろしてその場で足踏みをしている。顔もきっと青くなっているに違いない。
「大丈夫。俺がちゃんと言っておくから。」
つないだ手をぐっと引きよせて、ジャンディの頭をよしよしした。急にうつむいているから、今は恥ずかしそうな顔をしているのかな。
「でも…。」
もごもごと何か言っているジャンディだけど、もうこんなに真っ暗で、そろそろ帰る時間じゃないかなって思うんだけど。
俺が、ふふふって笑ったら、何??って顔で見上げてくるから、それがまたかわいくって仕方なくって、やっぱり抱きしめてしまうことになる。
「もーー!先輩!聞いてますか??」
「聞いてないよ。」
「ひ、ひどーーーい!!」
「だって、ほら。もう皆バスに乗り始めてるよ。」
はっとしたように俺の腕から離れたジャンディは、慌てた様子で俺の手を引いた。
「早くしないと置いていかれちゃう!!」
本当は俺を置いてなんて絶対に帰れないって分かっているんだけど、ジャンディから手をつないでくれたのが嬉しくって、そのまま引っ張られながらバスへと歩いた。
「すみませーん!遅れました!!」
ジャンディが大声で謝りながらバスに乗り込むと、一番前の席の知らない男が声を上げようとしたようだったけれど、ジャンディの手に俺の手がつながっていることが分かると、ぱっと視線をそらせて黙り込んだ。
きっと…彼女のことを気にしていたんだろうな。
考えただけでイライラして、俺は、俺と手をつないでいるジャンディの手を、その場にいる奴全員に見えるようにぐいっと持ち上げてた。
ジャンディは、すみませんすみませんって謝りながらすまなそうに腰を曲げて歩いているから、まさか俺がこんなことをしてるなんて気がついてもいない。
俺は、ジャンディと俺のつないだ手をずっと上に上げたまま、男一人一人をじろりと睨みながら、わざとゆっくりと歩いた。
「ちょっと先輩!早く歩かないとバスが出発できませんよ!」
ジャンディが眉間に皺をよせて小声でそんなことを言うから、俺はただただかわいいなぁって思わず笑顔になってしまう。
そして、行きと同じく一番後ろの席に無事到着すると、ジャンディがふーっと安堵のため息をついた。
「間一髪でしたねぇ!間に合って良かったー!!」
俺がくすりと笑うと、ジャンディが、もーって俺の腕を叩いてきた。
「先輩!たまには慌てたりした方がいいですよ!!」
「いつも慌ててるよ。」
「慌てたとこなんて見たことないですよ!嘘ばっかり!」
「本当だよ。」
「もー!じゃあどんなことで慌ててるんですか?」
「ジャンディが診療所に来なくなったとか、ジャンディがアメリカへ行ったとか、ジャンディが泣いてたりとか、色々いつも心配して慌ててる。」
「先輩…。」
ジャンディの目から涙が次から次に溢れてきて、彼女はそれを男前に白衣の袖でぐいっと拭うから、俺はいつものようにポケットからハンカチを取り出して、優しく拭いてあげる。
そしたら彼女が顔を赤らめて、こんなことを言った。
「先輩との出会いは一番美しい出会いみたいですよ。」
意味は良く分からなかったけれど、彼女がとてもきれいな顔で微笑んでいたから、俺は何も言わないで、ただその美しい表情を一瞬でも見逃したくなくて、瞬きも忘れて見入っていた。
それから少し経つと、もうジャンディは寝息をたて始めていた。
バスの振動で振り子のようにゆらゆらしている彼女の頭を、そっと自分の肩に乗せると、幸せそうに口をむにゃむにゃさせている。
俺は飽きることなく、その寝顔を見つめていた。
もう誰に遠慮することなく、邪魔もされることなく、この腕に彼女を抱きしめることを認められたのだから。
そしてこれからは、俺以外は永遠に誰も見ることのできない彼女の寝顔。
ここまで考えて、またいつかの時のように、少し自分の気持ちが怖い気がした。
あまりに大きくなり過ぎたこの気持ちは彼女を傷つけてしまわないだろうか。
「……ジ…フ…せん…ぱ…い…。」
そんな俺の漠然とした不安な心を見透かしたように、彼女のかわいらしい唇から俺の名前がこぼれてきた。
俺は心臓が破れてしまいそうな程に高鳴って、思わず彼女の髪に口づけていた。
きっと彼女なら、どんな俺でも受け止めてくれる。
ふっと笑って窓の外を見ると、もう既に見慣れた街並みになっている。
ジャンディを連れて帰ったら、きっとおじい様は泣いて喜ぶだろう。
考えるだけで幸せな気持ちで体が宙に浮いてしまいそうになってくる。
もう一度ジャンディの髪に口づけをして、彼女の手をぎゅっとにぎった。もう二度と離さないから覚悟しておけよって思いながら。
ジャンディ、俺はジュンピョみたいにお人好しじゃないよ。
にほんブログ村
読んで下さってありがとうございます
ジフ先輩は、片思い期間があまりに辛かったので、すぐにでも幸せいっぱいにしてあげたいです
「それじゃあ、俺はもう行くからな。」
ひとしきり笑い終えたジュンピョが、ヘリに乗ってNYへと慌ただしく戻って行った。
最後に何も言わず、ただジャンディを力強く抱きしめてから。
イジョンとウビンも、ジフに目配せをすると、さっさと帰り、真っ暗な海辺に、ジフとジャンディの二人っきりである。
ジャンディが、そっとジフを見上げると、心なしか悲しそうな顔をしているように見えて、ぎゅっと白衣の裾をにぎった。
「ジャンディ、後悔してるんじゃない。」
驚き過ぎて声が出なくて、茫然としてしまうジャンディ。
「今ならまだ間に合うよ。」
黙っていることを肯定と受け取ったのか、ジフが顔を背けながら、自分を掴んでいるジャンディの手を振り払った。
ジャンディは、ジフがどうしてこんなことを言いだすのか、全く分からなくて、その背の高い背中に思いっきり抱きついた。
「ジフ先輩が好きなんです!大好きなんです!どうしてそんなこと言うの!」
さっきまで、F4と自分とで笑いあっていたはずなのに、急に何があったというのだろうか。
ジャンディは震える腕に力を込めて、ジフの次の言葉をじっと待った。
永遠とも思えるような長い時間が経過し、ふーーーっと、大きなため息が聞こえてきて、思わず体に力が入ってしまうジャンディ。
一体何を言われるのだろう、嫌われてしまったのだろうか…。
「…ごめん…。」
「えっ…。」
「ごめん。やきもち。やきもちなんだ。」
ジフはジャンディの腕を優しく自分から離すと、ジャンディの方へ向き直り、ふんわりとその体を抱きしめた。
途端に安心して、それから嬉しくて恥ずかしくて、頬が熱くなってしまうジャンディ。
「ジャンディがジュンピョに笑いかけてた。」
「そんなこと…」
「さっき…、ジュンピョがジャンディを抱きしめた。」
「それは…」
「二人にしか分からないことを話してた。」
「何のことか…」
「何のことか分からない?」
「うん…。」
「プライドの話し。あれ。」
「あぁ…あれはね、前にボロアパートにガンサンと二人で住んでた時に、ジュンピョが何故か隣に住んでたでしょう?あの時もあいつが、プライドとプライベート間違えたの。でもそれだけだよ!!」
「ふーん。」
「それからね、別にジュンピョに笑いかけてなんかないよ!」
「ふーーん。」
「後ね、ジュンピョのは挨拶だから!帰る前の挨拶だよ!!」
「挨拶ねぇ。じゃあ他の人も挨拶だったらジャンディを抱きしめていいの?」
「も、もーーー!!!ジフ先輩!!!」
ジャンディはたまらずに、ぷーーーっと頬を膨らませてジフを睨みつけた。
「嘘。本当にごめん。でもね」
「でもなに!」
「まだあんまり実感がなくって、だから…動揺した。」
「動揺?」
「うん…。ジュンピョとジャンディには俺の知らない時間があるんだなって思ったら…。」
「そんな!そんなこと言ったら、先輩だって、あの図書館の…あっ…。」
ジャンディは慌てて自分の口を塞いだが、ジフにはハッキリと聞こえていたようで、
「図書館?何??」
恐ろしく整った顔を近づけてきた。
「あああの、何でもなくって、そそそう、それにソヒョンさんのことだって!!」
苦し紛れに出た言葉は、これまた自分の心の奥に潜んでいた大きな大きな不安で、ジャンディは唇を噛んでうつむいた。
あぁぁ…
ばか!なんてばかな私!!
よりにもよってソヒョンさんのことまで口走ってしまうなんて…
「ソヒョンとはあれから一回も連絡をとっていないよ。」
温かい掌が自分の頬に触れると同時に、たまらなく甘い声が鼓膜に直接響いてきて、びっくりして顔を上げてしまう。
ジフは腰を曲げて目線を合わせると、真ん丸に見開いたままのジャンディをじっと見つめて、もう一度繰り返した。
「ソヒョンとは連絡をとってない。」
「そ、そそれはどうしてなの?」
「何でかなぁ…フランスにいる時から、韓国の芝生のことが気になって気になって仕方なかったから。」
いたずらっこのような眩しい笑顔を見せるジフ。
「ジフ先輩…。」
頬に触れたままの指先に、ジャンディの涙を感じる。
ぽたぽたと徐々にその涙が量を増し、嗚咽が聞こえてきた。
ジフはぐっとジャンディを抱きしめると、心の底から喜びが溢れてくる。
自分がジュンピョに抱いていた想いを、ジャンディはソヒョンに感じていたのだから。
「俺にはもうずっとジャンディだけだから。」
「…はい…。」
「俺が好きになったのは、ジャンディただ一人だけだからね。」
「でも…。」
「ソヒョンには感じたことのない感情をいくつもいくつもジャンディだけに抱いていた。もうずっとね。」
「本当に?」
「本当に。」
「…ありがとう…。」
ジフは、くすりと笑い、
「どうしたしまして。」
ジャンディの頭をよしよしとなでた。
「あ、それと、さっきの図書館ってなに?」
忘れてなかったかーって、ジャンディが自分の腕の中で脱力したのをしっかりと受け止めて、ジフは少しだけ緊張していた。
特に何もやましいことなどはないけれど、ここまでジャンディが何も言わずに抱えていたことを考えると、少し身構えてしまうのも自然なことだろう。
「あのね…ジフ先輩、大学でお付き合いしてた人がいたんでしょう?」
「いない。」
「でも…」
「いるわけない。ジャンディだって知ってるはずだよ。」
「……そう思っていたのですが…。」
「図書館にそんなこと言う人がいたの。」
「…あのね、壁にもたれて眠ってる先輩の髪にね………キスしてる髪の長いキレイな人…見たよ。」
「誰それ。」
「…本当に知らない?」
「知るわけない。いつのこと?」
「ちょうど一年前くらいの…」
「ジャンディがジュンピョに会いに行く前?」
黙ってこくりと頷くジャンディを見て、今まで聞けなかった謎が解けた気がした。
「今度会ったら教えて。俺が確かめるから。」
「えっ?」
「だって知らない人が俺にキスしてたんでしょう?気持ち悪いよ。」
「でも…」
「でも何?」
「凄くね、凄くきれいな人でね…先輩とお似合いだったから…。」
「俺はジャンディとだけ似合いたい。」
「それは…無理かな…」
「どういう意味?」
「だって…私じゃあ先輩と不釣り合いだから。」
「そんなのジャンディが決めることじゃない!」
声を荒げるジフに驚くジャンディ。
「俺が決めることだから。」
「先輩が決めるの?」
「そう、俺だけが決めるの。」
最後は少し拗ねたようなジフの口調に、思わず笑みがこぼれてしまうジャンディ。
きっと先輩は嘘をついていない。
そう確信すると、ずっと胸の奥に引っかかり続けていたものがきれいに溶けていくような感覚を味わっていた。
「先輩を信じてるね。」
「そんな言われ方したら、俺が嘘ついてるみたいなんだけど。」
「違うよー!本当に信じてる!」
「本当かなぁ。」
「うん、本当。先輩ありがとう。」
「何がありがとう?」
「私を安心させてくれて。」
「当然のことだよ。将来の奥さんを大切にすることなんて。」
ぼっと顔中を真っ赤にさせるジャンディを見て、ジフは体中がこそばゆくてどうしようもなくなって、めいっぱいジャンディを抱きしめなおした。
「せ、先輩…ぐ、ぐるしいーー。」
「だーめ、もう少しこのままで。」
苦しいだろうに、自分の腕の中で大人しくしているジャンディに愛おしさが押しよせてたまらなくなる。
少し経ってから、ゆっくりとその腕を緩めると、ふーっと大きく息をついたジャンディが、大きな瞳をくるりと動かして、にっこりと笑った。
「ジフ先輩がやきもち焼いてくれるなんて思わなかった。」
「そんなの…毎日妬いてたよ。」
驚いて見上げたジフ先輩の顔が赤くなっていて、私はにやけてしまうのを止めることができなかった。
もうずっとずっと同じ想いを抱えていたんだね。私たち。

にほんブログ村
読んで下さってありがとうございます
まだまだ寒くって、いつになったら暖かくなるのでしょうね。もう5月になりそうなのに…
でも、モコモコ靴下が履けなくなるのは寂しいから、ちょうど良いのかもしれませんね
ひとしきり笑い終えたジュンピョが、ヘリに乗ってNYへと慌ただしく戻って行った。
最後に何も言わず、ただジャンディを力強く抱きしめてから。
イジョンとウビンも、ジフに目配せをすると、さっさと帰り、真っ暗な海辺に、ジフとジャンディの二人っきりである。
ジャンディが、そっとジフを見上げると、心なしか悲しそうな顔をしているように見えて、ぎゅっと白衣の裾をにぎった。
「ジャンディ、後悔してるんじゃない。」
驚き過ぎて声が出なくて、茫然としてしまうジャンディ。
「今ならまだ間に合うよ。」
黙っていることを肯定と受け取ったのか、ジフが顔を背けながら、自分を掴んでいるジャンディの手を振り払った。
ジャンディは、ジフがどうしてこんなことを言いだすのか、全く分からなくて、その背の高い背中に思いっきり抱きついた。
「ジフ先輩が好きなんです!大好きなんです!どうしてそんなこと言うの!」
さっきまで、F4と自分とで笑いあっていたはずなのに、急に何があったというのだろうか。
ジャンディは震える腕に力を込めて、ジフの次の言葉をじっと待った。
永遠とも思えるような長い時間が経過し、ふーーーっと、大きなため息が聞こえてきて、思わず体に力が入ってしまうジャンディ。
一体何を言われるのだろう、嫌われてしまったのだろうか…。
「…ごめん…。」
「えっ…。」
「ごめん。やきもち。やきもちなんだ。」
ジフはジャンディの腕を優しく自分から離すと、ジャンディの方へ向き直り、ふんわりとその体を抱きしめた。
途端に安心して、それから嬉しくて恥ずかしくて、頬が熱くなってしまうジャンディ。
「ジャンディがジュンピョに笑いかけてた。」
「そんなこと…」
「さっき…、ジュンピョがジャンディを抱きしめた。」
「それは…」
「二人にしか分からないことを話してた。」
「何のことか…」
「何のことか分からない?」
「うん…。」
「プライドの話し。あれ。」
「あぁ…あれはね、前にボロアパートにガンサンと二人で住んでた時に、ジュンピョが何故か隣に住んでたでしょう?あの時もあいつが、プライドとプライベート間違えたの。でもそれだけだよ!!」
「ふーん。」
「それからね、別にジュンピョに笑いかけてなんかないよ!」
「ふーーん。」
「後ね、ジュンピョのは挨拶だから!帰る前の挨拶だよ!!」
「挨拶ねぇ。じゃあ他の人も挨拶だったらジャンディを抱きしめていいの?」
「も、もーーー!!!ジフ先輩!!!」
ジャンディはたまらずに、ぷーーーっと頬を膨らませてジフを睨みつけた。
「嘘。本当にごめん。でもね」
「でもなに!」
「まだあんまり実感がなくって、だから…動揺した。」
「動揺?」
「うん…。ジュンピョとジャンディには俺の知らない時間があるんだなって思ったら…。」
「そんな!そんなこと言ったら、先輩だって、あの図書館の…あっ…。」
ジャンディは慌てて自分の口を塞いだが、ジフにはハッキリと聞こえていたようで、
「図書館?何??」
恐ろしく整った顔を近づけてきた。
「あああの、何でもなくって、そそそう、それにソヒョンさんのことだって!!」
苦し紛れに出た言葉は、これまた自分の心の奥に潜んでいた大きな大きな不安で、ジャンディは唇を噛んでうつむいた。
あぁぁ…
ばか!なんてばかな私!!
よりにもよってソヒョンさんのことまで口走ってしまうなんて…
「ソヒョンとはあれから一回も連絡をとっていないよ。」
温かい掌が自分の頬に触れると同時に、たまらなく甘い声が鼓膜に直接響いてきて、びっくりして顔を上げてしまう。
ジフは腰を曲げて目線を合わせると、真ん丸に見開いたままのジャンディをじっと見つめて、もう一度繰り返した。
「ソヒョンとは連絡をとってない。」
「そ、そそれはどうしてなの?」
「何でかなぁ…フランスにいる時から、韓国の芝生のことが気になって気になって仕方なかったから。」
いたずらっこのような眩しい笑顔を見せるジフ。
「ジフ先輩…。」
頬に触れたままの指先に、ジャンディの涙を感じる。
ぽたぽたと徐々にその涙が量を増し、嗚咽が聞こえてきた。
ジフはぐっとジャンディを抱きしめると、心の底から喜びが溢れてくる。
自分がジュンピョに抱いていた想いを、ジャンディはソヒョンに感じていたのだから。
「俺にはもうずっとジャンディだけだから。」
「…はい…。」
「俺が好きになったのは、ジャンディただ一人だけだからね。」
「でも…。」
「ソヒョンには感じたことのない感情をいくつもいくつもジャンディだけに抱いていた。もうずっとね。」
「本当に?」
「本当に。」
「…ありがとう…。」
ジフは、くすりと笑い、
「どうしたしまして。」
ジャンディの頭をよしよしとなでた。
「あ、それと、さっきの図書館ってなに?」
忘れてなかったかーって、ジャンディが自分の腕の中で脱力したのをしっかりと受け止めて、ジフは少しだけ緊張していた。
特に何もやましいことなどはないけれど、ここまでジャンディが何も言わずに抱えていたことを考えると、少し身構えてしまうのも自然なことだろう。
「あのね…ジフ先輩、大学でお付き合いしてた人がいたんでしょう?」
「いない。」
「でも…」
「いるわけない。ジャンディだって知ってるはずだよ。」
「……そう思っていたのですが…。」
「図書館にそんなこと言う人がいたの。」
「…あのね、壁にもたれて眠ってる先輩の髪にね………キスしてる髪の長いキレイな人…見たよ。」
「誰それ。」
「…本当に知らない?」
「知るわけない。いつのこと?」
「ちょうど一年前くらいの…」
「ジャンディがジュンピョに会いに行く前?」
黙ってこくりと頷くジャンディを見て、今まで聞けなかった謎が解けた気がした。
「今度会ったら教えて。俺が確かめるから。」
「えっ?」
「だって知らない人が俺にキスしてたんでしょう?気持ち悪いよ。」
「でも…」
「でも何?」
「凄くね、凄くきれいな人でね…先輩とお似合いだったから…。」
「俺はジャンディとだけ似合いたい。」
「それは…無理かな…」
「どういう意味?」
「だって…私じゃあ先輩と不釣り合いだから。」
「そんなのジャンディが決めることじゃない!」
声を荒げるジフに驚くジャンディ。
「俺が決めることだから。」
「先輩が決めるの?」
「そう、俺だけが決めるの。」
最後は少し拗ねたようなジフの口調に、思わず笑みがこぼれてしまうジャンディ。
きっと先輩は嘘をついていない。
そう確信すると、ずっと胸の奥に引っかかり続けていたものがきれいに溶けていくような感覚を味わっていた。
「先輩を信じてるね。」
「そんな言われ方したら、俺が嘘ついてるみたいなんだけど。」
「違うよー!本当に信じてる!」
「本当かなぁ。」
「うん、本当。先輩ありがとう。」
「何がありがとう?」
「私を安心させてくれて。」
「当然のことだよ。将来の奥さんを大切にすることなんて。」
ぼっと顔中を真っ赤にさせるジャンディを見て、ジフは体中がこそばゆくてどうしようもなくなって、めいっぱいジャンディを抱きしめなおした。
「せ、先輩…ぐ、ぐるしいーー。」
「だーめ、もう少しこのままで。」
苦しいだろうに、自分の腕の中で大人しくしているジャンディに愛おしさが押しよせてたまらなくなる。
少し経ってから、ゆっくりとその腕を緩めると、ふーっと大きく息をついたジャンディが、大きな瞳をくるりと動かして、にっこりと笑った。
「ジフ先輩がやきもち焼いてくれるなんて思わなかった。」
「そんなの…毎日妬いてたよ。」
驚いて見上げたジフ先輩の顔が赤くなっていて、私はにやけてしまうのを止めることができなかった。
もうずっとずっと同じ想いを抱えていたんだね。私たち。
にほんブログ村
読んで下さってありがとうございます
まだまだ寒くって、いつになったら暖かくなるのでしょうね。もう5月になりそうなのに…
でも、モコモコ靴下が履けなくなるのは寂しいから、ちょうど良いのかもしれませんね