「それで…何から訊けばいいのか…。」
先ほどまでの怒鳴り声から一変して、もごもごとするおじい様と、真っ赤な顔でうつむいたままのジャンディに、ジフは笑いがこらえきれない。
「おじい様、ジャンディと正式に婚約させて頂きます。」
「婚約!?」
「はい。結婚を前提にお付き合いすることをジャンディが認めてくれました。」
「ジフ!それは本当か?」
「はい。」
「本当なのか?ジャンディ!」
急に名前を呼ばれて驚いて立ち上がったジャンディは、
「はい!よろしくお願い致します!!」
と、勢いよく頭を下げたら、そのまま机の角に頭をぶつけてしまい、その反動で後ろに倒れてしまった。
慌てたジフは、ジャンディを抱き起こすと、ソファに横たわらせ、キッチンへ氷嚢を取りに行った。
ジャンディはこんな大切な時に何をやっているのかと悲しくなってきて、少し涙ぐんでいると、おじい様がそっとジャンディの側に跪いた。
「大丈夫か?この薄情娘が。」
「おじい様ー。」
「なんじゃ、この一年わしを放っておいたのは誰だ?」
「…すみませんでした。」
「ふんっ、まったく不器用な奴め。」
「えっ?」
「まぁいい、それで、あんな無愛想な男でいいのか?」
氷嚢を手に急いで戻ってきたジフは、ソファで会話する二人の声が耳に入り、そっと扉の影に身を隠した。
おじい様は、ジャンディが俺にはもったいないって言っていたものな…。ジャンディは何て言うのだろう。
不安から肩に力が入ってしまうジフ。
「ジフ先輩のことですか?」
「あれ以外に誰がいる。」
「いや…先輩のこと無愛想だなんて思ったことがなかったから。」
「そうなのか?」
「はい!分かりにくいですけど、無愛想ではないと思います。」
「そうか…。本当にジフでいいんだな?」
「当然じゃないですか!ジフ先輩以外考えられません!!むしろ…。」
「なんじゃ?」
「私なんかでいいのか、そっちの方が心配で…。おじい様だって本当は反対でしょう?」
「何を言い出すかと思えば。わしはお前が高校生の時から、娘にするならジャンディしかおらんと思っておったぞ。」
「嬉しい!!」
ジャンディが弾かれたように、おじい様に思いっきり抱きついた。
「こら、苦しいではないか。」
「だってー!本当に嬉しくって!!」
涙声で笑いながら、まだおじい様にくっついているジャンディ。
ジフは、そんな二人に、扉の影でそっと涙を流した。
数年前までは、この広い屋敷にいつも一人だった。
それが今では、自分の何よりも大切な人たちが涙を流して抱き合っている。昔の自分からは想像もできない光景だ。
そして、その全てを形成してくれたのが、この宇宙の中で一番愛おしいジャンディだ。
ジフは、ぐいっと涙を拭うと、抱き合う二人を丸ごと、その長い腕で抱きしめた。
ジャンディは、ジフとおじい様に抱きしめられて、息もできない程の幸福を味わっていた。
おじい様もまた、ジフの幸せがこのジャンディと共にしかないことを改めて実感していた。
ありがとう。ジフを選んでくれて…。本当にありがとう。
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ジフ先輩が幸せそうで本当に嬉しいです