昼寝をしないと 夜も落ち/\眠れない -30ページ目

昼寝をしないと 夜も落ち/\眠れない

おじょぉ の詭弁に満ちた日々

できるだけ出費を減らそうと宿泊先をカプセルホテルに決め、さらにネット予約で割引プランとなる24時間受付対応の宿へ到着したのは、0時を30分ほど回った頃だった。

昭和風情を漂わす外観と、それを裏切らない内装。
男性サウナと女性用岩盤浴の営業もしているので、宿泊しないで帰る客などもいるようだ。

宿泊料金の安さと近隣にある観光名所への交通事情などから、海外からの旅行者の滞在が多いと聞いていたが、時期的にも観光シーズンではいからなのか、はたまたこの時間帯であるからなのか、サウナあがりとおぼしき年配の男性客たちが、玄関横にあるテレビ部屋でくつろいでいる。

テレビから流れるスポーツニュースをBGMにチェックインを済ませ、
受付で手渡されたバスタオルと浴衣、女性専用フロアキーを抱えて早速エレベーターに乗り込んだ。

3人くらい乗れば窮屈になりそうな狭いエレベーター内には、各フロア案内と観光スポットの紹介を載せた近隣地図が貼られていて、どれにも手書きの英語表記が付け足されている。
やはり、海外からのお客様が多いのだなと納得している間に、女性カプセルフロアに到着した。

小さなソファとローテーブルの置かれた狭い空間の向こう側が就寝スペース。
隔てているのは、会社などで見かける簡単な作りの薄い壁で、申し訳程度につけられているようなドアに鍵を差し込んで、音が大きく響かない用にゆっくりと開いた。


まずはカプセルに付けられたナンバーで自室を確認。
カーテンの閉まる隣室には、手すりにリクルートスーツが掛かっており、
ロッカーに入れることのできない大型スーツケースが壁際に寄せてある。

私も同様に、傍に立ち並ぶ極細なロッカー内に納めることは諦めて、鞄ごと下段へ潜り込み、
カーテンを閉めて室内灯をつけた。

荷物の侵入を拒否する空っぽのロッカーたちは、その存在理由が不明なまま、
低い使用頻度で壊れることもなく冷たい金属のドアを閉ざし、
もはや鼠色の壁紙なのかと思う程に同化してゆくのだろうなと行く末を案じた。

古めかしいクリーム色のカプセル内は、ラジオや目覚まし機能の付いたデジタル時計、
室内灯やそのた諸々を一手に担ってる銀色の操作ボックスが備え付けられ、
乗ったこともない宇宙船内部を想起させ、壁に設置された円形の鏡が小窓のようで、
増々、この先乗ることのない船内を体感しているような錯覚に陥る。

室内灯を心地よい照度に調節し、ごろりと横になれば、すぐさま眠りへと誘われそうになる。

日付が変わってしまっているので、昨日の疲れということになるが、
明日は朝早く出るのだからと、寝てしまう前に浴場へ行って疲れを取ることにしょう。

そして、ついでに真夜中の岩盤浴と洒落込もう。

物音に気を配りながら、自室カプセルからのそのそと穴熊のように這い出した時、ドアノブをガチャガチャ何度も引き押ししてから鍵を何度も開けたり閉めたりした後、シャイニングのジャック・ニコルソンみたいな勢いでバタンとドアを開けて入ってきた年配の女性とすれ違いで、
外へ出る。

大荷物の彼女は、荷物の侵入を拒否するロッカー前で、あらゆる袋をガサガサ開け始めたところで、そっとドアを閉めてエレベーターへ向かった。
エレベーターを待つ間も、ドタバタガサガサと音が響いている。

リクルートスーツを掛けている隣室の彼女は就職活動なのだろうか、
万全の体勢で望むために眠っているはずである。

なんとも、まことにご愁傷様です。