新年を向かえると普段以上に縁起を担ぎたくなる。
昨年の事柄を全てリセットして、心機一転出来るのだと信じて疑わないし、
きっとそうなのだと自己暗示を掛けるのに最適な時期だとも言える。
申年の今年は12年に1度の「サルアカ」と呼ばれる縁起を担ぎやすい年のようで、
下着など身につけるものを赤くしているだけで運気が上がるとのこと。
その運気の効能としては健康面の向上、下の世話に掛からないとも言われており
地方によって諸説ありなのだが、どこでも同じく口を揃えて申年の赤い下着だという。
子が親へ贈るとよいとされており、申年のさるの日に渡すと最も縁起がよいらしい。
下着全般という触れ込みもあるが、ここは赤パンツでいこう。
運気と一緒に乗せられるがまま、親孝行でもするかと方々の店を巡る。
いざ、店を巡ってみると案外赤パンツは売っていない。
流行っていると思ていたが、そこまでの需要がないのかもしれないし、
大量生産後で余らせてしまうことを懸念しての策なのかもしれない。
これは老舗百貨店へ行くしかないぞと、パンツを求めて遠路旅立った。
大手の下着メーカーでは、待ってましたとばなりにサルアカ祭りで商品を陳列しているであろうという予想に反し、売り場もこじんまりとしていて出ばなをくじかれる。
ただ赤いというだけでオシャレなデザインのものはなく、サイズの幅も狭い。
店員に伺うも手頃なサイズは完売しており、Sサイズにしか思えないほどのMサイズや、
SSサイズだろうとおぼしきSサイズのみが残っていた。
ダイエット効果やヒップアップを狙ってなのか、腰回りの締め付けもきつそうだ。
これでは親へのプレゼントとして求めているものとは遠く及ばず。
若者が自分のご褒美的なニュアンスで購入するにはもってこいなのだが、
長年苦労をしてきた親の身体には、ゆったりしたものが好ましく、
大は小を兼ねる! とぶつぶつ唱えながら下着売り場巡りを続けた。
数店舗廻っても結果は同じで、ゆったりサイズを販売しているメーカーでも全て売り切れ。
12年に1度のビックイベントを達成できないままでいいのかと粉骨砕身の最終手段、
ネットショッピングを決行すようと決め込んで、検索をかけてみる。
誰しも考えることは同じなようで、ネット市場でも悉くゆったりサイズが売り切れている。
いや、待て。
いち早くこの風習を推してた赤パンツで有名な巣鴨のお店があったではないか。
最後の頼みの綱をたぐり寄せ、お取り寄せできる事を突き止めた。
ある、あるじゃないか!
ゆったりしててお腹が冷えないジャストサイズがわんさか出てくる。
方々歩き回らずとも、室内でポチッとするだけで購入できる。
なんて便利な世の中、赤いパンツに後光がさしている。
よっ、流石巣鴨の有名店!
ポンポンと太鼓を叩いて、一通りの賛辞を画面に向けて一礼してから購入ボタンを押した。
1月3日、申の日。
この日手渡すため、可愛らしくラッピングし直した赤パンツを取りに夕食後2階へ上がる。
正月気分真っただ中のリビングで、団欒している家族の声が聞こえる。
赤パンツを履いて、健康で増々長生きで幸あれと祈りを込めつつ、
素敵に包装されたパンツを抱えて、階段を駆け下りた。
