気が付くと、エッセイを25も書いていました。

ネタも尽きましたので、スーパー洋子を再投稿いたします。

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<これまでのあらすじ>

このお話しは、

性別違和の麻美祐介を洋子が救うお話しです。

4部からなり、洋子は、祐介を家庭のいじめ、

教師のいじめ、生徒のいじめから救います。

これが、1部2部。

初めいじめっ子だったライオンヘアーの朱美、

リーゼントの透を暴走族から救うお話が、第3部です。

第4部は、「VSヤクザ」です。

VS暴走族」<第3部>前・後編2話から始めます。

私の好きなアクション場面です。

読んでくださるとうれしいです。

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「スーパー洋子VS暴走族」第3部・前編

 

 

洋子、祐介、透、朱実は、暴走族のたまり場である

飛行場跡の土地に向かった。

近づくにつれて、透や朱実の体は、すくんでいった。

祐介は、洋子を信じ切っていて、

さほど恐いとは思っていなかった。

 

たまり場に近づくと、低い唸りをあげた改造バイクが、

30から40くらいは、見えた。

走らず、改造バイクの低いエンジン音をふかしていた。

族の連中は、ほとんど黒の皮ジャンを着ていて、

ヘアスタイルは様々。

モヒカン、パンク、色とりどり。

体に鎖、顔に奇妙なメイクをしている連中も多く、

後ろにスケ番風の女を乗せている者もいた。

なかなかの迫力だ。

 

朱実たちは、遠くから見ていたが、

セーラー服の洋子は、どんどん中に入って行った。

やがて、一人に、

「あんた達の、頭(かしら)は、どこよ。」と聞いた。

「なんだ、お前。」とその族男は言った。

「うーん、ちょっとね。

  この族への殴り込みってとこかな。」と、洋子。

「ふん、そうかよ。」その族男は、洋子を鼻で笑って、

なにやら他の連中に声をかけた。

すると爆音がうなりを上げ、皆のバイクが動き出した。

そして、洋子を中心に、円を作り始める。

その円をだんだん小さくして行く。

その度に、円は、2重3重になっていく。

 

頭が、この中に入るのかいないのか。

洋子は、だんだんじれったくなってきた。

頭以外やっつけたくはなかったが、面倒だ。

 

「いいわよ。じゃあ、こっちから行くよ。」

洋子は、そういうと、バイクの方向とは逆に、

1つ目のバイク男に体を真横にして飛び蹴りをした。

わあっと男はバイクごと、外に倒れた。

洋子は、そのまま、ぐるっと1周、

内側のバイクを蹴り倒した。

バイクの輪が花が開くように倒れて行く。

2番目の輪、3番目の輪と、

ドミノ倒しだ。

族達は、バイクの下敷きになり、

抜け出ることもできず、パニック状態になった。

 

その外で、超然としていたバイクがある。

そのバイクが洋子のところへやってきた。

「あんた、頭かい。」洋子が聞いた。

「ああ。」頭が言った。

頭は、175cmくらいで、なかなかハンサム。

黒い革のつなぎを着ていて、いちばんましな格好をしている。

「あんたに会わせろって言ったのにさ、

 こいつら勝手にあたしを巻いたんだよ。」

「用はなんだ。」と頭は言った。

「あんたと勝負しにきた。あたしが勝ったら、

 族を解散して欲しい。」

「ほう。俺に勝つ気か。」

「そのつもりよ。」

「いいだろう。勝てればな。お前が負けたらどうする。」

「そうね。あたしを好きにしていいかな。」

「命を賭けるってことか。」

「お互いにね。」

 

頭は、ピーと指笛を吹いた。

すると、連中は、バイクからなんとか抜け出して、

頭のところに集まった。

頭はバイクの上から行った。

 

「俺は、これからこの女と命がけの勝負をする。

 俺が負けたら、俺達は解散だ。

 もういっしょにはバイクに乗れねえ。

 この女は、自分の命を賭けるそうだ。

 俺も、それに応える。

 わかったか!」

「おーーー!」と声がした。

 

「馬鹿な女だ。もとレーサーの頭の腕も知らねーで。」

「200キロ越える恐怖は半端じゃねーぜ。」

「こりゃ、おもしれーや。」

そんなひそひそ声が方々でした。

 

「女、ルールはなんだ。」と頭が聞く。

「走る。オシッコちびったら負けってのどう。」

と、洋子がいうと、全員ががはははは・・・と笑った。

 

「女。俺のは、900ccのモンスターバイクだ。

 350kmは出る。お前、こいつらの中から一つ選べ。」

「250でいいよ。150km出りゃいい。」

洋子は言った。

「バイクのせいにするなよ。」と頭。

「わかってるわよ。」

洋子は、大体そのくらいのを借りた。

「メットは?」頭。

「うざいから、いらないよ。」洋子は言った。

 

「じゃあ、初めは、ヨンハンでもしない?」

洋子は言った。

「よし。いいともよ。」頭は言った。

 

ヨンハンとは、短距離をどれだけ早くスピードを上げて抜けられるかの競争だ。

クラッチを使わず、アクセルコントロールとギアチェンジだけで加速する。

 

2台は並んだ。

スタート!

2台のバイクは爆音を上げてスタートした。

洋子は、巧みなアクセルさばきで、

ギアーを一気に1速に持って行った。

 

「あ、頭が負けてる!」と誰かが叫んだ。

「やるじゃねーか、あの女。」

 

頭がエンジンの力で一気に洋子に並んだ。

そのとき、族達は、「あっ。」と声を上げた。

 

洋子がバイクを捨て、ジャンプをして、頭の後ろに乗ったのだ。

「わあー、何?」と朱実が、声を上げた。

「すげー。」と透。

 

洋子は、頭の後ろに乗り、手を伸ばして、アクセルを奪った。

そして、足乗せも奪った。

「これは、モンスターバイクだ。お前には操れねえ。」

頭は言った。

言ったものの、頭は仕方なく、洋子の足の上に足を乗せ、

洋子のアクセルの上からにぎるしかなかった。

 

「さあ、頭ちゃん、

 二人で楽しくアベック・ライドしようじゃないの。」

洋子は嬉々として言った。

頭は、言葉がなかった。

 

すでに、すごいスピードなのに、

洋子は、バイクを地面すれすれに倒して、

強烈なUターンをした。

足乗せの金属がコンクリートに擦れて火花の尾を散らした。

「すげーー。」と族達は敵味方を忘れて、声を上げた。

洋子は、モンスター・バイクを操れないどころか、

バイクと親身一体となっている。

 

洋子は、飛行場の滑走路の真ん中に来た。

そこから、滑走路の上を一直線に走り、

族達の横を爆音を立てながら通り過ぎた。

「ひえ~~!ありゃ、200kmかあ?」

「恐ろしいスピードだぜ。」

「信じらんねえ!」

驚く族達の声をかすめて、

夕暮れ時の薄暗がりの中へまっしぐらに走った。

1台のバイクが、みるみる見えなくなった。

 

やがて、Uターンをしたのか、遠くに火花が見えた。

見えなくなったバイクのライトが、こちらを向いたとたん、

その光で、皆は、何も見えなくなった。

 

皆は、腕を額にかざし、どうにかバイクを見たとたん、

あれほど遠くにいたバイクが、爆音を上げ、

目の前を通り過ぎた。

そして、みるみる見えなくなった。

「なんだよ、あれ!」

「あんなスピード見たことねーよ。」

「250は、超えてるぜ。」

皆は、言い合った。

 

バイクは、時速250を越えようとしていた。

 

『コイツは、何者だ。

 もとレーサーの俺でも250は、ヤバイ速さだ。

 さらに、モンスター・バイクをなんなく操っている。

 ここは、レース場ではない。

 下はぼこぼこだ。250は、普通無理だ。』

 

頭に初めて、

スピードに対する恐怖が生まれた。

 

 

■次回予告■

頭とのアベック・ライドの後編です。

バイクは、恐ろしい速さへ突入です。

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