もう何度も再投稿しているスーパー洋子「希来里の巻」ですが、他にないんです。再投稿いたします。4話完結です。

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スーパー洋子VS 天才少女希来里 2019年

 

 

倉田洋二の三栄出版社は、プロ作家の出版をやっているが、

アマチュアの人達の自費出版も受け付けている。

自費出版担当者の10のデスクは、隣にある。

 

洋二は、鬼の上司、近藤百合子に毎日しごかれ、

胃の痛む日が続いていた。

「ああ、やっぱり、トイレ行こう。」

と席を立った。

隣の大秀才と言われている後輩の坂田郁雄が、

「今なら、百合子さん、いませんよ。」と言った。

「そうお、じゃあ。」

洋二は急いでトイレに行った。

個室に入り、休むのが目的である。

 

休むのも、もうこれ以上無理と思って、個室から出ると、

そこは、女子トイレ、洋二は「洋子」に変身している。

鏡を見て、とぼけた顔だなあといつも思う。

洋二は、175cm背があるが、洋子は152cm。

少女のようなおかっぱの髪をしていて、色気などありはしない。ただ、可愛いことは可愛い。

 

洋子は、いつもの癖、息で前髪をふーと吹き飛ばした。

『変身したということは、また、厄介な問題が起こったかな。』そう思いながら、洋二のデスクに戻ってきた。

 

洋二が洋子になっても、座敷童のようにみんなは、不思議がらない。

 

そのとき、自費出版部の方で、沢井啓太という若い社員が、

ストレスを噴射するかのごとく、怒りながら帰って来た。

「もう、我慢できない。あいつ自分を何だと思ってるんだ。

 小娘が。アタシは、天才だって?ふざけるな。

 大体、原稿用紙に、筆の草書体で書いてくる非常識があっ                ていいものかよ。」

 

みんなが集まって来た。

鬼の上司百合子もいた。

もちろん、洋子も坂田と見に行った。

 

原稿を見て、百合子が、

「わあ、何これ。ミミズが這ったような文字じゃない。」

と言った。

「そうなんですよ。」と沢井が言った。

「平安時代じゃあるまいし、『、』も『。』もない。

 もちろん段落もなし。おまけに濁音のちょんちょんもな       し。『し』だか、『じ』だかわからない。

 原稿用紙に隙間なくお経のように書いてあるでしょ。

 ふざけるなと言いたい。」沢井は言った。

 

「相手は、どんな子?」と誰かが聞いた。

「19歳の女の子。天下のT大の医学部だって。

 だけど、金髪のロリータ系っていうの?カールの髪が頭か     らどっさり垂れてる。服も、ベビーファッションだか、ロ     リータだかわからないけど、とにかく変な女。

 で、言うことがチョー生意気。

   俺、どうして、こんな草書体で書いたのかって聞いたんで     すよ。そしたら、何て言ったと思います?」と沢井はいう。

「わからないわ。何て言ったの。」と誰かが聞く。

 

「それがですよ。『アタシは天才なの。

 アタシは、草書が日本の書体で一番美しいと思うの。

 だから、草書で書いた。

 こんな字でも理解して、校正してくれる出版社に、

 出版をお願いしたいの。

 それができない出版社は、三流だと思う。』

 そう言うんですよ。」

と沢井。

 

百合子がむかっとした顔を露わにして言った。

「まあ、なんだっての?生意気、極まりないわ。

 腹立つわあ。じゃあ、受けて立とうじゃないの。

 わが社で、きっちり校正してやろうじゃない?」

 

「悔しいけど、俺には無理っす。タイトルも読めない。」

沢井が言った。

「じゃあ、わが社の天才、坂田くんならできるんじゃな           い。」と百合子。

「嫌ですよ。俺、草書体なんて、見たくもないです。一応読     めますけどね。俺IQ180ですけど、その天才さんは、       なんて言ってました。」

と坂田は聞いた。

「自分は、IQ200しかないって、謙遜してました。」と沢井。

「何ぃ?謙遜?もう、絶対に許せん!」と百合子の怒りは沸騰した。

「俺、だめ。そんな女の子まっぴらです。」と坂田は言った。

「じゃあ、最後の切り札。洋子ちゃんしかいないわ。

 ただし、スーパーモードの洋子ちゃんじゃなきゃダメだけど。」と百合子が言った。

 

みんなが、洋子を見た。

 

「あたし?いやですよ。そんな変な女の子。」と洋子はいやいやをした。

「洋子ちゃん、この第一巻のタイトル、なんて書いてある       の?」

百合子は、さりげなく振った。

 

「『猫の目は闇を見つめる』ですけどね。」と洋子はつい言ってしまった。

 

「わあ、洋子ちゃん、今、スーパーモードじゃない?

 これで決まり。沢井くん、その子は、洋子ちゃんにまかせ     なさい。」

と百合子は言った。

「わあ、助かったあ。洋子先輩、お願いします。」

と、いうことで、その生意気極まりない天才少女を洋子が担当することになった。

 

「T大の医学部ってすごいの?」と洋子は隣の坂田に聞いた。

「まず、普通じゃないですね。

 でも、いくらIQ200でも、先輩には、到底及ばないで       す。」と坂田は言った。

「ほんと?なら、安心だけど。」と洋子。

「先輩ほど恐ろしい人は、この世にいませんよ。」

そう言って、坂田は笑った。

 

洋子は、原稿の表紙だけをめくってみた。

すると、ほぼ原稿用紙のマスに従い、

細い筆で、見事に美しい草書体で書かれてある。

「ふ~ん。やっぱりこの子、普通じゃないかも・・。」

洋子はそう思った。

 

■次回予告■

洋子、生意気な天才娘と対面です。

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