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<自叙伝>アメリカ編第2部 『クリスマス・イブ』最終回

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レレイは、今日の日の招待状を、1週間前にくれた。
レレイの手書きの心のこもった招待状だった。

私は、薄い黄色の光沢のあるワンピースに、
真珠のネックレス、真珠のイアリングをした。
爽やかに見える、メイクをした。

バックの中に必要なものを確認した。
ワルツのためのカセットテープも入れた。
念のため、ワルツ曲の小さなオルゴールも入れた。
レレイがプレゼントなので、別にフラワーアレンジされた、花飾りを持っていった。

約束の、6時半にレレイの家に着いて、ドアをノックした。
心臓がドキドキした。
お母さんがすぐにドアをあえてくれた。
円卓には、豪華なお料理が並んでいた。
私は、メリー・クリスマスと言って、花飾りを渡した。

レレイは、白い光沢のあるワンピースを着ていた。
髪につけている、白い花が、レレイの可愛らしさを引き立てていた。
レレイは、まるで妖精のようだった。

飲み物で乾杯して、
「さあ、食べましょう。」とお父さんが言った。
「おいしそうです。どれから食べたらいいか、迷います。」と私は言った。
「お好きなものからどうぞ。」とお母さんが言ってくれた。

私は、円卓を回して、おいしそうなものから食べた。
「これは、すばらしくおいしいですね。」と言った。
「ええ、鳥なのですが、かりっとさせるのが、コツなんです。」とお母さん。

「ジュンさんがレレイと作ってくださった、薄皮のシューマ    イ。あれにはびっくりしました。家でも作ってみたんです    よ。」とお母さん。
「本に載っていたんです。皮がないときこうしましょうっ       て。」と私は笑った。

お父さんが、
「レレが、ジュンさんは、合気道が出来て、柔道部の黒帯の     人に勝ったって、すごく興奮して帰って来ました。いまま     で、そんなこと一言もおっしゃらなかったでしょう。」
私は、
「子供のころから、やっていたんです。勉強は学校で全部済     ませて、学校が終わったら、道場に急いでいって、毎日6     時間くらい、8年間やりました。」と言った。

レレイが、
「そんなにやったの。他の事できないじゃない。」と言った。
私は、
「でも、日曜日は休みだったから。」と言った。
お父さん。
「ジュンさんが、あとから来た黒帯の強敵を倒すのに、ほん     の2秒足らずだったって。」
私、
「合気道の試合は、あっという間なんです。」と私は笑った。

お父さん。
「レレイは、ジュンさんと『るすばん君』を作って売ったこ     とが、売る側としての初体験で、しかもみんな売れて、も     のずごく喜んでいました。」
お母さん。
「私たちからは、広場でものを売るなんて、そんな発想ぜっ     たい涌きません。」
私、
「私たちも、売れるなんで思わなかったんです。ね、レレ       イ。」
レレイ、
「初め売れなくて、やっぱり無理かなと思っていたら、
 初めのお客がきたら、瞬く間に売れてしまったの。」
お父さん。
「とにかく、ジュンさんのおかげて、レレイには生まれて初     めてのことの連続で、ジュンさんに出会って、レレイの毎     日の表情が生き生きしていて、私たちは、とても幸せに思     っていました。ほんとうにありがとうございます。」
私、
「あたしも、レレイを見ていると、いろんな発想が生まれる     んです。それは、レレイのおかげです。」と言った。

その後、お話は途切れることなく続いて、テーブルのお料理が少なくなった。

テーブルが、一端片付いて、レレイのご両親が、レレイと私にプレゼントをくださった。
私には、小さなもので、リボンがついている。レレイのは細長いもの。

「明けても、いいですか。」と聞いて、私は、包みを取っ       た。小さいコンパクトに入っていたのは、ステキな水晶のイヤリングだった。
「わあ、ステキ。あたし、イアリングが大好きなんです。
  どうもありがとうございます。」
とご両親に伝えた。

レレイには、金色のステキなネックレスだった。
レレイは、ものすごく喜んでいた。
きっと、2人とも、高価なものである気がした。



では、レレイから、ご両親へのブレゼントだ。
私はレレイと目を合わせ、OKの合図を出した。
レレイが言った。
「実は、ジュンと私から、お父さん、お母さんにプレゼントがあります。」
「え?」とご両親は言った。

レレイと私は、ドラマチックに見えるように、
お父さんの椅子とお母さんの椅子を食卓の横に並べ移ってもらった。
そこから、5mくらいのところに、レレイは車椅子を位置した。私は、その横に立っていた。

レレイは言った。
「このプレゼントを作るのに、ジュンと出会った9月20日     から、ずっと今まで、取り組んできました。
 その間、ジュンは、片時も休まず、私のそばにいてくれ       て、私を励まし、勇気づけてくれました。

 ジュンの自由時間であるはずの時間を、
 みんなあたしのために、捧げてくれました。
 ジュンにはいい尽くせない感謝の気持ちでいっぱいです。
 実は、ジュンとあたしのプレゼントは、「物」ではありま     せん。
 これが、お父さんとお母さんへの、プレゼントです。」

レレイはそう言って、そっと車椅子から立った。
ご両親は、目を見張った。
レレイは、それから、ご両親のところへ、歩いていった。
目を開き、目を潤ませているご両親に、レレイは言った。
「お父さん、お母さん。今までありがとう。あたし、歩けるようになりました。」
レレイ自身も涙ぐんでいた。

「レレイ、これは…夢じゃないのか。レレイは歩けるのか。     レレイ。」
お父さんは、レレイを抱き閉めた。
レレイも泣いていた。
「レレイ、お母さんのところにも来て。
 こんな大きなプレゼントを、まさか今日の日にくれるなん    て、あたしは、あたしは…。」
お母さんもレレイを抱き閉めた。
「よくがんばったのね、お母さんはうれしい。」
お母さんは、大粒の涙をレレイの胸にこぼした。

そして、親子3人で抱き合って喜びを分かち合った。
私も涙が止まらなかった。

私は、居間の方にいって、オーディオセットをさがした。
そして、ワルツ曲のテープを流した。
澄んだきれいな音楽が、居間から流れた。

レレイは、
「お父さん、お母さん、つづきがあるの。」と言った。
流れているワルツ曲を聞いて、お父さんは、
「レレイまさか…。」と言った。
「そのまさかなの。」
レレイは、お父さんを居間の方へ誘って、
腕を組み、ワルツを踊った。

それを見ながら、お母さんは、再び、ハンカチを目に当てた。
「ジュンさん、ありがとうございます。
 レレイが踊っています。
 まるで、夢を見ているようです。」お母さんはそう言った。

お父さんは、やがて、踊りを止めて、うつむき、膝を落とした。
そして、涙の目に手をやり、肩を揺らして、泣き始めた。
「レレイ。こんな日が来るなんて、夢にも思わなかった。
 私と今踊ったのは、レレイだね。間違いなくレレイだね。
 レレイ。よくばんがんばったね。」
もう一度、お父さんは、レレイを抱き閉めた。

お母さんも、私も、涙でいっぱいになった。



それから、音楽の終わるまで、私たちは4人でワルツを踊った。お母さんとレレイ、お父さんと私。途中で、入れ替わりながら。

至福のときが、美しい音楽に乗って
ゆっくりと流れた。


アメリカ編第二部 完

 

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