今回は、典型的な女装マンガのようになってしまいましたが、実話なんですよ!
可愛い可愛いリナちゃんが誕生します。
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          リナ、誕生!
        
水曜日。
着替えようと思ったらドレスが2つある。
「ママ、ナナはどっちですか?」
「花柄の方よ。」
「白いのは誰にですか?」
「後で話すわ。」
とママ。誰にだろう?

着替えの終わった私。
今日は、花柄のワンピース。七分袖。
ショートヘアー。
胸には、金属のネックレス。
脚をくすぐるスカートの感触がたまらなくいい。
憧れの花柄。
ああ、幸せって思った。



お店の準備をしながらママに聞いた。
「ママは、おねえ言葉を使いませんね。どうして?」
「おねえ言葉ねえ。」とママは考える。
「ここでは、使わないわ。その必要がないもの。」
「どうして?」
「うーん。ここは、しんみりやっているからかな。
 大きい店だと、お客さんを笑わせて、がんがん盛り上げる必要があるでしょう?
 そういうとき、おねえ言葉は最高よ。
 それにね。おねえ言葉って、年上の人にも年下の人にも使える便利な言葉なの。」

「ママ、おねえ言葉使えますか?」
「そりゃね。」
「使ってみせてくださーい。」私はうきうきジャンプしながら言った。
「あら、や~ねぇ。アタシったらすぐ調子にのせられて、ホントおたんこだわ。」
ママはしなを作りながらそう言って、エプロンの端を加えた。

「あはははは。ママ上手!」と私は男笑いをしてしまった。
「ナナったら、今一瞬、男だったわよ。」とママ。
「あらん、やだわ。ナナったら、ホントおたんこ。」ってやってみた。
ママは、笑って、
「上手、上手。ナナ、これからおねえ言葉でいく?」
「そうしようかな。」
ママと二人で笑った。



「あ、そうだ、今日はかわいいお客様が来るの。」
「誰ですか?」
「近藤さん知ってるでしょう。
 あの方が、女装に関するコラムをお書きになったの。
 そしたら、高校生の男の子から、真剣なお手紙が来たらしいの。
 その子は、女装したいのに、することができなくて、
 一生に一度でいいから、心いくまで女装がしたい。
 女装ができたら、死んでもかまわない…みたいなことが書いてあったんだって。

 で、近藤さんは、その子の願いを叶えてあげたくて、
 編集室に呼んで話を聞き、昨日、二人でここに見えたの。
 あたし準備がなかったし、そういうのは、ナナの方がいいと思って、
 今日来てもらうようにしたの。水曜はお店暇だし。」
そう、ママが言う。

「あ、それで、紙袋と二人分の衣装とかつらがあったんですね。
 コートとバッグも2人分ありましたよ。」
「ナナと二人で、散歩させてあげるためよ。」
「わあ、それ喜ぶでしょうね。ママって、気が利くし、優しいなあ。」
「もうすぐ来るかも知れないわ。ナナよろしくね。
「ね。どんな子でした?」
「ナナと同じ人種の子ってとこかな?」
「どういう意味ですか?」
「会えばわかるわ。」
「同じ人種??でも楽しみ!早く会いたいなあ。」
私の心は躍った。



わかるなあ…と私は思った。
中学生のとき、洋服店に行って、欲しい下着や洋服のリストを紙に書いて、
誰か女のお客さんに、
「一生のお願いですから、ここに書いてあるものをボクの代わりに買ってきてください。」
そう言ってお金を渡して頼むことを、何度心に描いただろうか。
2万円でいいかな…なんて金額まで考えてた。

マネキンがかぶっているかつらを、どれだけ欲しと思ったことか。
もし、世界中の時間が止まったら、私はデパートに行って、好きな洋服を着て
マネキンのかつらをかぶる。
そうならないかなあ…と真剣に考えたりした。

私は、どれも実行できなかったし、実現しなかった。
でも、もうすぐ来る子は、別の形で実行したんだ。
えらいな。
精一杯、接してあげよう。そう思った。



私はドキドキして、その子を待った。
やがて、近藤さんが一人の高校生を連れてきた。
ぱっと見て、「かわいい。」そう思った。女の子顔だ。
私は、胸がキュンとなった。
私より小柄。身長は155cmくらい。
髪は長く伸ばしていなくて、少年ヘアーだった。

「じゃあ、お願いね。」
とママに言われ、私は、その子に近づいた。
はっと思った。女の子の匂いがした。(ママが言った同じ人種って、このことかな?)

その子を部屋に案内した。
小部屋には、ママが必要なものを紙袋にまとめてある。
近藤さんは、ママと飲んでいる。

私はその子に言った。
「あたしは、ナナといいます。今日あなたのお世話をさせていただきます。」
「お願いします。」とその子は言った。(あ、女声の子だ。私と同じ。)

(きっとこの子も、男として私と同じ苦労をしてきた…。)

私はストールに掛けてくれるように言った。
その子は、気の毒なくらい緊張していた。
当然だ。

「あの、あなたをお呼びする名前を決めてください。」
「ぼ、ぼくのですか?」
「はい。かわいい女の子の名前を考えてください。」
「じゃ、じゃあ、リナ…がいいです。」
「えっと。リナさん、リナちゃん、それともナナの妹になって、リナって呼び捨てがいいですか?」

ちょっと考えていた。
「ええと、ナナさんの妹がいいです。」とその子は、顔を少し赤らめて言った。
私は微笑んで、
「じゃあ、ナナもお姉さんとして、言葉を変えますね。」と言った。



「じゃあ、いいこと?リナはこれから女性の下着に着替えるの。
 ナナは目をつむっていてあげるから、裸になって、
 このショーツとパンティストッキングを履くのよ。」
そういって、白いショーツとパンティーストッキングを渡した。

リナは苦心しているようだった。
きっと震えているんだろうなと思った。

「履きました。」リナは言った。

リナの脚が目に入った。(私と同じ。すね毛らしいものがない。)

リナを鏡に向かわせた。(メイクの過程を覚えて欲しかった。)

ママは、みんな白で統一したようだった。
初めての子は、白が似合う。私もそれに賛成!

リナに白いブラをつけ、中に詰め物をして、
上から白いスリップをかぶせた。

次はメイク。
眉は私より淡い。(ステキ!)

ファンデーション、パフ。アイライン。シャドウ。
全部薄く。付けまつげは止めた。その代わり、マスカラ。
頬紅。そして、ピンクのリップ。

すごく可愛い女の子に仕上がっていった。
私はうれしくてたまらなかった。リナはもっとだろうと思った。

「リナ、ウィッグをかぶるわ。」
ママが用意していたのは、前髪のある、肩までのセミロングのかつら。

それをかぶせ、ヘアブラシで整えると、一気に女の子が誕生した。可愛い。



「リナ。可愛いわ。どこから見ても女の子よ。」

リナは、うつむいてしまった。
「リナ、どうしたの?」

「感激してるんです。なんか、泣いてしまいそう…。」リナが言う。
「泣くのは、お洋服を着てからでいいわ。さ、立って。」

ママが用意してあったのは、白いサテンの厚地のワンピース。長袖。

ストールを寄せて、ワンピースを着させた。
背中のファスナーを上げて、ウエストのリボンを後ろで結ぶ。白い靴を履く。出来上がり。

「リナ、女の子になったわ。」私は言った。
ほんとに可愛い。私は感激していた。

リナは、鏡を見て、そして、うつむいて、涙をこぼし始めた。私はリナの気持ちがわかり、思わずリナを抱いた。

リナは泣きながら言った。
「お母さんの下着を…こっそり…着たことがあったけど、
 こんなにちゃんと…してもらったの…初めてだから…うれしくて…。ナナさん…ありがとう…。」

つづく

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