今回は、典型的な女装マンガのようになってしまいましたが、実話なんですよ!
可愛い可愛いリナちゃんが誕生します。
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リナ、誕生!
水曜日。
着替えようと思ったらドレスが2つある。
「ママ、ナナはどっちですか?」
「花柄の方よ。」
「白いのは誰にですか?」
「後で話すわ。」
とママ。誰にだろう?
着替えの終わった私。
今日は、花柄のワンピース。七分袖。
ショートヘアー。
胸には、金属のネックレス。
脚をくすぐるスカートの感触がたまらなくいい。
憧れの花柄。
ああ、幸せって思った。
*
お店の準備をしながらママに聞いた。
「ママは、おねえ言葉を使いませんね。どうして?」
「おねえ言葉ねえ。」とママは考える。
「ここでは、使わないわ。その必要がないもの。」
「どうして?」
「うーん。ここは、しんみりやっているからかな。
大きい店だと、お客さんを笑わせて、がんがん盛り上げる必要があるでしょう?
そういうとき、おねえ言葉は最高よ。
それにね。おねえ言葉って、年上の人にも年下の人にも使える便利な言葉なの。」
「ママ、おねえ言葉使えますか?」
「そりゃね。」
「使ってみせてくださーい。」私はうきうきジャンプしながら言った。
「あら、や~ねぇ。アタシったらすぐ調子にのせられて、ホントおたんこだわ。」
ママはしなを作りながらそう言って、エプロンの端を加えた。
「あはははは。ママ上手!」と私は男笑いをしてしまった。
「ナナったら、今一瞬、男だったわよ。」とママ。
「あらん、やだわ。ナナったら、ホントおたんこ。」ってやってみた。
ママは、笑って、
「上手、上手。ナナ、これからおねえ言葉でいく?」
「そうしようかな。」
ママと二人で笑った。
*
「あ、そうだ、今日はかわいいお客様が来るの。」
「誰ですか?」
「近藤さん知ってるでしょう。
あの方が、女装に関するコラムをお書きになったの。
そしたら、高校生の男の子から、真剣なお手紙が来たらしいの。
その子は、女装したいのに、することができなくて、
一生に一度でいいから、心いくまで女装がしたい。
女装ができたら、死んでもかまわない…みたいなことが書いてあったんだって。
で、近藤さんは、その子の願いを叶えてあげたくて、
編集室に呼んで話を聞き、昨日、二人でここに見えたの。
あたし準備がなかったし、そういうのは、ナナの方がいいと思って、
今日来てもらうようにしたの。水曜はお店暇だし。」
そう、ママが言う。
「あ、それで、紙袋と二人分の衣装とかつらがあったんですね。
コートとバッグも2人分ありましたよ。」
「ナナと二人で、散歩させてあげるためよ。」
「わあ、それ喜ぶでしょうね。ママって、気が利くし、優しいなあ。」
「もうすぐ来るかも知れないわ。ナナよろしくね。
「ね。どんな子でした?」
「ナナと同じ人種の子ってとこかな?」
「どういう意味ですか?」
「会えばわかるわ。」
「同じ人種??でも楽しみ!早く会いたいなあ。」
私の心は躍った。
*
わかるなあ…と私は思った。
中学生のとき、洋服店に行って、欲しい下着や洋服のリストを紙に書いて、
誰か女のお客さんに、
「一生のお願いですから、ここに書いてあるものをボクの代わりに買ってきてください。」
そう言ってお金を渡して頼むことを、何度心に描いただろうか。
2万円でいいかな…なんて金額まで考えてた。
マネキンがかぶっているかつらを、どれだけ欲しと思ったことか。
もし、世界中の時間が止まったら、私はデパートに行って、好きな洋服を着て
マネキンのかつらをかぶる。
そうならないかなあ…と真剣に考えたりした。
私は、どれも実行できなかったし、実現しなかった。
でも、もうすぐ来る子は、別の形で実行したんだ。
えらいな。
精一杯、接してあげよう。そう思った。
*
私はドキドキして、その子を待った。
やがて、近藤さんが一人の高校生を連れてきた。
ぱっと見て、「かわいい。」そう思った。女の子顔だ。
私は、胸がキュンとなった。
私より小柄。身長は155cmくらい。
髪は長く伸ばしていなくて、少年ヘアーだった。
「じゃあ、お願いね。」
とママに言われ、私は、その子に近づいた。
はっと思った。女の子の匂いがした。(ママが言った同じ人種って、このことかな?)
その子を部屋に案内した。
小部屋には、ママが必要なものを紙袋にまとめてある。
近藤さんは、ママと飲んでいる。
私はその子に言った。
「あたしは、ナナといいます。今日あなたのお世話をさせていただきます。」
「お願いします。」とその子は言った。(あ、女声の子だ。私と同じ。)
(きっとこの子も、男として私と同じ苦労をしてきた…。)
私はストールに掛けてくれるように言った。
その子は、気の毒なくらい緊張していた。
当然だ。
「あの、あなたをお呼びする名前を決めてください。」
「ぼ、ぼくのですか?」
「はい。かわいい女の子の名前を考えてください。」
「じゃ、じゃあ、リナ…がいいです。」
「えっと。リナさん、リナちゃん、それともナナの妹になって、リナって呼び捨てがいいですか?」
ちょっと考えていた。
「ええと、ナナさんの妹がいいです。」とその子は、顔を少し赤らめて言った。
私は微笑んで、
「じゃあ、ナナもお姉さんとして、言葉を変えますね。」と言った。
*
「じゃあ、いいこと?リナはこれから女性の下着に着替えるの。
ナナは目をつむっていてあげるから、裸になって、
このショーツとパンティストッキングを履くのよ。」
そういって、白いショーツとパンティーストッキングを渡した。
リナは苦心しているようだった。
きっと震えているんだろうなと思った。
「履きました。」リナは言った。
リナの脚が目に入った。(私と同じ。すね毛らしいものがない。)
リナを鏡に向かわせた。(メイクの過程を覚えて欲しかった。)
ママは、みんな白で統一したようだった。
初めての子は、白が似合う。私もそれに賛成!
リナに白いブラをつけ、中に詰め物をして、
上から白いスリップをかぶせた。
次はメイク。
眉は私より淡い。(ステキ!)
ファンデーション、パフ。アイライン。シャドウ。
全部薄く。付けまつげは止めた。その代わり、マスカラ。
頬紅。そして、ピンクのリップ。
すごく可愛い女の子に仕上がっていった。
私はうれしくてたまらなかった。リナはもっとだろうと思った。
「リナ、ウィッグをかぶるわ。」
ママが用意していたのは、前髪のある、肩までのセミロングのかつら。
それをかぶせ、ヘアブラシで整えると、一気に女の子が誕生した。可愛い。
*
「リナ。可愛いわ。どこから見ても女の子よ。」
リナは、うつむいてしまった。
「リナ、どうしたの?」
「感激してるんです。なんか、泣いてしまいそう…。」リナが言う。
「泣くのは、お洋服を着てからでいいわ。さ、立って。」
ママが用意してあったのは、白いサテンの厚地のワンピース。長袖。
ストールを寄せて、ワンピースを着させた。
背中のファスナーを上げて、ウエストのリボンを後ろで結ぶ。白い靴を履く。出来上がり。
「リナ、女の子になったわ。」私は言った。
ほんとに可愛い。私は感激していた。
リナは、鏡を見て、そして、うつむいて、涙をこぼし始めた。私はリナの気持ちがわかり、思わずリナを抱いた。
リナは泣きながら言った。
「お母さんの下着を…こっそり…着たことがあったけど、
こんなにちゃんと…してもらったの…初めてだから…うれしくて…。ナナさん…ありがとう…。」
つづく
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