子供の時から女の子になりたかった大川雪之介は、高齢になってやっとその願いが叶い、若くて美人の女子高生ユキになることができます。雪之介は、合気流10段であり、それは、ユキに引き継がれています。

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「ユキと雪之介」青春編②「高木公平の悩み」


ユキのとなりの高木公平は、いい奴だが、愛想がない、
というのが、雪之介の評価だった。
雪之介は、わいわい賑やかなのが好きなのである。
ユキの見方は少し違う。
女子を笑わせるために、しゃべりまくる男子より、よっぽど公平がいい。
公平のそばにいると落ち着く。
「高木君。教えて。」とユキが頼むと、
高木は、人の目を気にせず、ユキが納得するまで、何度でも教えてくれる。
男女が接近していると、囃す輩もいるが、
高木は、そんなものを一切気にしない。

高木は、柔道部だ。
雪之介=ユキは、柔道5段である。
合気流の継承者は、柔道、剣道、棒術の修業に行かされる。
そして、5段をもらってくることを、絶対とされる。
継承者は、天才的な運動神経の持ち主であるので、短期間で5段をとる。
その雪之介の修業したものは、すべてユキと共有されている。

あるとき、高木がもの思いに浸っていることに、ユキは、気が付いた。
「高木君。柔道の悩み。」とユキが聞いた。
「どうしてわかるの?」と高木。
「君の悩みは、柔道のことしかない。」とユキが笑った。
「そう言えばそうだ。」と高木は、わずかに笑った。
「何がうまくいかないの?」とユキ。
「背負いがうまくいかない。
 軽い相手だと持ち上がるが、重い相手だと、俺がくずれる。」
「ふーん。じゃあ、お弁当のあと、あたしが見てあげるね。」
ユキはそう言った。
高木は、あははと珍しく笑って、
「俺3段だよ。」と言った。

お弁当の時間。
「教えるから、早く食べてよ。」とユキが言った。
「本気だったの?」と高木。
「本気よう。」とユキ。

二人は、早々に食べ終わった。
「じゃあ、やろう。」とユキ。
「ここで?」
「うん。」

ユキは、みんなに言った。
「今日は、高木君が、背負いについて開眼する日だから、
 ごめん、みんな、ちょっとずつ前に行って、後ろを広くしてくれる?」
みんなは、これをおもしろがって、全員が、机を前に詰めてくれた。
みんな椅子を、後ろに向けている。
中間の男子は、弁当を食べながら、椅子に上がって見ている。
その後ろは、机に上がっている。

ユキは、高木に言った。
「さあ、あたしを、背負って投げてみて。」
「え、いいの?」と高木は言った。
そのとき、見物の男子達の思いは1つ。
大川ユキの、胸が高木の背に押し付けられる。
(うらやましい。)

「思い切り投げないと、わからないから。」とユキは言った。
高木は、ユキの制服の襟を道着と見て、
背負いをかけた。
だが、ユキは、高木の背中に張り付いたように、びくとも動かない。
「もう一回やって。」とユキ。
高木は、もう一度試みたが、ユキは、びくともしなかった。

「はい。わかったわ。
 高木君、投げの途中のポーズをして。」とユキが言う。
高木は、そのポーズを取った。
「高木君、この時、肩と、曲げた脚とつま先が、1直線にならなきゃ、
 力は伝わらない。」
ユキは、高木のその3点を修正した。
「次。この時、膝が、90度になっていないといけない。
 潰れちゃうから。(修正して)
 はい、よし。この形が取れれば、どんな相手でも、飛ぶよ。」
高木は、その形を何度か、やってみていた。

「じゃあ、もう一度あたしを投げてみようか。」
ユキは、蛍光灯の位置を確認し、そう言って、高木の前に立った。
「いくよ。」と高木。
「うん。」
高木は背負った。
すると、見事にユキは宙に浮いた。
ユキの受け身は、完璧。

「大川さん、大丈夫?」と高木は言った。
すると、椅子に乗っていた道子が、言った。
「大丈夫、大丈夫。ユキは、受け身のプロだから。」
ユキは、立って、
「はい。一番体重のある、坂田君。来て。」と言った。
坂田が来た。
「高木君。坂田君くらいを投げられたら、いいわけでしょう?」とユキ。
「ああ。坂田、いいの?」
「ああ、お前のためなら、なんでもする。」
坂田は、180cm以上の背で、横にも太かった。

高木と坂田は、蛍光灯のないところへ行って、組んだ。
高木が背負いに入った。
すると見事に、坂田の巨体は宙に舞い、床に落ちた。
「すげえ、高木、やったな。」と坂田が笑顔で言った。
クラスのみんなが、歓声を上げ、拍手をした。

高木は、ユキのところへ来た。
「ありがとう。まだ、夢みたいだけど、
 今日の部活でやってみる。
 今まで、誰も教えてくれなかった。
 ありがとう。大川さんは、奇跡みたいな人だ。」と言って手を出した。
ユキは、がっちりと手をとって、にっこり握手をした。

ピューピューと指笛を鳴らす連中や、囃す連中、そして拍手。
だが、みんなそれは、温かなものだった。
1年B組は、とてもいいクラスであったのだ。

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ユキ合気流10段

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