ニューオーリンズの思い出を前・後編で書きます。再投稿です。あまり、ストーリーがありませんが、読んでくださるとうれしいです。

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ニューオーリンズに来た女の子

 

 

私がアメリカに来て、寮で女の子デビューして、

車を買って、アパート住まいを始めたころでした。

私は、アメリカに来て食事が合わず、10日間も飲まず食わずでいて、

死にそうになったことを思い出しました。

そんな私を助けてくれたのは、大陸横断バスのターミナルのカフェテリアでした。

そこに置いてある、コーンフレークを食べて、私は生き返りました。

 

私は、そのターミナルが懐かしくなって、

ある土曜日の午後に車で行ってみました。

ターミナルに入ると、どこか懐かしい匂いがしました。

私は、早速、カフェテリアに行ってみました。

そこで、コーヒーを飲みながら、ふと見ますと、

テーブルに突っ伏して、かなり具合の悪そうな女の子がいます。

どうかしたのかなと思って近づきました。

その子は日本人だと勘でわかりました。

椅子の横に、旅行用のリュック型のスーツケースが置いてあります。

 

「もしもし、どうか、しましたか。」と言うと、

その子は、はっと顔を上げて、私を見て、

「日本の人?」と涙ぐみました。

私は、自分のコーヒーを持ってきて、

「どうしたの?」と聞きました。

「バスで大陸横断するつもりだったのだけど、

 食事が合わなくて、この5日間、ほとんど何も食べてない     の。」

「ぼくは、ここに来て10日間食べられなかったよ。」といいました。

「あの、女性ですよね。」とその子。

あ、そうか。日本語は、男女の言葉がちがうんだっけ、と思い至りました。

「ぼく、男。アメリカに来たら、女に見られてばかりいたか     ら、いっそ、女で通してるの。」

「へーえ、変わってる。」と彼女は驚きました。

「あたし、恭子。」

「ぼくは、ジュン。」と握手をしました。

 

「早く、コーンフレークと、牛乳とバナナを買っておいで      よ。」

私は言いました。

恭子は、コーンフレークとバナナを食べながら、

「ああ、少し生き返った気がする。」と言いました。

「日本語聞いたことも心理的に大きいと思うよ。」

「そう思う。ロスを出てから、一人も日本人に会わなかった     の。」

「それに、お金や荷物の心配もあるでしょう。

 そのプレッシャーで、やられちゃう。」

「その通り。」

 

「でも、女一人でアメリカ旅行って、危険じゃない?」

「うん。日本では、一人旅で日本中行ったの。

 だから、アメリカも平気かなって思って。

 でも、昨日ホテルの中で、なんて遠いところへ来たんだろ     うって思った。これが、ハワイだったら、絶対家に帰って     た。」

「ぼくも同じ。ハワイだったら、日本に帰ってた。」

恭子に初めて笑顔が浮かびました。

 

「ジュンは、ここに住んでるの?」

「大学の学生。」

「で、女で通してるの?」

「うん。」

「名前なんかは?」

「アメリカは、名前で呼ぶから大丈夫。

 性別は、先生には分かってるんだと思う。

   でも、姿がミスなら、ミスって呼んでくれるよ。」

「そうなんだ。」

「うん。ぼく、なんとか、女に見えてる。」

「完全に見えてる。声だって女の人の声だし。」

 

「今日は、キャナルホテルに予約してない?」

「そう、一番いいホテルだって。」

「1泊60ドルするでしょう。」

「そう。」

「高過ぎ。早速キャンセルして、ぼくのアパートに泊まると     いいよ。恭子が元気になるまで、2日は、お付き合いする     から。即席ラーメンや、ご飯が食べたいでしょう。」

「うん。食べたい。そうする。ありがとう。」

「ぼくが、女の子だと思っていれば、安心でしょう。」

「うん。ジュンは女の子にしか見えないから安心。」

 

(つづく。次回後編です。)

 

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