1話だけ投稿しようと思っていましたが、とうとう、ほとんどを投稿してしまいました。今日は、最終回の前編です。

次回で、おわります。

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ぼくは、名物図書委員長 <第6話>「美咲ちゃんの確信」

 

 

いつものように、放課後の図書室。美咲ちゃんが、両頬杖をついて、私を見ています。

「委員長は、同学年の3年生には、ため口だけど、1,2年     生には、丁寧語ですよね。

 それは、委員長は、言わば公的立場だと思うからですよ       ね。」

「うん、その通り。」

「だけど、委員長は、丁寧語の中で、ときどき可愛い言い方     が出るんです。」

「可愛い言い方って、どんな?教えて。」

「ちょっと、女の子的な言い方。」

「例えば?」

「『そうなんだ』って言わずに、『そうなの』っていいま      す。」

「他に?」

「『こうなるよね』を『こうなるでしょう?』」

「『それじゃあだめだよ』を『それじゃあ、だめなの』」

「さっきも言いましたよ。『ほんとお?』を『ほんとに?』

 ほんとに?は、男の子も言いますが、圧倒的に女の子が使     います。

 あたし、委員長の女の子的言葉を聞くたびに、胸がドキン     として、うれしくなります。」

 

「うれしくなってくれるの?普通、バカにされるけど。美咲    ちゃん、やっぱり変わってる。」

「委員長ほどじゃ、ないです。」

「ぼくね、小学生の時、女の子が遊びに誘ってくれたの。そ     して、毎日のように、いろんな女の子が誘ってくれて、遊     んでくれた。6年間、女の子とばかり遊んでたの。だか       ら、女の子の言葉がたくさん身に付いちゃったんだと思       う。」

「委員長の、その『誘ってくれた』『遊んでくれた』って言    い方、とっても謙虚な言葉だと思います。でも、本当は、    委員長は、女の子に超人気で、女の子たちから引っ張りだ    こだったんだと思います。」

「そ、そうでもなかったと思うけど。」

 

「男の子は委員長をどう見ていましたか?」

「完全に女の子扱いされてたと思う。髪の毛は、肩まであっ     たし、男らしい顔立ちじゃないし、女の子の言葉が出ちゃ     うし、自分のこと『俺』なんて絶対呼べなかった。それ       に・・」

と、私は、言葉を詰まらせました。

 

美咲ちゃんが、やさしい声で、言いました。

「声が可愛かったんですね。」

「うん。そう。誰が聞いても女の子の声だったの。小学生で     も、男女の声は違うでしょう。

 家族から、少しでも男の子に見えるように、髪を切りなさ     いって何度言われたかわからない。でも、髪を切るの           は、死ぬほど嫌だった。だって3歳の時から伸ばしていた     から。」

「その気持ちは、あたし、完全にわかります。あたしのこの     牛乳瓶の底眼鏡。それをはずして、コンタクトにしなさい     って、何度も言われました。コンタクトにすれば、あなた     は、とっても可愛いのにって。でも、眼鏡を取るのは、死     ぬほど嫌でした。委員長の長い髪と同じでしょう?」

「美咲ちゃん、完全にわかってくれるんだね。」

 

「でも、委員長は、どんなに女の子扱いされていても、クラ     スに委員長をからかう男子はいなかったと思います。いや     がらせする男子もいなかった。まして、いじめる男子何て     一人もいなかった。女子にも、男子にも、委員長は、クラ     スのマスコットみたいに思われていたと思います。これ       は、あたしの確信です。」

「どうして、そう思うの?」

「委員長は、エルフィン(elfin)だからです。」

「『エルフィン』?なあに、それ?」

「妖精です。ティンカーベルも妖精(fairy)ですが、それ       は おとぎ話の世界の妖精なの。

 『エルフィン』は、もっと実際的で力を持つ妖精です。」

 

 

【次回】

   この第6話の続きです。美咲ちゃんは、エルフィン             の話をして、委員長を心の奥の劣等感から救います。

 しっかり書けたら、最終回にする予定です。

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      <私のお気に入り写真コーナー>

本を読めるようになった委員長。20歳。

 

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