第3話を抜かしました。ウッディ・アレンのことでした。
今回は、夏目漱石です。読んでくださると、うれしいです。
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ぼくは、名物図書委員長 <第4話>『吾輩は猫である』
「ね、委員長が、本を読まない、読めないことは、有名だけ ど、どうして本のことを知ってるんですか?」と、放課後の図書室で、上村さんが聞きます。やっぱり頬杖をついて。
「全く読んでいないというのは、嘘です。どの本も、初めの 2行だけ読むんです。
ある偉い人が言ってたの。本は初めの2行が命だって。初 めの2行を読めば、その本の大体が知れますって。」
「中を読まなくてもですか?」
「その偉い人が言ってました。名コックに、弟子が新作の料 理を作り、味見を頼みます。この時コック長は、料理のほ んの少しを口に入れ味わい「おお、いいねえ。」と言いま す。お皿の料理を全部食べてみたりしません。これと、同 じです。」
「無理矢理、納得します。じゃあ、委員長からみた、初め の2行が秀逸な作品ってなんですか?」
「吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生まれたか、と んと見当がつかぬ。肝心の母が見えない。これ、好きで す。」
「夏目漱石なんですね。この文、猫が自分を「吾輩」って呼 ぶところが魅力ですよね。
でも、この小説は、世界中で翻訳されていますよね? 「吾輩」って、英語にもあるのですか?」
「ないです。英語は、『I』と『me』くらい。だから、題名 は、『I am a cat.』 です。丸善書店で、立ち読みしたか ら、確かです。」
「題名と初めの2行も、立ち読みしましたか。」
「もちろん。こう続いていました。
I am a cat. As yet I have no name. I’ve no idea where I was born.
I don’t see Mother who I want most. 」
「わあ~、委員長すごい。立ち読みで覚えちゃったのです か?でも、『肝心の母が見えない』って、原文にありまし たか?」
「あ、ごめん。それ、ぼくが勝手にくっつけたの。
ぼくね、2行読むでしょ。で、3行目を紙で隠して、3行 目の文を、自分で考えて書いてみるの。そういう遊びをよ くするのね。楽しいよ。」
「まあ、そんな遊びする人、相当変わっていると思います。
でも、『肝心の母』を『Mother who I want most』って するなんて、ステキです。鮮やかです。あたしなりに、訳 を 同時に考えていましたが、せいぜい
My important mother くらいでした。」
「美咲ちゃんが、褒めてくれるの?」
「あ、美咲ちゃんって、また言ってくださいましたね!」
上村さんは、立ち上がりました。
「『つい』が出ちゃった。」
「委員長のことは、家でも褒めまくってます。自慢してる… が正しいかも。家族も委員長のお話をあたしから、聞くの が大好きです。今日は、『Mother who I want most.』 の自慢をします。ああ、夕飯が楽しみ!」
美咲ちゃんは、いつも最高のリアクションをしてくます。
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ひよこ